第67話【政府発表、堕ちてくる異世界】
普通、こんな事を、たとえ公共の電波を使って発表されても、
「いやいやないでしょ?」とか、「そんなバカな!」
って普通なら思うかもしれないけど、
僕らと言うか、今の時代の人は、みんな『北海道ダンジョン』とかって現実に見ている訳で、特に僕らの場合は、過去からの接触については、あの多紫町の微水様で知っていた訳だし、これだけ大規模な接触とは思わなかったけど、まあ、なんとなく、そんな予感はしていた。
だから、僕として、その発表の内容に、と言うかここで、一般に報告して知らしめてしまうことに驚いていた。
もうちょっと、こんな風に英断できる首相が前の時代にいたら、多紫町の人達も早く世間に出れていたかもしれないって思ってしまうけど、でも、多紫町の人たちが隠れていたことにも意味はあったかもって思うのもあって、長い歴史の中で今を生きる僕一人の考えなんて、浅い思考だよねって思ってしまう。
でも、何も知らない人たちにとっては、みんなびっくりする内容で、しかもそれに付け加えて、首相の発表は、現在も、この北海道の地に、その問題の『異世界』が落ちて来ている事も発表していた。
そこには僕らも知らない情報があって、実際に落ちて来てる『異世界』札幌の北海道ダンジョンの中心部の地表を0として、約400mに接近したところで、世界の次元を同じくして接触を開始するとの事らしい。
その時の接触というか衝突の影響は、札幌市内はほぼ壊滅だって。
ちなみに落ちて来ている異世界の規模は、世界というより『浮いた島』くらいの感覚で、大きさは、約1200平方キロメートルって言ってた。
どうも数字で言われてもピンと来なくて困ってると、薫子さんが、
「沖縄本島くらいの大きさの島が札幌中心部に落ちて来てる感覚だ」
と教えてくれた。
ああ、なんかわかりやすい。
え? マジ? でも大きさ実感したら、割と危機ってのも実感できたよ。
それ札幌どころじゃないじゃん。
北海道もどうにかなっちゃうんじゃないの?
って心配してたら、秋田県くらいまで、大規模な地震とか予想される衝突になるって所で、公式記者会見は、この国のマスコミ、各国から集まる記者や有識者からの質疑応答になり、特に、国連を含む友好国には、この事態に対して、協力の準備があるとの内容で、ちて来る異世界に対して、ミサイルやら、破壊兵器での物理上の解体というか破壊を提案されていた首相は、
「それには及びません、すでに、異世界に対する対応は初めています」
すごいな、この政府。というか僕の国の首相。
なんか、すでに準備は万端です、って、堂々とした顔してる。
少なくとも、この異世界が落ちて来ている案件についてはバッチリ対応してるって感じが見て取れる。本当に優秀な政府だなあって思ってると、
「異世界落下について、本案件は、NPO法人『北海道ダンジョン』に一任、責任者は、北海道産魔王、『真壁秋』です、我々政府は国と共に一丸となって協力体制を築いて行く事を誓います」
って言った。
で、質問した記者は、その言葉に、
「ファンタスティック!」
って言ってた。
いやいや、ファンタスティックじゃないし。
そもそも聞いてないし。
政府公式発表会場の首相官邸も、何故か緊張感も砕け和やかになってるし。
ツッコミどころ満載の僕は、食後のお茶をすすりながら、全く動じてない、食卓を囲むみんなも、どうなんだろう? って考えてしまって。
約1200平方キロメートルの信用の重さの前に、気持ちが押し潰されそうな僕だったよ。
あ、お茶、代えたのかな?
これ旨!
驚きは文字通りお茶で濁して、後には、まあいいか、って、お茶のお代わりを求める僕だったよ。