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第97話【僕の話なのに僕が立ち入れない話】

 一体なにが始まるんだって思ってる僕。いや僕だけじゃなくてみんなそんな顔をしている。


 「よーし、集まったべ」


 って言って、チラッと僕の顔を見てから、


 「あのな、こいつのことでみんな争ってるけどな、こいつ自体はどこにでもいる普通の男子だべ」


 とか言い出す。


 「なに言ってるんですか? 魔王さんは素敵ですよ」


 と雨崎さんが真希さんに言い返す。


 「どこらへんだべか?」


 「強い所、諸動作に無駄の無い所、そして私を助けてくれた所です」


 って言うと、真希さんは、


 「あのな、こいつな、誰でも助けるぞ」


 と言う。


 「違いますよ、儚げで、可憐な、そんな可愛い女の子しか助けないですよ、ね秋先輩?」


 って、一緒に来た同じギルドの雪華さんに瞬時に否定されてしまったよ真希さん。


 「しくったべ、雪華もそうだったべ」


 って思わぬ裏切りに反省する真希さんだった。


 そうだね、そんな事もあったね、浅階層でのラミアさんの事件の時、僕、アキシオンさんの扱いも上手くなくてさ、思わず片腕捥いじゃった時の話だね、懐かしいなあ。


 思い出の中なのか? 目をキラキラさせながら、真希さんを見つめる雪華さん。


 「お前も、あっち行け」


 と僕らの方に混ぜられる雪華さんだったりする。そして僕らの郡に混ざりながら雪華さん、「よろしくお願いします」って上品な笑顔でそんな事を言ってた。そして、いつの間にかとくか、雪華さんが来るんだから茉薙もついて来てた。


 結局、一人僕らの前に立つ真希さんなんだけど、連れて来た雪華さんはこっち寝返ってしまった訳だし、当初の思惑と外れてしまって、ちょっと困ってるみたいだけど、そこは問題無しみたいで、その辺はいいけど、なんか今、僕真希さんにつまらない人間って言われた?


 いや、変に面白味のある人間って紹介されるのもどうかって思うけど、なんの変哲も無い人間って自分以外の人の口から言われるのって、ちょっと抵抗があるってか、どこか蔑まされてる気がして来る。


 でもそれを真希さんが言うのだから文句にしても心象がマイルドになってるから不思議だよね。陰口とか叩いでも人格者ならそれなりの表現になってしまうって事なんだろうか?


 なんて人間観察してると、真希さんは僕以外の女の子達に向かって、


 「じゃあな、レア度でカゴテライズするべさ」


 とか言い出すから、なにを言ってるんだろう? ってなる。


 「いいか、よく聞いて、これに当てはまるって人間は、手をあげるべさ」


 と言ってから、


 「じゃあ行くべ、アッキーとなんか特別な事した事ある人?」


 なんか黄色い声が上がってるけど、なんの話?


 「特別な事ってどの程度ですか?」


 って葉山が聞いてる。


 「したっけ、赤ちゃんとか出来ちゃう以上な事だべ」


 真希さんを中心にまたまた黄色い声が響く。


 真希さん、とても生き生きとした顔。本当に心の底から楽しそう。


 ああ、そっか、僕わかったよ、真希さんって、きっとこの場に遊びに来たんだよ。僕って面白い材料使って、きっと事態の収拾なんて考えてないよなあ、絶対。


 「なんだよ、キスくらいじゃダメか?」


 って春夏さんが言い出すんだけど、


 「それはお前じゃなくて、春夏ちゃんの方だべさ?」


 すると春夏姉は頑張って、


 「でも同じ体だぜ」


 って言ってから、


 「いいよな、私とキスしたってことでも!」


 っていきなり話を振って来る。


 そして、


 「あれが初チューってわけでも無いんだし、いいよな」


 って念を押して来るんだけど、「なに言ってるのさ?」って話を聞く前に葉山に体を拘束される。肩を掴まれてるだけなのに動けない。


 「誰?!」


 うわ! ここにも鬼がいたよ。


 「誰とよ!」


 すごい形相で聞いた来るんだけど、いや、知らないし、憶えないし、心当たりすらない。


 「ちゃんと答えて!」


 なんでここだけ音としての言葉を欲しがるかな? いつもみたいに勝手に心でも読めばいいじゃん、そうすれば疑い晴れるじゃん!


 「葉山さん! 止めましょう、無理やり話を聞いても、それが真実かなんてわかりませんよ」


 そう雪華さんが言うんだけどさ、その後ろにいる茉薙が、


 「逃げろ! 秋!!!」


 って叫ぶから、思いもよらない全力行動で、しかも得体のしれない何かから距離を取る様に瞬時に下がる。


 「ッチ、茉薙! 余計な事を言わない!」


 なにをされた? いや、完全に回避できたのか? 大丈夫だ体に何の影響も出てない。


 「雪華! やりすぎだ! この前、危うく人間一人壊しかけたの忘れたのか!」


 って茉薙が言う。


 「大丈夫、加減はするわ」


 しかし、茉薙は、


 「お前、秋のことになると加減なんてできないだろ? そんなの自分が一番よく知ってる筈だぞ」


 って茉薙が言うと、雪華さんもハッとして、そしてシュンとなる。


 よくわからないけど、まさか雪華さんを茉薙が叱っている上に、僕が助けられる日が来るなんて思いもよらなかったよ。


 「雪華は、メディックの因子を直接大脳の新皮質や海馬に打ち込んで、記憶されてる情報を、形として力尽くで抜き出す事ができるんだ」


 って茉薙が、今、雪華さんがなにをしたのか教えてくれる。


 「茉薙、言い方! そんな怖い言い方しなくても、ちょっと秋先輩の思い出に直に話を聞いてみようとしただけです、もちろん、その思い出を複製して記録しようなんて、少ししか思ってません、大丈夫、安全です、4人に3人くらいしか昏倒しません、長くても4日間くらい眠り続けるだけです」


 って明るく言われる。テへって顔してる。


 なんかそんな顔を見ていると、たとえ地球を蒸発させる危険性があってもアキシオンさんを開放型にしたかった雪華さんのお母さんである雪灯さんを思い出してしまう。やっぱりこの二人は母娘だなあ、って思った。


 そんな事を考えていると、後ろからがっしりと掴まれてしまって、お! この胸に当たる感触は?


 と振り向くと、僕を拘束しているのは葉山だった。


 「もう逃げられないからね」


 って僕を見て言ってから、


 「雪華さん、今よ!」


 とか言ってる。共闘してるよ。


 ヤバイ、逃げられない。


 微笑み近づいて来る雪華さんに、葉山、へんな所に息を吹きかけないで!


 今までかつてない程の危機にさらされる僕だったよ。


 

 

 

 

 

  

 

 

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