第52話【非合理で認められない、こちらとあちらとの新技術】
きっと、こうしている今もその体は苦痛に苛まされれていると予想できるけど、そんな表情一つ見せやしない。
もう時間がない。
だから僕は勿体付けづに言った。
「あのさ、僕なら、いや、僕達とこのダンジョンなら、君たちを助けられるよ」
と言った。君、では無く君たちと言う言い方をした。
その言葉に一瞬、彼女の動きが止まる。
「うそ……」
流石に驚いた様だったけど、でも雨崎さんは疑心暗鬼な顔。
「嘘……ですよね?」
ってもう一回聞いて来るから、
「なんでそんな嘘をつかなきゃいけないの、本当だよ、君たちは助けられるよ」
ゆっくりと言い聞かす様に言う、そして、
「ギリギリだったけど前例もあるんだ」
と言ったら、完全に彼女の動きが止まった。
そして、そこに雪華さんの叫び声。
「秋先輩、彼女の四肢を切り離して、早く!」
この言葉に反応して僕は、意識なんて介さないで、雪華さんの言葉を実行する。
どこかれ斬るなって事は、僕自身の視界によって直接理解した。
彼女の手足、その根元に赤いマークラインが引いてあった、助かるよアキシオンさん、って思ったら、
「私ではないですね」
とアキシオンさんが、彼女の手足を切断し終わったところでそんな言い方をした。
だから、
「ああ、そっか、まだ見て護られていてくれたんだね、僕たちは……」
と、僕はなんとなくダンジョンの中を見渡しながら、四肢を断たれて、でも出血をする事なく、床に墜落する雨崎さんを支えるよに抱き抱える。
すでにエクスマギナは展開されている様で、その後彼女の本来持っていた四肢の再生、移植をすんなりと実行して、事なきを得た。
施術によって、雨崎さんに触れた雪華さんは、治療の手を決して休める事なく、それでも顔は驚愕に彩られて、時折、「酷い」と口にする。
それでも今できる事が全部終わってから、雪華さんから聞いた話は、これを行った奴らは、しっかりと繋いだ箇所が痛みを感じる状態で繋ぎ合わせていると言う。つまり麻酔なんて一切無しだ、ショック死してもおかしくないくらいの苦痛を味わっている筈だって説明された。葉山に行った施術と同じだって。
つまりは葉山を成功例って捉えているような話らしい。
しかも、雪華さん曰く、まだ予断は許さない様な状態で、以前とはだいぶ状況が異なっていて、つまり僕らの方も、ここまで手早くできたのは以前の事件から処置を学んでいた為なのだけれども、この処置を施した側もまた、以前よりも進歩改良を加えていて、今までとは若干の異なりがあるそうだ。
雨崎さんの体に魔物の体を定着させる為に、彼女の体の中の主に血液を遺伝子情報からいじっているみたいらしんだ。これは、
簡単に言い換えると、彼女自信が毒に対抗する為に毒になってしまっているっていう、わかりやすくて、わかりにくい状況なんだ。
一応は、今、雪華さんのエクスマギナのおかげで安定はしているものの、すでに意識は朦朧としてる状態で、このままギルドの保健室に搬送されて行った。
ちなみに魔王城とギルドは直結なルートが結ばれているからね。
僕としては、雨崎さんも心配なんだけど、身内の方に気持ちが行ってしまうのは、仕方ないことで、今の心情を考えると……。
茫然自失となっている葉山。
いつもの、綺麗な大きな目をこれでもかってくらい大きく見開いて、どこをとも無く見つめている。
「気にするなよ、葉山、お前の事と同じなんて限らないだろ」
と少し強めに言ってみた。