閑話11【夢のお告げから勇者への道 ①】
ギルドに関する問題もあった。
文科省からは、あれだけ広い範囲で、しかも今回の出来事に呼応するように拡大を続けるダンジョンに対して、学生生徒達に対して負担が大きぎるのでは無いかという意見も出されている。
それには、資質や人格形成の問題から、より負担を軽くして、もっと念密にダンジョンを管理運営しなくてはならないという観点から、ギルドの更なる拡張を訴えるものは多く、ギルドを廃止して新たな組織を立ち上げるという会見はあくまで少数派であり、このことについては、近く、ギルド責任者とも話し合いを設ける目的で計画の元になるための叩き台を製作している段階である。
問題なのは、そのギルドに関して、広報であり、事実上の長である工藤真希という少女の存在が、この北海道と言う社会のどこにもなかったという事。
そして、彼女自身が、ダンジョン側の人間であったということは、この国の行政にとってもまた北海道にとっても大きな痛手であった。
裏切り者とは思えない物の、やはり、ダンジョン主体でその統治が行われていた事こそ、この国が偶発的とは言え、魔王という大きな戦力を保有してしまった事実は無視できない。
人畜無害とはいう者の、計画しない戦力の保有については、その過程においては大きな問題なのだ。
つまり今回のことによって、現ギルドは政府機関からも監視対象になってしまったわけである。
この事態を重く考えている勢力は、表向き、ギルドに協力し組織を編成すると共に、今後、ギルドが二度とこのような事件を起こさないようにするために厳しく監視して行く事になる。
つまり現時点でギルドは改変というなの解体、そして工藤真希はその決定とともに自ら姿を消した。
結局の所、自身のコントロールの及ばない状態を看過でかいなのが大人の社会であり、そこには自主性を模した、自分たちの思い通りになる子供の登場が必要だった。
そして、白羽の矢は放たれた。
当たった本人は、
「ええ? 僕? なんで?」
道庁に呼び出された鉾咲八瀬は、口をあんぐりと開けてそんな言葉を言った。というか叫んだ。
もとよりその正体がわかっている人物、そして、それなりの影響力を持って、さらに、魔王との距離も近い人物。
彼女の存在はまさに打って付けだった。
幼い日に両親に捨てられ、この北海道のダンジョン育成条例の庇護を余す事なく受けて育った少女。
特に数年前に恋人を事故で亡くし、それでも言い残した面影を追って、ダンジョンに通う、健気な少女。
「違うよ、違う、気持ち悪いんだよ僕は、最低なんだよ、だからそんな風に言わないでおくれよ、でないと全部が嘘になる」
と八瀬は言う。それでも、
「わかったよ、つまり僕があんた達の操り人形になればいいんだね? OKだ、北海道には恩があるからね、でも、僕も見返りは求めるよ」
と快諾した。
もちろん、この時、どちらも互いに信用などしていない。
この時、政府も北海道も自分達の息のかかった人間を組織と八瀬の監視のために配置する。また八瀬の方も、この時、この申し出が来ることは知っていた。
その為に、行政側が排除を決めた工藤真希との連携をすでに組んでいる。つまり彼女たちはすでに協力関係にあるのだ。もちろん、それは北海道ダンジョンの安定、安全の為の手段である。
事実上、この決定により、クロスクロスは一部を残して解散、ギルドに吸収される。もともと、協力関係にあった二つの組織だけに問題もなく組織改変は行われる。
尚、政府から、防衛庁経由で、四胴 空、水目 柚葉、北海道庁からは、長尾 浩史、二肩 千草の4名がギルドに追加され、その運営内容、情報を汲み上げる為の所謂、スパイとして送り込まれる事となる。もちろん、この時点て特に女子の方は、あの多紫町関連者であり、魔王真壁秋の側近である多月蒼の関連者であることは、事前に魔王の剣を名乗る秘書兼参謀の存在によって伝達情報は途切れているいるので、概ね各行政は安心しているらしい。一応、これでダンジョンを厳しく監視するシフトは引けたと、そう考えているのである。
この件に関してアキシオンさんは語る。
「公務員には表面的な安心と給料と休みを与えておけばいいんですよ、官僚には天下り先ですね、簡単でしたよ」と言っていた。
一応、これで全ては丸く治ったように見えた。