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閑話12【かつての英雄少女と石狩川とダンジョンの子供達②】

 死にたい、いや死んでしまった方がいいという、そんな終末的な感情は彼女の体を無意識に、橋の欄干から体を前に出していた様だった。


 思わ体が強張り、血の気が引いた。


 「ね、地元の子?」


 そんな愛生の心情を知ってか知らずか、声を掛けて来た少女、いや、自分よりもずっと年上に見える女性は、声を掛けてくる。


 「は、はい」


 愛生はさらに身を固くする。


 一瞬見えたその顔は怒っている様に見えたから、しかも自分がしようとしていた事も見抜かれていて、愛生に比べて背の高い彼女は自然に威圧的に愛生の頭の上から話かけてくる様に感じてしまう。


 もちろん、その声を掛けた方の桃にしてみると、そんなつもりは微塵もない。


 しかし、弱った愛生の心はどうしても引き気味に捉えてしまうから、その視線も自然に外してしまう。


 「桃は怖いんだよ、つり目だしデフォで怒ってるみたいに見えるから、知らない人ならビビちゃうんだよ」


 と、背後にいた5、6人程度の集団の中からそう声を掛けられる。


 そして、そこから自分の方に出て来た少女。


 思わず愛生は息を飲んでしまう程の美少女だった。


 と言うか男女比で言うなら女子の多い団体だったが、基本的にみんな美男美女の類だと愛生は思った。


 普通にこれがアイドルの養成所の人たちだと言われれば信じてしまうだろうとも思えた。


 「榴だな、今言ったの、覚えてろよ」


 と振り返って言う桃と呼ばれる女性、そして再び愛生の方を見ると、


 「ごめんね、ちょっと怖かったかもね、私、こんなだし、でも怒ってる訳じゃないんだよ、でも、瑠璃がいないとさ、私がまとめないといけないから、リーダーだから、ちょっと怖くなってたかもね」


 そう、笑顔で言うから愛生も思わず向けられた優しい視線に恐縮してしまう。


 そして、桃は尋ねる


 「君、地元の子?」


 「はい」


 愛生はこの近くの工業団地で働く父が借り上げてる家に住んでいる。


 もちろん、この石狩大橋は歩道が付いているとはいえ、人が歩いて渡る様な橋ではなく、また渡った先にもこれと言って何がある訳でもない。


 だからここにいる事自体は不自然さは隠せないのではあるから、何をしていたと問われると、本気で何をしようとしてここに来たのかわからない愛生でもある。


 しかし、愛生が予想する様な質問は一切なく、桃が彼女に尋ねて来たのは、


 「ねえ、この川で、サメとエイが釣れるって聞いたんだけど、それってこの辺でいいの?」


 「え?」


 思わず反応してしまう愛生だった。


 もちろん愛生は初耳だ、聞いた事ない。


 だって、ここ石狩川だし、昔はここにも漁協とかあって、川ガニ(上海蟹と同種)とか八目鰻とかの漁がされてた話は聞くけど、今はどうだろう?


 それにサメとかエイって、海の魚ではなかっただろうか?


 確かに北海道民はエイ(カスベ)を普通に食卓に乗せる、煮物としては絶品だけど、この辺で釣るって言う話は聞いた事ない。


 軽くパニクる愛生だったが、そこはきちんと、


 「いえ、聞いた事がないです」


 と素直に答えた。


 「そっか、じゃあ何が釣れるの?」


 桃は食い下がる。


 「鯉とか? ナマズとか?」


 と思わず疑問形になってしまう愛生は地元ではあるが、それほどここでの釣りに詳しくはない。


 そんな会話を聞いている後ろの方では、「エイ釣れないの?」とか「シュモクザメ見たかった」とか様々な不満が爆発している。


 なんだろう、地元だけに過度だとおは思うが、期待を裏切って申し訳ない気持ちのいっぱいな愛生であった。


 「だよね、サメって海にいる魚だもんね、大きいとはいえ川にいる訳ないよね」


 と桃も納得している様だった。


 思わず、


 「ごめんなさい」


 とまるで自分が地元の代表になって彼女達の思いを絶ってしまった事に対して謝罪をしてしまった。


 「嫌だな、君が謝ることでもないでしょ」


 もちろん桃はそう言うのではあるが、ここで愛生はある事に気がつく。



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