第103話【誤飲? 人間を??】
そうなんだ、モンスターも笑うんだ、って思ったら、このダンジョンに関する考え方の根本が変わってしまいそうになってる僕なんだ。
もう、これは驚きって言うより感動だよね。
「角田さん、ラミアって、笑うんだね」
って思わずつぶやくも、
「いや、こんなラミアは初めてですよ」
って角田さんが本当に驚いた顔して言ってる。
すると、さっきまで角田さんの後ろで、なりを潜めていたシリカさんが、
「私も、笑われる事、多いです」
今はいらないその情報をどこか遠い目をして呟いていた。
わかるよ、でもそれは今言わなくてもいい事だと思うよ、って思うと同時にすごいな、この人自覚はあるんだって思った。でもあんまり悲壮感とかない、自慢げだよシリカさん。
シリカさんの言動や行動が周りを抱腹絶倒の渦に巻き込んでいる事実はともかく、笑顔のラミアは僕を見つめたまま、口から何かを吐き出した。
おわ、びっくりした。
それは僕の足元にカランと音を立てて落ちる。
角田さんがそれを拾った。
「これは、『アスクレピオスの杖』じゃな、とても珍しいものじゃ、深階層でも手に入ることは滅多にないじゃろうな、売ることはできるが、この杖の価値は計り知れない上に、売ってしまうてもう二度と手に入ることはないじゃろう、道具として使うと何かしらの効果があるようじゃ、この中でこの杖を装備できる人間は、『桃井 茜』じゃ」
お、出た、角田さんの鑑定口調。
で、
「桃井 茜って誰?」
「さあ? 誰でしょう?」
おそらく木でできた、羽の生えた双頭の蛇を模した杖を持ったまま、鑑定した角田さんもさっぱり、的な表情を浮かべている。
僕もどこかで聞いたことあるかなあ……。
思って、きっと気のせいかもって、形にまとめて納得しておいた。
だから、これ以降、この事について考えなくていいやって思ったんだ。
僕の浅くて適当な思考に記憶はともかく、この前も思ったけど、角田さん行う鑑定って、角田さんの個人が得た情報による知識を表現しているわけではなくて、スキルの1つだよね、多分、『鑑定』っていうさ。なんか、今見て確信した。自分の知識以上の情報を分析しているもの。便利なんだか不便なんだかなあ、いや便利なんだけどさ。
僕らがじっくりとってか、その杖についての分析して、ともかくもう一人いるんだなあって納得してると、ラミアさん、もうエルダーとかじゃなくて、あえて『さん』付けで呼ばせてもらうけど、そのラミアさんは、僕をじっと見つめて、ゆっくりと僕の左側を指差した。
こっち壁しかないから、きっと僕の事だと思うんだけど、僕の左側って、何もないよ、あ、左腕に装備しているのはポリカーボネート性のライオットシールドだけど、違うみたい、じゃあ脇に挟んでる、冴木さんから預かったマテリアルブレードくらいしか、って剣を見た後ラミアさん見ると、ラミアがこっくりとうなずいたから、この剣を指していたんだ。
そして、ラミアさんは、自分のお臍のあたりから、下腹部にかけて、スッと指でなぞった。
これは直ぐにわかる。
「え? 切れって事?」
剣を見て、またラミアさんのお腹を見て、また剣を見てラミアさんのお腹を見てから、ラミアさんの顔を見ると、もう『大正解』と言わんばかりに頷いている。
「ああ!」
って急に大声を出す角田さんにびっくりする僕。
「そうか、その『桃井』って奴が、その中にいるって事ですよ秋さん!」
あ、そうか、さっき装備できる人は『この中』に、って言ってたもんね、自分の言った不可思議なことに納得できた瞬間の角田さん、なんかテンション高い。