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第98話【偽れない僕の本音】

 ヤバイヤバイヤバイ!


 なんとか葉山の手から逃れようとするも、葉山の奴、完全に本気で僕を逃がそうとはしない、元々、スキルの所為なのか、彼女自身の身体能力の所為なのか、力自体は僕よりつよいんだよね彼女。


 だから、ベッドの時、裸でのしかかれて時もガチに身動きできなかったんだよ。


 恐るべしだよ、葉山。


 そして、前から素敵な笑顔で迫って来る雪華さん、彼女、戦闘とか苦手って言ってる割にすごい動きがいい。全く付け入る隙がなくて、こんな状態だからと言って、僕が拘束されているからと言って全く油断なんてしないで確実にその距離を詰めて来る。


 葉山と雪華さんのタッグなんて初めて体感したけど、意外に相性がいいのか、それとも、その思いの強さが一緒なのか、思いの外、攻略方法が見当たらない。


 無理やりにでも回避しようとすると、僕を羽交い締めして拘束してる葉山は思いっきり抵抗するから怪我とかさせてしまうのも嫌だしなあ。


 そんな時だった、


 「逃げろ秋!」


 って僕と葉山の丁度真ん中あたりに割って入ろって感じで茉薙が体当たりをして来る。


 「え? どうして? 茉薙!」


 かつては自分の体の一部。文字通り血肉を分けた姉弟みたいに育った茉薙の裏切りに流石の葉山も動揺する。とは言うものの、そのくらいで葉山の僕に対する拘束は解かれることはなかったけど、それでも僕を羽交い締めする葉山の力は緩む。もちろん脱出には至れないけど。


 そして、その動揺は、雪華さんも一緒だった。


 茉薙が葉山から切り離されてから、まるで弟の様に面倒を見てきた茉薙が雪華さんを裏切るなんて、想像もできなかった顔している。


 そしてスキルメディクの因子は、僕では無く、大半は茉薙に注がれてしまう。


 茉薙は、その場に膝をついて力の無い表情になってしまう。


 そして、先ほどまでの僕をかばった強い意識が徐々に溶けて茫然自失な表情になってゆく。


 「どうして邪魔をするの茉薙!」


 雪華さんのその言葉が、思いもよらない茉薙の行動への質問の形になって、茉薙は答える。


 「嫌だ、雪華がこんな風にするのって嫌だ」


 と茉薙は言う。それは茉薙の意思で話ている言葉では無くて、メディックの因子が茉薙の意識を掌る大脳から直接表現している言葉に他ならなかった。


 「雪華はいつも優しくて、誰かに無理やり話を聞き出す様な事をする様な人間になって欲しくなかったんだ」


 と言った。


 そっか、茉薙は僕を庇ったと言うより、雪華さんが自分の目から見て悪い事をするのが嫌だったんだね。


 そしたら、


 「茉薙……」


 って、ちょっとジンとしている雪華さんだよ。


 そうだね、こう言うことって、無理やり人に聞き出す様なことでは無いよね。


 茉薙の尊い犠牲によって、雪華さんも、葉山も、わかったんじゃないかな、人の気持ちとか、そう言う大切なモノが。


 雪華さんは、ブツブツと何かを喋り続ける茉薙をそっと寝かしつけて、


 「ごめんね、茉薙、あなたの言う通りね」


 と言って、メディックの効果なのか、ゆっくりと睡眠に誘導して行った。


 スヤスヤと眠りに着く茉薙。


 「これで邪魔者をいなくなったわ、雪華さん、もう一回チャレンジよ」


 って僕を羽交い締めしたまま葉山が言うんだよ。


 「いい加減にしろよ、こういうこともう止めようよ」


 って言う僕に、


 「真壁の本音とか聞けるんだったら私なんでもするもん」


 って可愛く言うけど、相変わらず僕を拘束する葉山の力はちっとも可愛く無い。


 「もういいです、葉山さん」


 って雪華さんの方は茉薙の尊い犠牲を目の当たりにして反省したのか、そんな言葉を呟く様に言った。


 「チャンスじゃない、真壁の本音とか聞きたく無い? 多分、真壁、自分でもわかってないわよ、自分の気持ちなんて、だからこれは千載一遇のチャンスなのよ」


 すると、雪華さんは首を横に振って、


 「もういいんです」


 と言った。


 「そんな……」


 絶望に息を漏らす葉山。だからへんなところに息を吹きかけないでって。


 そして、雪華さんは言うんだ。


 「もう、因子は十分秋先輩の中に入ってますから」


 って。


 ええー!


 すると、今度は葉山が僕の拘束を解く。


 ホッとしていたのも束の間、そのまま僕の前に回ってきて、葉山は聞くんだ。


 「ま、真壁! 私の事、どう思ってるの?」


 いや、一体なにを聞いて来るのさ? って思ったんだよ。

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