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閑話13【そして少女達は勇者を目指す⑧】

 あの時、偶然知り合えた、あの釣りの人達、どうしてか私を知っている、そんな事も言っていた。


 そして、この姉妹もそうだ。


 一体何が起こっているのだろう?


 「魔法スキルいらないの?」


 と突然言われて、その言葉に現実に引き戻される愛生である。


 「いえ、要ります、すいません、考え込んでしまいました、ごめんなさい」


 ひたすらに非礼を詫びる愛生は、この後も自分の後ろに人が待たされている事を思い出して、ここは迷惑をかけてはいけないと、そう思った。


 「いいよ、大丈夫、私達は他の人を見ないから、今日は特別にあなただけなのよ」


 と言う椿。


 「ああ、そうなんですか、すいません、わざわざありがとうございます」


 忙しいので、D &Wのトップの二人に相手してもらえるのも恐縮してしまう愛生である。


 「何を言っているの? 私たちもあなたに興味があるのよ、だからいいの、この魔法種を添付できるのって、あの魔王くらいだと思ってたから、びっくりしているのよ、期待もしているけどね、あと、他の人の処置とは違うから、最初は魔法スキルが一つだけだけど気にしないでね」


 と椿が言うと、続けて牡丹の方も、


 「ちょっと時間はかかるけど、多分、このスキルはいずれ貴方の中で開眼していたと思うわ、だから、キッカケをあげる、空っぽの中に何かを放り込む訳ではないから、ちょっと難しいの、だから二人がかりなのよ」


 と追加で説明してくれた。


 姉妹の言う意味がよくわからない愛生だったが、なんとなく、ああ、そうか、やっぱり私も『闇』魔法なんだ、とそう思った瞬間に、椿が、


 「違うわ、貴方はその真逆ね、炎みたいに熱とも取れるし、反射する氷みたいに捉えてもいいかもね、ともかく珍しいの、今の所、『勇者計画』では唯一無二よ」


 と言われて、


 勇者?? 計画?? とまた知らない言葉に驚く愛生を前にして、牡丹が、


 「椿、 ダメ」


 思いの外、強い言い方に、椿の方はハッとして、


 「ごめん、滑った、でもなんの事かわからないでしょ?」


 と聞いてくるから、愛生も頷くにとどまる。


 本当になんの話はわからない。


 思わずキョトン顔の愛生に、


 「始めるよけど、準備いい?」


 と言われて、


 「はい、大丈夫です」


 と答えるものの、具体的に何を準備すればいいのかわからない愛生は、ひとまず、心を落ち着かせて、その瞬間を待つ。


 すると、彼女達はそのまま愛生の前に立って、A4くらいの紙切れを取り出して来た。


 いや、紙ではない。


 色味というか感じが違う。


 まるで、いつかテレビで見たオーロラを、手に持てるサイズにした様な不思議な形。


 「面白いでしょ? これね、ダンジョンそのものなのよ」


 と嬉しそうに言う椿。


 椿と牡丹で同じものを一枚づつ、それを愛生の両側の肩を胸の辺りにそれぞれ押しつけてくる。


 自分のされているそんな様子を見て、なるほど『添付』だと、納得する愛生だ。 


 文字も何も書かれていない、2枚の布の厚みもない紙の様なもの。


 何も書かれてはいないのだが、あえて表現するなら、色味が一色ではなく、複雑になっている紙。


 「じゃあ行くよ牡丹」


 「ええ、椿、貴方のタイミングで」


 次の瞬間、彼女は歌う様に、何かを言った、いや言葉ではない、呼吸音? 口笛の様に聞こえるそれは、確かに言葉であり音であった。


 それは、北海道ダンジョンに干渉できる、言うなれば設計言語、この姉妹が解析したスキルという現象の一端である事を愛生は知らない。もちろん、この天才姉妹以外は誰も知ることはない。


 彼女達の好奇心に駆られるままの研究は、すでにここまで、この北海道ダンジョンという名の現象を解析し、利用できる段階に到達しているのである。


 今の、この姉妹にとっては、三柱神の奇跡すら生温いのである。


 牡丹は呟く。


 「春夏は非干渉?」


 すると牡丹が、


 「うん、あの子、出現させてしまったから、当分意識を作れないでいるわ、まるで眠っているみたい」


 そして、牡丹は、


 「貴方に干渉したのも、きっと『アキ』という音に反応したのかもね、寝ぼけているみたいにね、きっといい夢を見ているわ」


 そう言われる愛生は、一体なんの事を話しているんだろう? と思いつつ、かつて、あの時、鏡界の海で出会った、一体の紙ゴーレムの額の文字である『秋』の一文字を、その色や大きさ、ロゴまで思い出している。


 そして、その時味わった、あの自分の中に入り込んで来る感覚に、それが噛み合って行く感覚が再び来た。


 あ、これで魔法スキルが私にも使える様になったんだ。と自覚してしまえるくらいの分かりやすい感覚。


 愛生が受け取った魔法。


 それは輝きの中らか生まれる瞬きの奇跡。


 やがてそれは、ダンジョン最大にして最強の魔法、かつて葉山静流と戦う真壁秋が一瞬垣間見せた、『超新星』の輝きに届く事を、愛生はまだ知らないでいる。


 この系統の魔法は『輝魔法』と呼ばれる様になる。


 後に『真の勇者』と言われる滝壺愛生の代名詞とも言われる魔法となるのである。

 

 

 

 


 

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