第109話【モンスターに回復魔法は効きません】
なんの話かピンとこない僕だけど、能力の高い人って、それなり責任を持ってるんだなあ、って、だからギルドとも仲良しなんだなあ、って結論付ける僕だよ。
そして角田さんは言うんだよね。
「ともかく、魔法はまかせてくださいよ、『賢能と兇暴のゼクト』の名において、すべて力で秋さんの行き過ぎ、やりすぎ、目も当てられない部分をバックアップしますからね」
って最後の方、ちょっと気になる事言ってたけど助けてくれるならいいよ、感謝だよ、たぶん、角田さんがいたら魔法には一生困りそうもないよ、ってあまりに感心ばかりしてる僕に対して、
「おや、秋さん、俺を見る目が変わりましたね?」
「もちろんだよ、僕の仲間に魔法使える人がいるなんて思わなかったから、なんか得した気分だよ」
現状も忘れて大喜びする僕なんだけど、未だピンチって事には変わりない。
そんな事を言っていると、僕をかばっているラミアさんが崩れるように倒れる。
限界だったみたい。
「角田さん、最初のは回復? ラミアさんを回復させる魔法とかないの?」
言ってる僕が無茶を言っているなあ、って思う。
通常さ、魔法スキルを扱う人って、導言を一つで、魔法使いは名乗れるんだよ、二つ、導言を知ってたら、種類にもよるけど、優秀な魔法使いだと思う。もちろん、魔法スキルを使う人の優劣は、それだけじゃないんだけけね、それでも、導言の数ですら、魔法使いの優劣を左右するってのに、補助系と回復とか、回復と攻撃とか、二系統の魔法を覚えている人って数えるくらいしかいないから、角田さんが二系統の導言を扱えるってだけでも凄いのに、さらにそこに種類を求めてしまう自分でも何を都合のいい事を言っているんだろうって思うけどさ、藁にも縋り付く思いだよ。
「さっきから使ってはいるんですけど、モンスターには効果ないみたいです」
って角田さんは言う。え? 使えるの他の回復系、縋れたね藁。
ってか、モンスターに回復系って使えないの?
でも、僕、さっき、ラミアさんからの状態異常効果って打ち消されて無かったけ? さっきのの角田さんの導言じゃないの? 違うのかな? ちょっと混乱する僕、いや、流石に3系統、つまり全系統の魔法導言はありえないって言う北海道ダンジョンの常識が僕の流行る気持ちに制動をかける。ほら、子供が期待しすぎて喜ばないようにするみたいな感じ?
「あー、ですですね、系統というか根本というか、人に効く回復魔法はモンスターには効かない作りになってますから」
とシリカさんがいう。
そうなんだ、初めて知った。
「マジか、シリカ、じゃあこの蛇女はどうすればいいんだよ。戦力になるって考えたんだけどな」
とシビアで頼りになる角田さんも知らなかったみたい、以前状況は最悪だけど、なんとか切り抜けないと、せっかく桃井って、ラミアさんの大切な人を助けたっていうのに、これじゃあ、意味がなくなる。
なんとかしなくちゃ、ただひたすら焦る僕なんだけど、春夏さんが、
「大丈夫、秋くん、ここは私達がなんとかするから、焦ったり、慌てたりしないでいいの」
にっこりと笑う春夏さん。
ってこの状況下で春夏さんの声にその内容に、僕は、なぜか安心してしまうんだよなあ。