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第100話【重いんだ葉山、軽いよね蒼さん】


 こう言うのって、僕だけかもしれないけど、実際に目にした時よりも、その後、目にした光景がまるで画像を取り込む様に記憶されて、思い出す事によって増幅されてゆく感じだよ。僕の心の秘密のフォルダにそっと記録って感じで、ああ、そっかそこには真希さんの下着姿とかも保存されてるんだなあ、鮮明に覚えてるもの。


 仕方ないじゃん。僕だって男の子だし、こればっかりはなあ……。


 「大丈夫だよ真壁、私は否定なんてしないから、むしろ嬉しいくらいだよ」


 って僕が雪華さんから全速力で離れてゆく速度に余裕でついて来る葉山が言うんだよね。その笑顔も、あまり見た事ない笑顔だなあ。


 いやあ、本当に、これどうしよう?


 悩む僕の前に、今度はクモの手みたいなマニィピュレーターが次々と襲いかかって来る。あ、雪華さんのメディックの触手だね。本気になって来てるなあ。


 「秋先輩逃げないでください!」


 って迫り来るも、その間に入る葉山。


 「もうやめようよ、雪華さん、いいじゃない、真壁の本音も聞けたんだし」


 って雪華さんに真に訴えかけている葉山だ。


 「なに言ってるんですか? 葉山さんはよかったかもしれませんが、私、まだなにも聞いてないです」


 って、本気で間に入る葉山を排除しようとメディックの、本来は治療の為の複数のマニィピュレーターで攻撃を仕掛けてる。手段を選ばなくなっている雪華さんだよ。


 一応、僕の間に入ってくれた葉山も僕を守ると言うか僕を雪華さんの手に渡さない為に伸び来る様々の触手を弾き返してくれるんだけど、やっぱり戦いの為のスキルではないメディックの動きって、相当にやり難いみたいで、苦労しているのがわかる。


 そして、雪華さんも賢い人なので、葉山のそんな反応を見て、そこに付け入ってるって感じで、何本かのマニィピュレーターが僕の肩のあたりを拘束しようとして迫って来る。


 しかしそれを弾き飛ばすのは、あの秋烏、だから蒼さんだった。


 「お館様!」


 って僕の安全を確保してから、


 「いい加減にしないか、いくら雪華殿であろうと、お館様に害を与え用途するなら許す訳には行かないぞ」


 って言う。助かったよ蒼さん、って思うのも束の間、今度は葉山がまたおかしな事を聞いて来る。


 「ねえ、真壁、私と蒼ちゃん、どっちが好き?」


 お前、今、この状態でなにを言ってるの?


 本当にいい加減にしろよな、って怒り出そうとする僕、本当にやめて欲しい。


 「抱っこするなら蒼さんかなあ……、軽いもん、葉山重いし」


 って僕は普通に答えてしまう。


 そして僕の本音よ、そこか? くらべてるところは? って自分に突っ込んでしまう。


 げ! その言葉を聞いて、瞬時に僕の前で僕を雪華さんの魔の手から守ってた二人の、葉山と蒼さんの動きが止まる。もう木石の様に動かなくなる。


 うわ! その間も容赦なく攻めて来る雪華さんの魔の手を、瞬時に自分で回避して弾く。


 まいったなあ、雪華さん倒す訳にも行かないし、雪華さんのメディックのマニィピュレーターって、奇妙な動きをするんだよ、よくこんなのしのげてたなあ、この二人。


 で、ここで僕を守っていてくれてたはずの葉山が、こっちに迫って来る。


 「私、重くないもん!」


 って、もう涙目になってる、真剣に怒ってる。


 だからさ、僕として怒ってる女子に何かを言う事なんてできるはずもないんだけど、雪華さんのメディックの影響で、言われてしまった事には答えてしまうからさ、そこで言い返してしまうんだ。


 「いや、重いよ、すっごく重い」


 「重くないもん!」


 もう食ってかかるってか、斬ってかかりそうな勢いな葉山だよ。


 でも、よかった、雪華さんのマニィピュレーターの攻撃範囲から脱出はできた見たい、でもなんだろう、今度は葉山が敵に周りそうな予感がする。


 「で、でも、蒼ちゃん、私より胸小さいし」


 とか言い出す。すがりつく様に、まとわりつく様に必死に言って来る。


 ここで、いつもなら笑顔で軽く濁すか、「そうだね」って言えば治るのだろうけど、今の現状だとそうも行かなくて、


 「いや、蒼さん胸意外に大きいよ、この前抱っこした時、ちょっと触って、おお! ってなったもの」


 って僕は言う。隠す事ができない僕の本音が言ってしまう。


 いや、だってお姫様抱っこだったからさ、ちょっと姿勢を変える時、触ってしまうんだよ、ワザとじゃないんだ。本当に偶然、偶々、未知との遭遇だったんだよ。


 「違うよ蒼さん、そんなのないからね」


 って蒼さん見ると、すごいなあ、人ってここまで顔が赤くなるんだなあ、って思った。


 それでも僕は、こんな状態で、自分の隠す事ができない本音を言い続けることで、何か、こう、解放されたかの様な、そんな不思議なスッキリ感を感じていた。


 同時に何か大事なものも失ったみたいな気がして、その心をと言うか心情が自分のもののはずなのにどうにも理解できない僕だったよ。

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