表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
111/1335

第107話【強襲! 深階層、地の底からの刺客】

 あのまま、僕、ラミアさんの口の中にいたら、きっと骨になっていたかもだよ。切るよりマシな事だけど、思わぬところで命がけだった事を今知った。


 一瞬、酸に水って危険じゃなかったっけ? ってかんがえるも、実際には鏡の海に注がれているラミアさんの吐き出す胃酸の量よりも、この広い浅い水の方がはるかに多いので、科学変化による発熱もさほどでもないみたい。


 瞬間的には量は多かったけど、なんか、一気に吐き出して一気に止まったって感じ。


 そして、問題の桃井って人は、あ、あったあった。


 ラミアさんもそれを確認して、まだ吐いていていたダメージも残っているだろうに、その大きな体を使って飛び跳ねんばかりに喜んでいる。よかったね。


 多分、ラミアさんが吐き出した唯一の固形物で、確かに人間大の大きさがあるけど、なんだろう、石化って感じじゃないよね、むしろ木化に近い、近づいて見ていた角田さんが、


 「樹脂だ、これ樹脂化してますね」


 確かに樹脂なら胃酸に耐えられるものね。このラミアさん、それを踏まえて、この桃井って人を樹脂化したんだとしたら、相当に大切な人間なんだな、って想像できるよ。


 確かにプラスチックみたいな感じ、目をつぶっている顔がはっきりわかる。体は小さめだね、まっすぐ立って直立不動の姿勢だね、女の子かな? ローブみたいな服装も樹脂化している。


 あれ? 


 この顔、どっかで見た覚えが…。あれれ、誰だったっけ? 最近見た覚えが…


 そんな事を考えいていると、角田さんが。


 「なんか付いてますね」


 その樹脂化した桃井さんの方に、明らかに異なる素材でできた小さな丸い玉みたいなモノがくっ付いている。


 角田さんはそれを手にとって、一瞬、ギョッとした顔になる。


 「しまった、マーカーだ!!」


 その叫び声と同時に、


 僕の中に、大きな揺らぎが走る。


 「深階層から一気に転移です」


 シリカさんが教えてくれた。


 あ、今度は間違いない、これは敵意だ。


 でも、遭遇感覚ではない、あの君島って奴が僕に向けた害意が1つじゃなくて、多分、3つこの鏡海の間に充満する。


 わかる、気配がある。そしてそれを隠そうともしない奴らがここに現れた。


 絹を裂くような大きな雄叫び、見るとラミアさんが先ほどまでのフレンドリーな姿ではなく完全にモンスターの様相で威嚇している。


 多分、ラミアさんがここまで追いやられた原因が現れたんだと思う。


 ラミアさんの視線を追うと、僕らの近く、もう本当にわずか数メートルの中空に『黒い渦』が3つ浮いている。


 ちょうど僕の胸のあたりの高さに、ま黒い渦が揺らぎながらポカンと浮いているんだよ


 なんだ? これ?


 別にゆっくりと観察してたわけじゃないんだけど、多分、もうその時には『刃』は既に僕の目の前にあった。


 このくらいは避けられるよ、って思ってる僕は完全に油断していた。


 この、どうあっても避けないといけない状況において、僕はようやく、ここに来て自分の体の変化にきがついたんだ。


 体が動かない。


 この時、僕は直感的にわかった。


 これラミアさんだ。


 僕の体が、その動きが速度を失い、そしてやがて完全に停止する。


 たぶん、きっと、これはラミアさんが意識している事ではなくて、敵の攻撃に対するカウンターな発動。


 ここに前に、自分を追い詰めて相手に対して、だから対象は選択なんてしてない。本来、ラミアさんにとっで、僕らダンジョンウォーカーは全員敵となる存在なのだから、その取捨がないんだ。そして、もしかしたらラミアさんにとっても意識なんてしていないのかもしれない。


 当然、ここにいる僕らにも効く。


 まともにその状態異常変化の攻撃を食らってる僕。


 最悪な事に、黒い渦の人たちは耐性があるって事だ。だからこのラミアさんと対峙できていたんだ。


 その黒い渦のどこが手でどこが足でどこが顔なんてわからなかった、でも、それは僕に対して剣を振るい襲いかかって来たんだ。


 僕はまだ剣すら構えていない。ほんと、意識が朦朧とする、ぼーっと立っているだけだ。何をやってるんだ、って自分に叱咤してしまう。


 その迫り来る刃、攻撃しようとしている箇所、それだけ考えても、ああ、僕死んだな、って、それだけは確かにわかるんだよ。


 本当にやばい、何もできそうにない。一体、僕は何に殺されて、何故殺されるのか全く不明だ。


 ザクっていう肉を切り裂く音が聞こえる。


 目の前が真っ暗だ。


 不思議と痛みがない。


 「秋さん!!!!!!」


 大きな声で角田さんが叫んでいる。


 くそう、みんなを助けなきゃ、ラミアさん助けないと、こんな時にも思う僕だけど。


 この危機に、初めての対人戦に、どんどん体が重くなる。


 だから、上手く体が動かないや。 


 なんとかしなきゃって思ってるんだけどな。


 でも、みんなごめん。


 多分、僕死んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ