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第44話【打ちのめされるサムライ】

 僕らは、札幌時計台会議室の中に戻ってきて、再びお茶を飲んでる。


 あのまま魔王城でもよかったんだけど、あそこ、戦う場所としてだから、こんな風な話し合いには向いてないんだよね。


 僕と勇者が対面するためだけの場所だからね。


 「みんなさんお茶でいいですね?」


 って、さっきここに駆けつけてくれた、謎の彼女が来て甲斐甲斐しくお茶を入れてくれてる。


 この謎の彼女も、うちの妹同様に名前がつかないんだよ。


 しかも、愛称とか使おうするけど、彼女自身、どんな呼びかけも自身反応無いし。その癖、こちらからの呼びかけには素直に返事とかするから、とても違和感があるんだよね。


 いまのところ、彼女が誰ってところは概ね当たりはつけてる人はいる。


 葉山とか、なんか、「そう言うことね」とか曰くありげに行ったりするから、「どう言うこと?」って聞くと、「そんなの自分で考えなさいよ」って言われるから、なんだかなあって思ってるけど、その謎の彼女からの、変な意味じゃないけど好意みたいなものはしっかり伝わってくるから、まあ、今はこれでいいやって思ってるよ。


 今はそんな彼女は、明日葉さんの家、だから春夏姉のところで生活しているみたい。


 で、みんなともかくこの会議室用の円卓にはついたものの、誰も何も話さなくて、どこか空気が重苦しい。


 と言うか、今回の事情を知るであろう、左方さん達、D &Dの人、西木田くんも、どこか言いにくそうに、口を閉ざしている。


 仕方ないって思うから、きっと言いたくないってか、言いずらいこともあるだろうから、


 「じゃあ、いいよ、何も言いたくないなら」


 って言うと、真々地さん、すでに雪華さんによって治ってる筈の顔の火傷や怪我に、きっと自分で持ってたサビオ(絆創膏を北海道では『サビオ』と称します)鼻の頭とかに貼ってる。


 で、憮然とした表情で黙ってる。


 今時な感じのどっかの悪ガキかガキ大将に見えるけど、この人、この見た目だけど、僕よりも年上なんだよなあ。


 その真々地さんが、急に立ち上がっって、


 「いや、魔王真壁秋! 俺から全てを奪ったお前には俺の話を聞く義務がある」


 とか言い出す。


 なんだよ、あるじゃん、話すこと、じゃあ話してよ。


 すると、今回、たまたま僕の隣にいる薫子さんが、


 「そうか、こいつもまた、真壁秋の被害者なのだな」


 とか言い出すから、


 「いや、ないでしょ? だって初対面だよ?」


 「そうかな? お前は、人を傷つける事に長けている人間だからな、身を以て知る私が言うのだから間違いない」


 とか言ってるよ。言い切ってるよ。


 僕が見る薫子さんの横顔は、どこか憂いを秘め、どうしてか誇らしげだった。


 いやいやいや……、全く身に覚えがないんだけど。


 「真壁、話が進まない今はそんなのいいから、薫子も根に持たない、そんなこと言っても真壁は気がつきはしないから」


 って、ちょっと離れた席にいた葉山が、すごく、ジトットりした目で僕を見つめて言うんだけど、なんだよ、悪いの僕かよって反抗的な精神に目覚めちゃう。でも横の薫子さんは、言ってやった、って顔して変な笑顔になってる。


 そっか、どこでかいつかわからないけど、僕、彼女を傷つけてしまったんだなあ、って思うと、やっぱり薫子さんにはいつも助けられてるって印象もあるから、


 「いや、なんかごめんね」


 って一応謝っておいた。


 すると、


 「それは何に対する謝罪なんだ?」


 って、すっごい怒った顔して睨みつけるんだよ。いやあ、何にって言われても正直、まったく身に覚えがないし、だけど、薫子さんが傷ついて、葉山も知ってるみたいだから、ここは謝らないとだよ。


 だから、


 「ほら、全体的にって言うか、前から後ろまでって言うか、そんな感じだよ、じゃあ謝らないとだよ」


 おかしいな、さっきよりも薫子さんの僕を睨みつける視線の温度が上がってる気がするんだけど、気のせいかな?


 「お前ら! 人の話を聞けよ!」


 ってテーブルを叩いて、怒鳴りつける真々地さんだよ、そうだよ、今は真々地さん。それどころじゃないから、


 「で? なんで僕のせいなのさ?」


 って聞くと、


 「お前が、あの忍者の里に辰野と一心を連れて行ったから、一心は辰野とけ、け、け、け、け、け、け、け、け」


 なかなか言葉の出ない真々地さんに、そっと水の入ったコップを出す、謎の彼女。


 それを受け取り、一気に飲んで真々地さんは、


 「結婚する事になったんじゃねーか! つまり全部お前のせいだ!」


 と叫ぶ。


 「いや、辰野さんを誘ったのは一心さんだし、僕は直接関係ないよ」


 と言ってみるも、


 「何言ってやがる、全てはみんなお見通しだ、つまりだな、そんな町に連れて行って、辰野との既成事実を作らされて、あの淑女な一心は!」


 何か言葉に詰まってるなあ、言いにくそうな事実なんてないよ。普通に一心さんの親に辰野さんを紹介してただけだし、それを既成事実っていうなら寧ろ一心さんの方だし。


 「一体、なんて説明してるの?」


 って一先ず左方さんに事情を聞くんだけど、


 「正確に説明はしているんですが、真々地が聞こうとしないというか何というか……」


 こっちも言葉を濁すなあ、


 だから、


 「辰野さんと一心さんが結婚するのに当たって、一体何が、問題なのさ?」


 って真々地さんに聞いてみると、あれ?視界に、真々地さんの体に、特に胸の部分に、『2HIT! COMBO!!!』ってへんなロゴの文字が入って、その瞬間に真々地さんよろけたぞ?


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