第99話「大好き、葉山のおっぱい】
葉山は僕にとって家族みたいなものじゃん。とても大切な人だよ、って、普通にそう言おうとしたんだけど、僕の口から出たのは意外な言葉だった。
それは、
「おっぱい」
言ってる自分にさ、そんな言葉を言ってる意識なんてないからさ、??????ってなるんだけど……。
葉山はびっくりした顔してて、そのまま自分の質問の仕方が悪かったのかもって思って、だから、
「もう一回聞くね、真壁って、私に対してどんな感情を持ってるのかな? って利き方の方がよかったね」
って聞くけと、
だから、僕としては、葉山は家族みたいなもので、とても大切な人なんだよって言おうと思って開いた口から出た言葉は、
「おっぱい」
の一言だった。
あれ? なんだろ? なんでこんな言葉が出るんだろう?
ちょっと離れたところから真希さんの大笑いの声が聞こえて来る。
で、ちょっと微妙な距離にいた薫子さんが、
「お前、最低な男だな」
って僕の方を見て、僕に聞こえる様に呟いてる。
僕は思わず自分の口を自分の手で塞いでしまう。いや、違うって、そんな事思ってないって、葉山、ショック受けた様な顔してんなよ、それに薫子さんもドン引きしないで!
「つまり、あれですか、秋先輩にとって、葉山さんは特定部位だけの存在って事でいいんですね?」
って、雪華さんも余計な事言わない。見る見る葉山がションボリしてるじゃん。
ケタケタと、大きな笑い声を上げる真希さんはその場で笑い転げてる。
「そっか、私おっぱいかあ……」
違う違う、それだけじゃないから、葉山の価値はそれだけじゃないから。
どこか勝ち誇った様な顔をしてる雪華さんだけど、葉山は言うんだよ。
「まあ、仕方ないよね、真壁も男の子だから、別にいいよ私はそれでも」
って僕に言ってくれるんだけど、違うからね、雪華さんのメディックの因子って、きっと心にもない事を言わせることができるんだよ、きっと。
それでも追求の手を緩めない葉山は、
「でもさ、それって私の事を嫌いって事ではないってことだもんね、だって私の体の一部だもん、そうだよね、真壁」
って聞いて来るから、だから、そんなんじゃないって、って言おうとして、口を開いて出て来る言葉は、
「うん、すごいおっぱい」
だった。
「やだ、真壁、恥ずかしいよ」
って、どの辺に照れてるのかわからないけど、本当に危険だよ、僕の人格がガタガタになってるよ。どうにかしないと、ともかく、ここから離れる方法考えないと、って考えるけど、少なくとも、真希さん抑えないと、ここから脱出できそうもないよ。
それでも、きっと雪華さんのメディックってのは、元々が自分の為に使う回復や蘇生のスキルだからさ、きっとショートレンジだとは思うから、それなりの距離を取ればきっと、って考える僕は、一旦後ろに下がる。
流石の雪華さんも、僕に付き合えるほとの戦闘用のスキルってわけでもないから、簡単に距離を取れてる。
「あ、秋先輩、逃げないでください」
って言ってるから、きっと、それなりに離れると、この拷問にも近い状態から逃げる事ができる筈。
って後方に下がる僕の背に、今度は雨崎さんが迫って来たよ。
「魔王さん、私はどうですか?」
ってそのまま自分の胸を突き出して聞いた事に、僕としては未だなにも考えていない筈なのに、
「いや、葉山のおっぱいの方がいい」
ってすんなり答えるんだよなあ。もう、考えてもない本音がダダ漏れだよ、僕、そんなに葉山のおっぱいにこだわってるのかなあ? 自覚ないなあ……。
「そんなー!!」
って僕の即答に不満タラタラな感じなんだけど、そんな事を言い切る程、僕は雨崎さんのおっぱいは見てない筈なんだよなあ。いつの間にか、心の中で見比べていたんだろうか? 覚えがないなあ……。
それにさ、僕、普段の生活に置いて、そんなに、葉山のおっぱいって意識はしてないからね。でも視界に入っちゃうくらいは見るなあ。ついつい見ちゃってるかなあ……。
でもそれは仕方ないんだよ、見えちゃったし。だって、ベッドの方では何度も、そしてこの前は明るい浴室で隠そうともしないでたゆんたゆんな豊かな葉山の見ちゃったからね。