第83話【爺さん、父さん、息子さんの四肢切断】
脂汗流して、目を真丸に見開いてる魔物おじさんは顔だけ動かしてこっちを見てる。、人間て逃れられない恐怖を感じた時に顔色って白くなるんだな、って思ったんだ。
そしたらさ、動けない魔物おじさん、急に、
「近づくな! こっち来るな!」
って、まるで僕を狂人でも見る様な、そんな目をして言うんだよ。
いやいや誤解だって。
「お前達は、人を斬る事に全く抵抗ないのか?!」
なんて言うからさ、
「何言ってんのさ、おじさん達だって、本人もそだけど、秘書さんですか? そう言う人を使って僕らの事を刺そうとしてたじゃないですか」
本当に、斬られる覚悟もない奴が、人を斬ろうなんてするなよなあ、この辺は基本だよ。
「化け物め!」
なんて言うから、
「そんなのお互い様じゃない」
って言って、おじさんの四肢を手早く切断する。
凄い悲鳴。
アキシオンさん、切れ味悪かったよ。
「秋先輩、次をお願いします、茉薙、変わって」
と次々と相手を戦闘不能に陥らせて、その度に僕は言われた通りに手足を切ったよ。
次にお爺さん、そして最後にあの孫を切った。
斬られて彼らは、そのまま雪華さんが順に施術を開始する。
結果として、彼らには新しい手足がついてた。そして、頭の手術のあとの様に、おじいさん、おじさん、孫の3人の頭は髪の毛が全部なくなっていた。
そして、そんな施術の後、自分の身に何が起こったのかわからないって顔をして、キョトン顔を並べていた3人だった。
こんな時になんだけどちょっと笑ってしまう。
それにしても、雪華さんのスキルって、以前はダンジョンの中でこそその能力を発揮して、ダンジョンの一部をもらって、新しい体を造っていたらしいけど、今回はダンジョンから遠く離れている訳で、その助力も無しに彼らの切断された魔物の部位の代わりの手足を造ったって事なんだろうか、雪華さんのスキル、エクスマギナ凄すぎるんですど……。
「代謝機能を使って、いえ違いますね、彼女が扱っているのは北海道ダンジョンです、仮想的な四肢に遺伝子情報に誘導して制作している様ですね、これはもう、治癒と言うより創造ですよ」
ってアキシオンさんも言ってたから、相当凄いんだと思う。
でも、なんでここで北海道ダンジョンの助力を受けられるのだろうか?って素朴が疑問が湧いた瞬間に僕の横、すぐそこから、いない筈の誰かが離れて、急に寒さを感じた。
いや、違うな、暖かいものが無くなった事に気がついたんだ。
この安心感て……!
安堵する僕に差し込む鋭利な感覚。
ちょっと嫌な感じがする。
………………!
「ほら来た!」
最初に衝撃。ガキン!って飛んで来た何かを弾いた。
大したことのない速度に力だ。
僕は雪華さんの前に入る、凄いと思ったのは、その間に茉薙がいた事。
雪華さんが守られた事を理解してる茉薙は、守る行動から、すでに僕の背中の後ろで、攻撃を開始していた。
うお、僕の後ろからなんか出た。小さな破片の様な、よく見ると手裏剣みたいな形をした金属片が、一気に室内に拡散する。茉薙の破砕剣シリウスだって気がついて安心する。いつ見ても凄いよね、この剣の仕様というか性能。
索敵してるみたいな感じ。
気がつくと、僕が切断した海賀一家の手足が無くなっていた。
あの手足、生きていたんだ。
最初に感じたあの嫌な匂いが一層濃くなってる感じ。
その部屋の、一番奥の方で、ここにいる誰でもない妙に高い笑い声。
今までどんな人間とも話した事もない酷く高い音域で、突然姿を表した、得体のしれない形をして物は言う。
「ナンダ、普賢、お前の造った東雲がいないじゃないか」
とピーキーな声で言う。
そして、その横には雪華さんがいて、
「普賢はお爺さまのお名前です」
と教えてくれた。
何か知ってる感じだけど、まあロクな情報じゃないのはわかってるからね。
何も聞く気はない僕は、サクッと倒してしまおうって、未だ正体もわからない相手に対して、そんな事を考えていたよ。