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第84話【強大な悪魔、その名は木村?】

 緩やかに闇の中から姿を現したのは、一言で表現するなら悪魔。


 すっかり治療されて毒気の抜けた海賀の元魔物おじさんは、


 「木村くん」


 って呼んでた。


 え? 木村さんって、普通の漢字の木村さん?


 「木の村って書く木村なの?」


 って思わず隣に来ていた雪華さんに聞いてしまうと、


 「ですね、胸にネームプレートも付いてますから」


 って言われて見ると、本当だよ、どう見ても裸の胸にこの会社のものであろう、ネームプレートがついてて、部署は、『異世界派遣課』って書いてある。


 よく読めるな僕、ってああ、アキシオンさんが視界を拡張してくれてるのか。


 見た目と違って、かなり平凡な名前に驚いてしまって、それに笑える。


 で、そんな表情の僕を見て木村さんは、


 「情報は入っていますよ、私はあなたの弱点も知っている」


 とか何とか言う。


 そして、僕はと言うと次の疑問に差し掛かっていた。


 何で木村さん?


 こんな時だけど、僕はそっちの方が気になって仕方なかった。


 いや、だって、この人ってか魔物は向こう側の人と言うか魔物でしょ? なんかおかしくない?


 しかも、見た目も和風じゃないし、どう見ても西洋の悪魔っぽい姿をしてるし。


 一応は、見た感じ強そうな姿に見えるんだけど、普通にダンジョンウォーカーでも深階層クラスな人じゃないとビビるタイプの悪魔でも上位の姿に、その落ち着きっぷりだ。


 人よりも獣に近い顔に、伸び過ぎた角。背は人より少し大きいくらいだけど、上半身裸の姿に、獣の下半身、多分、あの足って狼か何かみたい。動きも相当良さそうで、片手に、大きな三叉の槍をもっている。


 プッレッシャーもかなりのもので、やって来る遭遇かんはエルダーを遥かに超えている。


 そしてこちらを見つめる眼光は鋭い。


 でも、木村さんだ。


 この普通のよく聞く名前がついてしまった瞬間、全てが相殺されている様に見えてしまうから不思議だよね、本当に名前って大事だと思うよ。


 すると、茉薙が聞いてしまう。


 「なんで木村なんだよ?」


 すげえ、茉薙、ど直球だ。


 普通は様子を見るとか、流れで何となくって感じに身を任せるって形を選んでいた僕は茉薙よりは大人なのかもしれないし、聞き難い事を後に伸ばしてだけって、でもまあ、知らなくても問題はないやって考えていただけかもしれない。


 つまり、なんか面倒臭いや、ってのが僕の判断だった。


 すると木村さんは、


 僕らの前に一歩一歩近づきながら、まるで舞台俳優よろしく、その長い腕と、案外短い足を使った大きな動作で演出しながら、


 「威風を感じないかな、優美さと何より剛強を体現している『木村』なんとも素晴らしい響きではないか」


 とか言い出す。


 僕らが?????って顔をしていると、


 「仕方ない、お前らの様な下賤な物にもわかり安く教えてやろう」


 とか言い出す、ご丁寧にどうも。


 「私の本来の名の発音は、無理やりこちらの発音で一番近く表現するなら、フャリュゲティティブボぼんヴォギュリョーョョョンぼるヴェフィボルのエイドルフエオだ」


 言い難いってより長い。覚える気にもならない。


 「そこで、こちらの生活できる様にその仕様に合わせて、こちらの名前をつけてもらったのだ」


 また適当につけられたなあ、犬だったらポチ、猫だったらタマってレベルだよ。


 あ、断っておくけど、それは木村さんって苗字が悪いって事じゃないよ。


 ただ、思いつくものをそのまま付けられった感じが半端ない。


 思わず海賀の人達に視線を走らせると、何とも言えない笑顔でこっち見てた。


 そして、


 「木村、木村、木村だぞ!どうだ、何とも邪悪で闇にて交わり、その黒きを支配する様な素晴らしい名前だろう?」


 邪悪かどうかはともかくとして、この悪魔、その名字をどうにも気にっているのがわかるけど、ひとまず僕としては、全国の木村さんに謝れ、と言いたい。


 あれかな、あの、漢字を喜んでる外国人の気分なのかな?


 よく見かけるけど、特に英語圏とか、後ヨーロッパから観光に来ている人たちが着てるプリントTシャツに『烏賊』とか、『蛸』とか、酷いものにると、『変態』だの、『性欲』だのって、その言葉自体の意味とか度外視して、明らかに字面と言うか画数とかで選んでいる気がするなあってそんなTシャツを着て喜んでるみたいな、そんなノリなんだろうか?


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