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閑話12【かつての英雄少女と石狩川とダンジョンの子供達⑦】

 「銀行も、都市銀や地方に至るまで、おかしな動きを始めているな、特に法的根拠もなく債権の回収を急ぐ様な動きも見える、北海道の検察や裁判所はこの動きにだんまりを決め込んでいる様子も見て取れる、海賀は随分お金をばら撒いたね」


 付け加えたのは、魔王の財布、真壁秋のパトロンの形に収まり、いつの間にかこの集団の中にあって、独特にして、大きな発言力を持つ様にまでなったほぼ無限の経済力を持つ松橋瑠璃である。


 彼女達の捉えている情報とは、まず、強力なスキルを持つダンジョンウォーカーを組織して、つまり英雄陣のことであるが、それを使っての魔王である真壁秋の討伐、その後の北海道ダンジョンの支配がフェーズ1。


 そしてそれが失敗した今、手の中にある強力なスキルを持つダンジョンウォーカーの無力化、つまり現在、滝壺愛生に行っている。


 不当とも言える装備損出と言う名の債権回収による経済攻撃、家族への経済的攻撃へと転じて、生臭い社会など知らない純真無垢な子供達へ億単位の損出と言うプレッシャー掛け、精神的に行動を封じてしまうこの行動がフェーズ3。


 そして、その間にあるフェーズ2は、フェーズ1が破綻した事で開始され、現在フェーズ3と同時に行われている。


 しかし、それも今、完全に阻まれた様だった。


 多月 蒼の背後に、人影が浮かび上がる。


 一体どこに隠れていたのかと言いたくなる大きな体に、スキンヘッドな強面は相変わらずな、五頭である。


 「熾丸か?」


 振り向きもせず、蒼は声をかける。


 「は、終了につき、戻りました」


 「報告しろ」


 「海賀商事が雇い入れた傭兵団、規模にして、3個師団、殲滅いたしました」


 「こちらの損出は?」


 「軽微な怪我が2名ほど、0とご報告申し上げます」


 「ご苦労だった、別令あるまで待機せよ」


 「は」


 と五頭はその姿を消す。


 と、秋の木葉の幹部である五頭熾丸の報告を受けて、真壁秋の御身の剣を自称する、恐らく、今、世界規模最強の私兵集団とも認識されているの長、多月蒼は言う。


 「聞いての通りだ、フェーズ2は作戦行動の形成前に破綻させた、奴らに姿を見せた、これで我々の意識は奴ら側に伝わるぞ」


 と言った。


 つまり海賀商事が準備したフェーズ2とは、真壁秋暗殺に他ならなかった。


 しかも、真壁秋と個人として対応できない彼等は、一つの街ごと彼を亡き者にしようとしていたのだ。


 そして、今度は雪華のスマホが着信音を鳴らす。


 もちろん、通話をスピーカーモードにして、会話を開始する。


 その電話通話の声から出たのは、ある男性の声。


 「やあ、雪華さんお久しぶりだね」


 ちなみに雪華は、母親の雪灯についで、この国の5大財閥である大柴クループを継ぐ者として序列2位につけている、正真正銘の財閥系お嬢様である。つまり、この海賀とも面識はある。


 まるで怯える様な現在の海賀の会長の声、その通話に対して、


 「あ、海賀のおじさま、お久しぶりです、お元気そうで何よりです」


 そう通話相手の、元海賀会長相手に愛想良く言う。微笑む顔はお嬢様そのものだ。


 「ああ、元気だとも、でも、ちょっと良くないことが起こってるんだよ」


 その声色は相当に焦っているのがわかる。


 でも雪華は、


 「まあ、そうなんですか?」


 「そうなんだ、正に我が社社、いやグループそのものの存亡の危機と言っても良い、だからこの国の財政にも影響しかねない事態なんだ」


 すると、雪華は、わかりやすく悲しそうな声を出して、


 「でも、海賀のおじさま、私には難しい事はわかりませんので、できればお母さんに言って頂いた方が」


 と言うと、


 「いや、君がいいんだ、君が私達の力になれる事は知っている」


 とほとんど断言する様に、この国の5大財閥企業の代表として、あくまで女子中学生に対して言う言葉とは思えなかった。


 「今、君はあの『魔王』の側近なんだろう?」


 「一体、何の話ですか?」


 普段の雪華とは思えない程の冷たく重い声。


 「わかってるんだ、こっちは全部把握している、君は今人類の敵じゃあないか!」


 「おかしな話をしないで下さい、私はただの中学生です、でもボランティアで、北海道ダンジョンのギルドに参加してるだけです」


 そして、雪華は一呼吸を置いて、


 「人類の敵というなら、この北海道に危険な毒ガスを、街一つの人間を殺害する規模の量を持ち込んだどこかの企業ではありませんか?」


 そう、真壁秋暗殺は、そこに存在する街とともに行われようとしていたのだ。


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