第70話【奥さん100人なんて無理だから】
海賀グループがこんなことになった事で、完全に後ろ盾を失った人達はみんなその正体みたいな物を晒して、その立場を無くしたり、酷い場合は逮捕と言う形を取っているそうだ。
特に、葉山や雨崎さんに関わる研究開発を進めていた一部の人達は、その非人道的な行いと、人権を無視した所業の数々が浮き彫りになって、相当酷い目にあっているらしい。
もちろん、そんなのみんな仕事の一環として行っていて、彼らからしてみればそんなつもりはなかった、って言ってるらしいけど、それは本件を調査している人から見ても身勝手な物で、所謂自業自得が自分の身に襲いかかってり事を嘆いてるだけで、特に反省はしていないらしい。
一応、政治家さんや高官の人達の中にもそんな人達はいて、異世界の手駒になっている点を除けば、優秀な人も多くて、彼らを外してしまった後、その穴埋めには多少の時間はかかるって言っていた。
それでも、今回の海賀会長を追い込んで、変態させたって事が大きく影響していて、完全に潮目が変わったって言う話で、僕としてもお役に立ててよかったよ。
「感謝しています、でも100名程度で許してほしい」
って首相はまだ言ってる。いいから、そんなのいらないから。
後、言っていたのは、今後、僕が学校を卒業したら、このまま北海道ダンジョンの管理と運営をして行ってくれるなら、つまり、今の状態での安全を確保してもらえるなら、僕についている『魔王』って言うのを、公務員化して、国から給料を払える、本物の職業として運営して行く計画があるそうだ。
おお、僕、就職決まってるって事か、公務員か、なんか色々と凄い。
もちろんそれは、今回の異世界の落下の件とか、全部無事に終わったらの話ってのは理解しているよ。
一応、僕は総理との電話の中で、気持ち的に楽になったのは、今度こそ、本当に葉山の問題が根治されたって事。
総理は、この国を含むこの世界を蝕む、異世界からの影響を駆逐できた事に胸を撫で下ろしていたけど、僕は、個人的で大変申し訳ないんだけど、葉山の思い出したくもない過去を、あの海賀グループと言う悪の総軸を今度こそ潰してしまえた事にほっとしてる。
総理には色々と感謝されたけど、僕はほとんど反射で動いて、葉山を追って、斬られただけだし、苦境に追い込まれたけど苦労はしていないんだよね。
ひとまず、首相さんと直に会話できるようにとプライベートの連絡先教えてもらって、首相も、「私も真壁くんを『友人グループ』に登録しておくよ」ってお互いにお友達グループに登録の形になった。
なった後に考えるのは、え? なんか軽! 首相ってこんな感じなんだな、って思ってたら、今度は家の呼び鈴が鳴った。
今度は誰だよ!
そこで、薫子さんが立とうとするんだけど、僕は、「いいよ、僕が出るよ」と言って玄関に向かうとそこには、つい最近の知った顔がある。
その表情は、あの最悪だと思われる出会いの時とは明らかに違っていて、輝く様に明るくて、こっちを真っ直ぐ見つめるその視線が強すぎて、こっちがたじろいでしまいそうになる。
「えーと……」
そうそう、今も首相との話題に出ていた海賀グループの今回の被害者、雨崎 亜澄さんが、僕の家の玄関にいた。
そして、僕が何かを言いかけた瞬間に、悪意も殺意も無い閃光の様な接近。
気がついたら、僕、雨崎さんに抱きしめられていた。
そして、雨崎さん、僕をこれでもかって力で抱きしめながら、
「ふつつか者ですが! 末長くよろしくお願いします!」
って言ってた。試合を申し込むが如く言ってた。
そして、その後ろでは、騒ぎに駆けつけたみんなの中から葉山が、
「言ってるそばからこれだもん」
って不満を漏らしていた。
首相の電話から、この流れだよ。
僕、ゴブリン鍋食べられないじゃん。
みんな来ちゃったけど、あ、母さんが残ってるから鍋の方は大丈夫かって、意外にも冷静な僕は、今後来る一番ちかい未来について、その選択肢に頭を悩ませていた。
いや、特にどうと言う事はないよ。
鍋の最後の締めを、うどんにするかおじやにするか、どうしようって事だから。
どっちも捨てがたく、ここで鍋を分けて二つ同時に味わうか、ってかうどんとお米を一緒に入れるって大胆な手もあると閃く僕だったよ。
せっかくのゴブリン鍋だもん、最大限に楽しまないとさ。