第46話【新体制D &D再出発】
真々地さんの合流によって、D &Dは以前辰野さんがいる時くらいの厚みというか、結束というか、実質的な組織的戦闘力は向上したらしい。
辰野さんと一心さんの脱退によって、結構な人もいなくなってたんだよね。
だから、あの英雄陣に襲われた時って、一番、脆かったみたいなんだ。
もちろん、D &Dから人が抜けたのはダンジョン適齢期な問題ね。
だから、同時に入って来る人もいて、D &Dって組織は生き物で言うところの新陳代謝を繰り返して、いわゆる世代は順調に代わって行くんだね。
それでも特に今回抜けた辰野さん世代の人間の層って厚くて、弱体化の最中の出来事だったからタイミングが最悪すぎだよ。
だからこそ、そこに上手い具合に付け込んだの英雄陣で、彼らは、どうもD &DというよりD &Dが所持する『風の砦』が欲しかったみたいで、そこを拠点にしようとしてたみたい。
D &Dの壊滅は念頭においても、そこを吸収しようとは思ってなかったって話なんだ。
なんか聞いてると本当にやりたい放題だよね。
何より驚かされたのが、その代表を名乗る人間、海賀龍騎って人なんだけど、雪華さんの知り合いだった。
っていうか、この国にある財閥系の人なんだってさ。
正確にいうならその跡取りさんな人で、そしてその周りにいた人達も、概ねそのクラスの人らしくて、まあ、つまりは英雄陣というよりエリート陣って感じらしい。
映像を見ていた限り、なんか装備も良かったもんね。
特に、リーダーさんと、No.2の女の子の持ってた武器というか、刀っぽい剣はどっかで見た事ある感じがしてたら、蒼さんが、「これ、微水様の作品です」って言ってた。
服装も、ジャージではなくて、金属系の軽鎧に見えたけど、以前、自衛隊の方々と一戦交えた時の形に見覚えがあるから、って思うと、こちらも、
「これ、うちでも開発しているパワースーツです」
つまり防御力に追加して、姿勢制御くらいはするので、力の入り方もアシストされて、概ね、2倍から3倍の速度と力が出るらしい。
普通の軽鎧にしか見えないけど、そんなのもあるんだね、って感心してると、雪華さんが、
「でも、ある程度、能力が向上している特に深階層以上のダンジョンウォーカーになると、そのアシスト制御が、返って障害になる場合があるんです、だからみなさんには向いていませんよ、防御力がちょっとだけ上ですが、これもまた、行動力を制限した上での性能ですから」
って教えてくれた。
そっか、何気なく来てる、このジャージも、かなり僕らの事を考えた上での性能なんだな、って思うと、雪華さんのお母さんである雪灯さんにも頭が下がるよ。
つまり装備依存では限界があるって事だね。
ん? って思って、また新たな、ゲスい疑問が頭に湧いた僕くは、
「高価なの?」
って聞くと、
「ん千万円と億円の間くらいです」
って雪華さんが言ってるから、この人達って、ダンジョンに入った日からお金に物言わせて最強装備だったわけだね、あっけなくゾンビ軍団にやられてしまったけど。
何より雪華さんに聞いた話では、この人達、ダンジョンに入って必ず行う『新規入場手続』してないから、つまりはダンジョンに入る為の最低の手続きすらしていないので、ギルドにゾンビ化の治療も待たされてるって、言ってた。
それでも、個人個人の能力ってのは相当高くて、いい感じのスキルとかも持っている人も多くて、特に対人戦闘特化らしいから、『ギルドなんて関係ねえ!』って感じで一直線に僕のところを目指して来ていて、その間にあるD &Dを襲ったりしてたんだね。
なんだかなあ、って思うものの、まあ、僕は直接彼らを知らないし、それでも、今までにない戦闘スキルってのも興味があるし、そのうち、こっちから体験しに行こうとは思っている。
もっとも未だ組織としては立ち直れない程のダメージ受けてるから、彼らは今後ダンジョンに来るのかも怪しいって、真希さんが言ってた。
ちなみに、D &Dの方は今は、左方さんが中心になって、ほとんど復帰ができてる。
石化や樹脂化は回復が早いからね。
そんな中、驚かされたのが西木田くんのギルドからの脱退だね。
いや、ホントびっくりした。
西木田くん今後はD &Dで活動して行くんだって。
で、代表は左方さん。
近くて支えていきたいんだってさ。
これには水島くんとか、鴨月くんが何かいうかな、って思ってたら、快く送り出されたらしいんだ。
だから、今後はD &Dの西木田くんな訳だね。
そんな西木田くん、
「まあ、お前のスキルいい感じだな、俺と左方ではどうにもならにところも上手く回してくれそうだ」
って真々地さんからも意外な好評だった。
西木田くんの悪食って、割とわかり難いスキルだけど、その辺を理解してるっぽから、真々地さんもなかなか侮れない。
その真々地さんだけど、ダンジョンを離れて何をしていたのかっていうと、チョモランマで剣の修行をしていたらしい。
いや、なんでそんな標高の高い場所でって、それに剣の腕を磨くなら、ダンジョンの方が断然いいよって思うじゃん。
すると、左方さんがシレッとした目で、
「いえ、真々地は一心さんにフられたので、いたたまれずダンジョンから逃げただけですよ」
「あ! バカ! お前!」
あ、元気が復活した真々地さん、なんか顔真っ赤にして俯いてしまった。
「唯!」
って、西木田くんが注意して怒るものの、
「組織が大変な時にほっつき歩いていたんですから、このくらいは言わせて下さい」
って左方さんも珍しくご立腹だよ。
「え? 告ったの? ホントに? 当時から辰野さんと一心さんって鉄板だったのに? で、なんて断わられたの?」
いたのかよ、葉山、って勢いで飛んで来て、真々地さんを質問責めにする。