第96話【春夏姉ダァァァァァァァァァン!!】
まさに威風堂々。
そして、ドヤ顔もここに極まった感じで、この場に全くお呼びでないかつてギルドの重鎮、そして今はただの暇人な工藤真希さんが現れたよ。
「ちょっと、真希さん、ダメです、帰りましょう!」
ってその後ろから彼女を追って来るのは雪華さんだよ。その後ろを茉薙がついて来たた。
そして、開いたゲートからは、
「閉めていい? 維持管理はきついので」
って、眠そうにいうのがシリカさんだった。あ、僕らに気がついてこっちに向かって手振ってからゲートは閉まる。
で、残された真希さんに雪華さん。
気まずそうに、こっち見てる雪華さんに比べて、
「話は聞かせてもらったべさ!」
って、この様子を盗み見ていた事を堂々と言い放って、対しての雪華さんは、
「ダンジョン内の紛争や、抗争、喧嘩に至るまでギルドの監視対象なので……、その、でも、私は覗き見る様な事はいけないって、真希さんに言ったんですよ」
と真摯に訴えかけれくる。
「なに言ってるべ、お前も夢中になって見てたべさ」
「違います、違うんです!」
もうどっちでもいいけど、一瞬、みんなの動きが止まったから、真希さんが来た効果があるんだとは思うけど、その中でも、
「ゲッ、工藤真希……」
と呟くのは春夏姉だった。
すると、その次の瞬きの間に、まるで瞬間移動の如く、一気に春夏姉との距離を詰めている。
「ん? 春夏、工藤真希ではないべ、真希ちゃんだべ」
と既に恋人距離になってる。
ここまで焦ってる春夏姉なんて初めて見たよ。
「やっぱり、流石の春夏姉も真希さんは苦手なんだね」
ってしみじみ呟く僕に、
「お前なあ、今日花といまだに決着つかない様な化け物だぞ、しかも今も現役だ、この姿に騙されるな、実際は今日花なんかと比べていい年齢じゃあ……」
あれ? 春夏姉が消えた?
って瞬間に僕の方へ吹っ飛んで来たよ、僕、春夏姉を受け止めて、でもちっともその威力というか慣性力を殺せなくて、僕も吹っ飛んで、床の上を転がったよ。
「年齢の話をするなんて……」
と、触れてはいけない場所に触れてしまった、そんな痛い人を見る様な目で春夏姉を見つめる雪華さん、だから、一緒に床に転がる僕も見られている。
とっても蔑視されてる感じで居た堪れない。
そして真希さんはというと、
「あ、手が滑った」
って言ってるから、今の攻撃は普通に片手一本な感じなんだね。認識すらできなかったよ。
そして、ここに来てギルドのトップ二人がいることに気が付く滝壺さんなんだけど、ここで、かねてより疑問に思っていたことに気がついて、
「あ、工藤さん!」
って声をかけてた。
その頃には、先ほど突き飛ばされた薫子さんも戻って来ていて、「酷い目にあった」って愚痴りながら葉山を睨んでる。
「お、英雄陣の滝壺ちゃんだね」
といつもながらのフレンドリーな真希さん。若干、ギルドの人っていうと=偉い人イメージで、緊張するんだけど、真希さんにはそうさせない人格っていうか、親しみやすい、そうだね、近所のおばちゃん的な気安さってのがあるよね。
「お前、今、なんつった?」
般若だよ、瞬時にこっちに般若の顔が向けられたよ。
「それは思うのも禁句ですよ秋先輩」
って雪華さんに言われる。もう、そんな事言われたらなにも思えないし、なにも考えられないじゃん。って思ってたら、かつて妹に飛ばされた時に見た、真希さんのピンクのストライプな下着姿(上下セット)を奇しくも思い出してしまって、妄想がかき消せない。
すると、真希さん、
「そっちならいいべ」
ってどこか誇らしげに、そして機嫌も直ったみたいで、よかったよ、いやいいのか? 僕的には恥かしいじゃん、本人目の前にしていらない妄想というか思い出を、いらない恥をかいてしまったじゃないか。
すると、
「秋先輩! 私は? 私もいましたよね?」
と、詰め寄られるも、ああ、そうだね、でもごめんね、思い出せないや。
「ほれ、雪華、今はそんな場合じゃないべ、それよりも、こいつのとっ散らかった女関係をどうにかしないといけないべさ、ギルドとしての努めだべさ」
いやあ、ちょっとなにを言ってるのかよくわからない、人を女関係にダラシのない人みたいに言うのはやめて、それに雪華さんは兎も角、真希さんってギルドの運営から一線退いたみたいになってる筈だよ。
すると、今度は、こんな中でも割と常識を保っていた薫子さんが、
「いや、流石に男女関係にギルドが口を出す訳にもいきませんよ、真希さん」
って言うんだけど、
「いいや、これはギルドが問題にしていることであって、部外者は口を挟まないで欲しいべさ」
ってキッバリ言い切る真希さんだけど、
「え? 私はギルドの人間ですよね?」
と、真希さんの言葉に揺らぐ薫子さんが尋ねるも、
「今はそんな小さな事を問題にしているわけではないべ」
とか言われる。ちっさな問題かなあ……、とは僕も思うけど、そう言い切られてはもうその後の言葉が継げない真面目な薫子さんだよ。
そして、
「確かに、今の状態なら私は今日花様側の人間ですからね」
とどこか開き直った様に言う薫子さんだった。
そして、真希さんは叫んだ。
「いいかい! ともかくみんな一回、落ち着くべさ!」
割と広い室内全部に響き渡る真希さんの声。一旦、小競り合いが治った。
そして、かなり端まで飛ばされた春夏姉が、
「ひどい目にあったぜ」
って言いながら僕らの集まる部屋の中心に戻って来る。
一瞬壁まで飛ばされて、壁画の様になっていたけど、割と平気そうな春夏姉だ。
「ほれ、愛生ちゃんもこっち来るべさ、お友達もいいよ、もう戦わない、この怖いお姉さんが暴れたら私がやっつけてやるべさ」
って言うと、滝壺さんも、そのお友達2名もこっちに来て、みんな室内の中心い集まっている。