第106話【全員、配置完了、準備よし、ひぇぇえ】
確かに、お腹を切るよりはまともだけどさ、ラミアさんのサイズなら、手を突っ込むっていうか、体ごと口の中に入らないと、喉の奥までは届かないよね。問題なのは誰がそれをやるんだろう?
んー、誰も喋らなくなってしまったね。
ここにいる誰も彼もが余計な事を言わないように、そんな空気が流れている。
でもね、僕には明確なビジョンがあった。身長から行くと角田さんだよ。これは誰もが納得する理由だと思う。まさに角田さんの長身は、ラミアさんの喉に手を入れるためにに用意されている、そんな気さえするんだ。
なんていろいろな形で意見をいってこの喉の奥に手を突っ込むっていう、役目を回避しようと試みる僕だったけど、春夏さんが、
「食べるなら、秋くんがいいと思う」
という謎の理由で、なぜか僕が仰せつかってしまう。
「確かに、角田は美味しくなさそうです」
えー、ちょっと待ってよ。実際食べられる訳じゃないから、味関係ないじゃん、しかも僕、美味しい不味いで評価された事ないから、その辺については納得しかねるんだけど。
「あ、そうですね、残念ですが、俺、不味いですからね、ここは秋さんに譲るとしましょう(棒)」
って全く残念な様子もなく角田さんが譲ってくれた。
まあ、いいけどね、ラミアさんを助けようって、言い出しっぺで、強く思っているのは確かだしさ、いいけどね、やるよ、やってやる。
その後は割とすんなりと準備は進む。実際、話を聞いていたラミアさんに説明して、春夏さんが、「おんなじ姿勢になって」
と四つん這いになって、腰を上げて頭を低くする。
そして、配置。
ラミアさんの背中をさする人、春夏さん。
その口元で、出て来た桃井って人を判断して確保する人が角田さん。
で危ないから下がって余計な事をしない人がシリカさん。
そして、ラミアさんの口に体ごと入って喉の奥に手を突っ込む人が僕っていう完璧な布陣になった。
じゃあ、始めるよ。
ラミアさんの口がゆっくりと開く。
ぐわわわ、って、実際はもっと上品だけど、ラミアさんの口が開いて、結構大きく開く。蛇由来のモンスターだかだね、僕の体なんてすっぽりと入りそうなくらいに開いた口が、ゆっくりと顔が落ちるから、手を挙げた格好になる僕が、飲み込まれて行く。
ああ、誰か春夏さんのお母さん連れてきてよ、って泣き言が出そうになるのをグッとこらえて、僕、人生初、ラミアさんに食べられるの構図になってると思う。
彼女の大きく開いた口の中に上半身がすっぽりと収まる。「うひゃあ」って声が出そうになるも、我慢する僕。
綺麗なピンク色の口内から続くのどの奥も、でも、すぐに真っ暗になって、この辺かな? って思いつつ、のどのあたりに手を伸ばす。
僕はラミアさんの喉(?)に手をついて刺激して見た。
ここでいいのかな?
こんな経験ないから不安なんだけど、ちょんと手を触れたら、大量の酸っぱい空気の排出が始まり、一気に胃の内容物が吐き出され始めた。
僕はというと、一応、持ち上がった顔のラミアさんの口から吐き出されながらライオットシールドを傘代わりになんとかしのごうとしたかど、とてつもないライアさんの胃液の流量の前に、ライオットシールドなんて簡単に吹き飛ばされて、あわやラミアさんの胃酸にやられる所を、角田さんが引っ張ってくれたので事なきを得たよ。ナイスフォローだよ角田さん。
それにしても、見た目の美人が吐いてる姿って壮絶だよね、なんか見ていて、こっちも吐き気を催して来そうな感じはしないのは、彼女がモンスターで、吐いているモノが酸で、周りの水に反応してシュウシュウと音を立てているせいなのかもしれない。気持ち悪くなる前にゾッとする。