第72話【自宅前戦争殲滅戦】
あ、射撃手がいるなあ、結構大きな口径のライフルで、僕の方を撃って来てる。
当たらないけど、射線が完全に見えていたので、蒼さんの指示で、秋の木葉の誰かが潰しに行った。
危ないからね、ここ住宅街だから、大口径ライフルとかまずいでしょ。
ともかく、今、僕の家の周りは、いい感じて戦場と化していた。
今集まってるのって、つまりは海賀の残党な訳で、このまま放っておいても、その悪行の数々が晒されて、逮捕されるか、今の地位を失うかなので、もう怖い物もないらしい。
よく見ると、つい先だって、雪華さんをガチで撃とうとしたあの、自衛隊のおじさん混ざってる。
あいつだけ、サクって、殺ってこようかな……。
なんて物騒なことを考えているんだけど、
「ねえ、残存してる航空勢力はどうしたのさ?」
我が家の制空権は完璧だけど、確か、石狩湾の外から、航空機によるミサイルのスタンドオフ攻撃するって計画だったのに、まだ来ない。本当に、全部落とされてしまったのかな?
今回は、あの時、国連では敵になった国の人達が、味方をしてくれてるんだよね。
特に同盟国の打撃艦隊を持ってる人達は、横須賀からも空母を持って来てくれていて、全面的にバックアップしてくれてる。
それでも、飛んでるジェット機を落とすのはちょっと面白いなあ、と思ってる僕は、また叩き落としてやろうかなって、準備していた僕の気持ちは、豊平川の夏の夜空の花火を今か今かと待っているってのに近いかもしれない。
この情報は、白馬さんからもらったものだ。
その白馬さんは、僕のすぐ隣にいて、
「すごいな、このダンジョンの加護と言うのは、弾丸が当たっても、なんの衝撃もない」
って感心してる。
ここ、北海道だからね、みんなを守ってくれるんだよ春夏さん。本当にありがたいなあ。
そして僕らが会話を交わす、その後ろではただただ、この戦場の発砲音やら着弾音、爆発にビビっているディアボロスくんが、白馬さんの足にしがみついてる。
怖がりなディアボロスくんはともかく、だから、多少の爆風やら音也らはあるけど安全なんだよね。
何より近所も含めて、この辺一体守ってもらってるから、まずは一安心なんだよね。
でも、
「そろそろ決着つけない?」
って葉山が言うんだよ。
「そうですよ、魔王さんの凄いところを見せてくださいよ、何しても絶賛惚れ直しますよ」
って葉山と僕の間に割って入って来るのは雨崎さん。葉山の奴、すごい迷惑そうな顔している。
さっきまで、傭兵だと思われる強化スーツの団体を散々斬って突いて、崩壊させて、気が済んだんで戻ってきた様な雨崎さん。
あの魔王城以降、本当にどんな時でも彼女はやって来て、しかも普通に協力してくれるんだよね。
彼女強いから助かるからいいんだけどね。何より蓄積したその技能を高い身体能力で存分に発揮してくれる。
この子の身体能力もすごいんだけど、移植された魔物の能力が結局残ってしまって、時間をかければ完全に分離はできるんだけど、「健康に害がないならこのままでいいです」って治療を断って、今はその化物じみた能力を自分のものにしてる。
それほど見た目に形は変わらなくなったけど、あの時の海賀の会長の様な、著しい変化は無い物の、色や若干の形の変化はあるので、割と目立つんだけど、その四肢が今の彼女に似合っているって言うかなんと言うか、綺麗なメタルカラーな感じで、若干長くもあるけどバランスも取れていて、何より本人も全く気にする様子もなくて、って言うか、完全に受け入れてしまっている。
「まあ、こうなってしまった物は仕方ないですよ」
そんな感じのノリで納得してしまっているのも凄い。
あの後、聞いた話なんだけど、彼女が遭遇した事故っていうのは、試合会場に行く途中、強化選手が乗るバスがスリップして段差のある路外に転落。もう崖から転落したって感じだったって。