閑話10【札幌(大通公園)紛争に関するレポート③】
そして、北海道を征服したとは言うものの、実際は何もしていないのも事実で、実行が伴わない場合、犯罪は立証できず、何より世間は平和となって、あの事件、つまり国連軍が来て攻撃する様な事態になって以降、外国人ダンジョンウォーカーも以前に比べ17倍以上に増えて、北海道はますます経済的にも潤い始めている。
また、魔王まんじゅう、魔法ハスカップビスケット、魔王チョコ、魔王メロン、魔王刺身盛り合わせ、等々、玩具、お土産、名産品、等の人気が未だ拡大中であり、地元産業も大いに盛り上がっている。
その『魔王』という言葉自体の登録商標の方でも揉めに揉めているらしい、そんな中でも、銅像を作ると言う話も持ち上がってる。確か真壁秋ファンクラブといか言う謎の団体も活躍している様だ。
そして今回の事件によって、もう一つの問題がある。
これは、北海道では無く、国としての問題で、今も国会で議論されている。
それはかつて、この国を根底から支えた集落、多紫町のことであった。
あの時、あそこまで大々的に、報道されてしまっては今更、隠すこともできない。
これからは、表に出てもらって、そのまま日の当たるところで、その使命を果たしてもらうしかないと言う結論に至った。
防衛、安全保障に表立って力の入れることができないこの国を支えてきてくれた人間達だ。彼女達が言うところの「鬼の為」と「町の為」と言う言葉は、実際は、我々の、国家安寧の犠牲にしていただけではないかと、そう考える政治家も多い。
結論として、この事件をまとめると。
この世界を牛耳る一部の会社や個人、ないはずの権力がこの国に向けられ、北海道は蹂躙されそうになった。
しかし、真壁秋という魔王によって、もっとも理想的な形でそれは回避された。
しかも奴らは、その力が他のものの手に渡る事を恐れた挙句、人工衛星を北海道に落とそうとしていた事実を鑑みると、事実上の政治介入であり、征服とも言える行為だった。
きっと未だそれを諦めてはいないだろうと思われていたが、実際は、この世界の有名なお金持ちが数名、現役を退いた。しかも、自分たちが搾取していたであろう、国々に、その財産をすべて解放してた後にの引退であった。
この謎の多い行動については、その陰で、自身を「魔王の剣」と名乗る女性が暗躍していたという。
その情報網は広く、魔王の腹心として、自身を『剣』と名乗る秘書兼参謀の存在に、魔王の少年の保有する総合力の高さは、未だ頂が見えない。
その影響もあって、さらに、各国の間でも、現役を退く、政治家、官僚が多く、いずれもきな臭い人物だというから、この世界も少しはクリーンになるのではと期待されている。
だから現在、全く不安とか問題の無い日々なのである。特に安全保障の概念からは、どこの誰であろうと二度と北海道に手を出そうだなとと考える人間は現れることは無いだろうと言われている。
北海道魔王はちょうどいい感じの抑止力になってしまっているということでもある。
しかも国費として年間予算は0なのであるからかなりお得かもしれない。
また、今回の事による事態のクレームについても、『魔王』なので仕方がないと他国に言い訳が立つ。
今回の事件によって現実として彼の持つ攻撃対象範囲は、ものの数秒で、外洋に達し、その規模は、某国の打撃空母艦隊2個分とも、軍事資産として対象になるという結論も出ている。
とはいうものの、そんな真壁秋も今や政府の観察対象になっている。
それだけの力を放置する訳にもいかず、でも、手を出すとこっちがどうなるかも分からず、注視されてみている。
そんな中にも、先ほどのNPO法人より格上げして、北海道ダンジョンを政府機関直轄にしてしまい、魔王を役職にして、いっそ、真壁秋を官僚化して給料を与えてはどうだろうか? なんて話まで出ているのである。
もう、学校とかもいいじゃん、魔王なんだし、という意見には文部科学省が立ちふさがった。何より彼はまだ中学生であり、義務教育の最中であり、そんな子供から教育を取り上げてどうする、という意見も出て、例え魔王であろうと、この国の国籍を持ち、北海道民である以上、基本的人権は行使されるべきであり、教育の義務を国会から否定してどうする、みたいに議論は荒れてるしまう。
それでも、この国の根本に事なけれ主義者と言うか、ともかく波風立たないようにと言った姿勢は、北海道に生まれてしまった強力にして、協力的で、特にこちらから手を出さない限り安全な魔王に対しての対応に関して協議は深まるものの、結論は出ないと言う、万事に置いてなあなあな形が長期に渡って繰り返される事になる。