第82話【魔物も震え上がる雪華さん】
大丈夫、わざとらしい表情になってないかな、って誰にも確認できないのでここは黙って頑張る事にする。
まあ良いや、超と、僕、魔物お爺さんと1対1の構図を取る。
今、僕が雪華さんに期待されてる事ってこう言う事だと思う。
きっとこの対応であってる。
僕は、この形を維持する事に専念すれば良いんだね雪華さん。
ちなみに茉薙もお孫さんの方と、戦ってる
真ん中のお父さん、つまり前会長は雪華さんと戦っている。
雪華さんも、魔物化したおじさんからの攻撃に防戦一方に見える。
「どうだい、雪華くん、私たちに移植された魔物はみな現行の彼方の世界では種の中では最強な物達だよ」
と、雪華さんと対峙している魔物おじさんは、だいぶ調子に乗ってそんな事言ってる。感情がスキルドランカーに近いかな。
雪華さん、全くの受け身の状態で、時折、雪華さんの背中の後ろにある、いつもより小さめなエクスマギナ数本でで敵の撓る腕を受け止め、時折、魔物おじさんに攻撃を加えているのかな? 軽く触る様に接触している。
そして扱う雪華さんの方は至って冷静だ。
「どうだい? 君も、そんな現代医療に気の生えたチンケなスキルじゃなくて、本格的に魔物を取り込み、賢い雪華くんだ、あちら側で魔法でも覚えてはどうかね?」
と言ったところで、魔物おじさんは、ようやく自分の変化に気がついた。
「あれ? おかしいな、足が動かないよ」
自分の体の一部の変化にようやく気がついていた。
次に、細く長い腕がダラリと落ちた。
そしてそのままピクリとも動かない。
ここでようやく自分が何らかの攻撃を受けていて、その効果が現れたってのを理解する魔物おじさんだよ。
「何をした? 一体、何が起こってる?」
わかり易くパニクル魔物おじさんだ。
そうなんだよね、雪華さんのやっていたのは、『触診』であり、その病状を判断しての『処方』なんだよね。
簡単いまとめると、治療って奴だね。なるほど雪華さんらしいよね。
「おじさま、その手足以外は、感覚系神経を活性化させただけの人間なんですね」
と雪華さんは言う。
魔物おじさんはそんな説明を受ける時にはすでに綺麗に、人ならざる四肢を伸ばし、まるでこれから手術でも受けるかの様に床に倒れていた。
そのまま、そのおじさんを残して、雪華さん、僕の方に来た。
「あの、秋先輩、あの人の腕を肩の関節から切り落としてください、足は、股関節からお願いします、くれぐれも加減しません様に、ずばりとやってくださいね」
淡々と恐ろしい事を言う。でも、まあ、うん。
ひとまず頷いたら、雪華さんはニッコリ笑って、
「では交代しますね」
って言って、僕とその場所を交換した。
雪華さんって、絶対に正しい人だからさ、間違う訳ないからさ、そりゃあ言われたらまあやるけどさ、やるよ。
って、床の上に大の字になってるおじさんは、今から四肢を切断される恐怖に恐れ、唯一動く顔だけがガクガクと震えている。
「ばかなことはやめなさい」
って、自分が今まで何をして、どれだけの人を苦しめ痛ぶって来たかも忘れて、上から目線で言って来てるよ。
いやあ、僕も雪華さんに言われてしまっている以上、疑うべきもなくて、また逆える筈もないんだよなあ。
って、でも、せめてその恐怖を緩和してあげようと思って、ニッコリと笑顔で近づいてあげた、すると、なんだろう、魔物おじさんの恐怖の表情が増した気がした。
ダメかな僕の笑顔じゃ、ちょっと上品そうじゃないかな、セレブレティな感じに見えないかな? ちょっとここにいる人達に合わせようとしてみた。
そして、アキシオンさんに、
「切れ味上げてね」
って言ったら、アキシオンさんは、
「切れ味が鈍い方が、受ける痛みは大きいですよ」
とか恐ろしい事言ってる。
「いやあ、かわいそうだから、このままスパンと斬ってあげようよ」
って、しまったアキシオンさんの声って他の人には聞こえないんだった。
一人で喋ってる見たいで、僕、かっこわるいよね。
「ごめんね、気にしないで、すぐに終わるから」
と僕は言った。