第69話【妻は100人までとする】
総理が言うには、僕の為に立法の準備すらしているって言ってた。
いや、僕の生活に置いて、特に法律を作ってもらう必要もないんだけど、今の『ダンジョンのある町条例』で十分だよ、って思って軽く遠慮しますって言おうとすると、
総理は、
「君にだけ、法律の適応場外として、ハーレム婚を許可しようと思っています、人口推計と社会的影響を考えた上で、専門家の意見を踏まえて君が持つ妻の数は100名までとしますが、流石にそれ以上になると、この国の国体も関わって来るので、どうかこれで手を打ってもらいたい」
ハーレム婚って、北海道は規制緩和して容認してるけど、だから、婚姻届も専用のがあるらしいけど、国はあくまで認めて無いんだよね。
で、その法も僕の為に改造するって……。
これ言ってるのって、一国の総理で、しかも僕みたいな高校生に言ってることで、本当に100名程度で申し訳ない、的な感情もたっぷり伝えて来るからさ、そのまま通話を切りそうになってしまう僕だったよ、もちろん、『馬鹿じゃないの?』って捨て台詞残して、本当に言いかけてしまう。
いや、って言うかさ、僕、どれだけハーレム婚したいって、公言してるって思われてるの?、そんな事、一度も言った事ないじゃん。
なんで勝手に決めつけるんだよ。
って言ってたら、僕と総理の会話するスマホの裏側に、ピタリと耳をつけている葉山が、離れながら、
「えー! 100人と真壁をシェアするの? そんなのヤダ!」
って言うから当たり前だよ、そんなつもりないよ、って言おうとする僕に、
「人数が多すぎるよ、もっと少なくして」
って僕の目を見て葉山が言うんだ。
いや、規模の話じゃないでしょ、で、それをしようとしてるのは僕じゃないでしょ。
って言いたかったけど、それが原因で、次に葉山がどんな手段を用いて、どんな行動に出て来るか、何かきっかけを与えそうな気がするからさ、
「ないよ、そんな事は考えてないよ」
って言うにとどまった。
そして、この総理の発言と、ここでキッパリ断らなかった事で、北海道ダンジョンを含む、公共の場所で、自分の立場が、窮地とも捉えられる自体を、現実のものだと理解できることになるなんて、この時点では考えもしなかったよ。
だって、今はそんな事を論じてる場合じゃないでしょ、母さんも「孫も最低100人ってことね」って感慨深く言ってる場合じゃないから、この国の危機だから、世界の危機だから。
僕自身が一度だって、ハーレム婚なんてしたいと思った事なくて、以前、桃井くんの時に、お互い3人で上手く行くなら、みんなで結婚してしまうのもアリなんじゃあないかって、言う話をした事があって、彼らが実際上手く行ってるし、その事、ってか言動を勘違いしているって話なら拡張解釈も甚だしいよ。
一度何かの機会を見て、この辺をちゃんと訂正しないと、ってもちろん、その必要はないって総理の方には言っておいた。
大体さ、みんな勘違いしているかもしれないけど、基本的に、僕、女の子とかそれほど得意って訳じゃなくて、今の現状、僕の家の中に女の子が、それも中でも最上位(美人で優秀で頭が良くて、性格も良い的な)な人達がいるって事で、その内容だって、僕が積極的にって事ではなくて、偶発的要素がほとんどな訳で、そもそも、女子の皆さん一人だって、その扱いとか対応に困っている毎日なのに、それを100人なんて、僕が対応できる訳ないじゃん。
きっと、毎日、誰か彼かに怒られてるし、なんらかの窮地に追い込まれているし、今だって、この家の中で、みんなの顔色見ながら生活してるのに、それが100人なんて数になったら、それはもう地獄だよ。
基本的に僕はいまだに、葉山や薫子さんなんかに怒られて言い返せる自信ないもの。
何をどう怒られてても、彼女達が怒っている以上、また僕が悪いんだな、って思える自信があるもの。
それにさ、僕、ちょっと前まで学校の女子一同にまったく相手にされなくなっていた事実もあるしさ、いまだにその原因もわからないし、そんな僕が100人奥さんを持つなんてどだい無理に決まってる。
総理には悪けど、そんなのは絶対に嫌だって気持ちは伝えておいた。
そしたら、じゃあ、代わりのものを用意する、って話になって、一応、総理との直接な連絡先を交換して、お互いのやりとりは終わった。
一応、総理から聞いた情報によると、国の中枢やら、マスコミにいた異世界側の勢力は排除したらしい。