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第63話【真壁家浴室、本当の戦いはここからだった】

 それにしても、今回は首の付け根から胸にかけて、うっすらと葉山に斬られた跡が残ってるなあ。色がさ、ちょっと違うんだ。真皮な感じの薄いピンクな感じ。


 このまま残ってしまうのだろうか、って思うけど、同時に、まあいいか。とも思う。


 このままでもいいしね、それにこの傷見せたら、葉山だって迂闊な行動に出ようなんて思わないだろうな、なんて思った所で、僕は母さんの腕の傷を思い出してた。


 少し妙な気分なんだ。


 葉山に対してした行いで、僕は、母さんの傷の意味をなんとなく、理解できた気がした。


 言葉にはできないけど、なんだ、そう言う事かって、自分の行いも葉山の暴走も、この結果ならいいのかな? って思えるんだよ。


 それでさ、簡単に、気軽に余計な事を言いそうな自分の口をお湯に沈めて、ただ暖かいだけに全身を満たしていると、


 「真壁、お風呂に入ってるの?」


 って急に声がかかった。


 透けて見えるプラスチック板の扉の向こうには葉山がいた。


 「うん、なんか体がベタベタするから、ちょっと流したくて」


 と言うと、


 「雪華さんがね、直している途中でも、きっと北海道ダンジョン、だから春夏の影響ね、で、代謝がいきなり活発になってたみたいだから、汗も凄かったから、体を拭いてあげようと準備はしてたんだ」


 そっか、葉山はユーティリティーの方に行ってたんだね。


 「そうなの? でもいいよお風呂入っちゃったし」


 普通に言ったつもりだけど、ちょっと冷たい言い方になった気がした。だって、葉山の好意を無視してる訳だから、どうあったって拒絶してるみたいな空気になる。


 すると、葉山は、


 「ごめんね」


 って言って謝る。


 「こっちもごめん、あの爺、倒しききれなかった」


 と僕は言う。


 「うん、いいんだ、それはいいの」


 と葉山。いや良い訳ないだろ、あの爺、葉山の敵じゃん。


 あっち、だから異世界ね、その魔物との融合した、しかも本体が後期高齢者の体で、あれだけの実力だと思うと、ちょっと色々と考えないといけないかもしれないと、僕は思った。


 あくまで対魔物って考えていたから、北海道ダンジョンの上位互換のモンスターに対応できれば十分だろうって、そう考えていたんだよ。


 でも、それが、今日、ちょっと考えを改めた。


 人主体での魔物の癒合なんて、って思ってたけど、それを使いこなせる地盤がある事で、魔物単体よりもずっと厄介だと思った。


 ここに来て、僕は、どうしてギルドがダンジョンウォーカー同士の戦いを禁じていないか、ようやく理解できた気がしたんだ。


 僕は魔物と人の融合って、どうしても中途半端な感じが否めないって、もしかしたら、融合された場合、せっかくの強靭な魔物の能力を、人の体が足を引っ張ってしまうくらいに考えていたんだよ。


 しかし、現実戦って見ると、対人戦の厄介さと魔物戦の厄介さが融合していた。


 特に真希さんとかダンジョン内の組織のバランスとか結構気にかけていて、やっぱり、対人戦は色々な意味で厄介だけど必要な気がして来た。


 人ならではの駆け引きとか、特にメンタルでの当たりなんて、ただ怖いだけの魔物と違って、きっと手こずるというか、今日の海賀の会長クラスなら、今現状で生産している勇者なら対応できないダンジョンウォーカーも出て来るかもしれない。


 そんな事を延々と考えてると、急にあたりが冷たくなった。


 4枚引き戸の浴室へ扉が開いた。


 あ、なんだ、葉山もお風呂に入るのか。


 と、そう思った瞬間に、先に体が動いた。


 浴槽から飛び出す僕。


 多分、あの時、魔物爺と対峙した時よりもはるかに早い。


 なんだろうなあ、ともかく危険が危ないって感じたんた。


 「ちょっとどこにいくの?」


 って全身肌色の葉山に止めれれる。


 ってか、この子、タオルさえ持ってない。


 もちろん浴室に入ってくるから服も着てない。


 そんな、ポヨンとしたものを、盛大に僕に当てて来る。


 ダメだ、突破対象が柔らかすぎて、接触どころか視認すら危険だ。


 「ほら、座って、ちゃんと体を洗ってないでしょ?」


 既に、この浴室のお風呂用の椅子やら、石鹸やら、タオルやらは葉山の支配下に入っている。葉山のスキル剣世の応用だね。


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