第76話【世界は一つ】
それに、って訳じゃけど、このディアボロスくんて、なんか、見るたびに幼くなってる感じがするんだよなあ。
彼の様なタイプの魔物って、アモンさんやうちの妹同様にその姿は簡単に変える事が出来るらしいけど、時間の経過と共に、白馬さんや三爪さんに甘やかされる度に、容姿も言動も、それに合わせている気がするのって、気のせいでは無いと思う。
ゼクトである角田さんも、あのアモンさんだって、相手に合わせて自分の容姿を調整している節さえあるもんなあ。
特に以前の、クソ野郎さんの姉してた時のアモンさんなて、あの緊張感というか姉そのものの姉の雰囲気、つまり姉気なんて、今はみじんもなくて、年上の姉さん女房そのものになってて、クソ野郎さんの発する「あ」とか、「う」とか、「え」とかで超反応して、お茶出したり、タオルとかお手拭き出て来たりとか、もう、長年の夫婦で、「あれ」とか、「それ」で新聞とかテレビのリモコンが出て来てしまうさらに進化系な感じで、いそいそと動く姿の中、情報を欲しかった突然押しかけて来た僕らにそんな説明をしてくれてたんだよね、もう、驚きの言葉も無い。いろんな意味で。
アモンさんは楽しそうなんだけど、問題は、その内、クソ野郎さん、こんな高度なコミュニケーション受信をされては、そのうち言葉を忘れてしまうんじゃあ無いかって、そんなどうでもいい事を心配する僕だったよ。
ともかく、三柱神な人って、みんなどこかおかしい人ってか神多いよね、って話じゃなくて、つまり、この国の財閥系企業であり世界のグローバル企業を接点にして、こっちの世界に既に異世界は落ちていたって話なんだ。
というか、すでに侵略は始まっていたんだね。
もしかすると、今までも歴史の中の、様々な出来事、戦争やら災害やらって、多からず彼らが関与していたのか持って、邪推してしまうのは仕方ない事だって思う。
そんな僕に、ディアボロスくんはいうんだ。
「僕らの世界が、こっちの世界を侵略しようとしているっていうなら、こちらにも言い分はあるんですよ」
って唇を尖らせてディアボロスくんが言って来た。
「そうなのか?」
と白馬さんが尋ねると、
「うん、結構な数取られたって聞いてますよ」
全然覚えもないし、歴史の中で異世界が現存するなんて話も聞いた事がない僕らはちょっと混乱する。
「ええ? 自覚ないんですか?」
って言うから、うなずくしかない。
「今の自分の姿を見てくださいよ」
ってディアボロスくんが言うから思わず自分を見てしまう僕。
「ごめん、言ってる意味わからないわ」
と、葉山が普通に突っ込んでくれる。
「ゆっくりでいいぞ、みんな待ってくれる、自分の考えがまとまってから話てもいいんだ」
って白馬さんもパパ的視野でディアボロスくんに言い聞かす様に言う。
すると、ディアボロスくんは、言うんだ。
「僕たちは、元々、同じ世界の住人なんですよ」
いつもと同じ声で同じ表情で、全く意識のなかった事の無い方向から来たディアボロスくんの言葉に驚いてしまう。
だから、それが嘘とか真って以前に、僕の頭の中では、離れた物がまた戻って来るイメージができてしまったんだよ。
もちろん、そんなバカな、って瞬時に否定的になるけど、どうしてそれを信じられないのかって、そこもおかしな話だなって、思ったんだ。
そして、それは根源的に魔物とかモンスターを恐る僕らの問題でもあったんだ。
つまり、それは落ちて来るとか、現象的にはすでに落ちていた、って言うかそれ以前の問題だったんだ。
異世界もこの世界も、二つではなく、つまり世界は一つってことなんだ。