第42話【僕じゃないから、アキシオンさんだから】
そして、滔々とアキシオンさんは語るんだよ。
「確かに存在を無視される行為は寂しく、悲しみであり、苦痛であり、何よりも替えがたい喜びでした」
じゃあいいじゃん。最後は無事、よかったね、で完結するじゃん。
「ですから、今の剣としてオーナーを含む皆様の前に現れるときぐらいは、目立ってみたいんです」
いつも思うんだけど、このアキシオンさんの人格って、かなり特殊と言うか、変わってると僕は思う。
僕にとっては普通に人と接する感覚なんだよ。
もちろん、人じゃ無いし、僕以外の社会性があるわけじゃないから、剣として、と言うか暗黒物質にしての性格ってなんだろうとは思うものの、ここまで互いにお話とか出来る上に、意思の疎通が可能だと、僕としてもこの剣が人で僕よりもちょっと物知り程度の女の子に感じて来るから不思議なんだよ。
そして、僕とは言うと、普段からお世話になってる女の子のお願いってなら聞いてあげない訳にも行かないからさ、まあ、言うぐらいでいいなら、って思って、
「わかったよ」
って言ったら、
「右手を相手の方へ翳してですよ」
って言って来た。うわ、ポーズとか決まってるのかよ、面倒臭いしかっこ悪い。
ちなみにこうした会話をアキシオンさんとしている間にも、真々地さんはブンブンと自分の体くらいの長さのある野太刀を振り下ろして来てる。まあ避けるけどね。
そのままアキシオンさんは黙ってるから、待ってるんだと思う、ワクワクしてるのがわかる。
この現状を脱する為だ、仕方ない。って思って、一旦距離を取る。
真々地さんも、そんな僕に何かを察した様に様子を見る。強い人だから余裕なんだね。
「お!、いよいよ本気を出してくれるのか、魔王真壁秋」
って言って笑う。
そうだね、剣が無いとどうにもならないからね。
って思って、僕は右手を翳す。
そして、
「顕現せよ! アキシオン!!」
って叫んだ。
で、本来なら、ここで、剣の出現と同時にホッとするのと同時に恥ずかしいなあ、って思うところなんだけど、そんな悠長な事言ってられなかった。
僕がそう叫んだ瞬間だった。
案の定、ここ、とう言うかこの空間が暗転が来た。
うん、本当に、寝る前に照明のスイッチを落としたくらいにパッと消えた。
で次の瞬間に、ランダムな稲妻がこの周辺に無数に鳴り響き、落ち始めた。
ガチの稲妻。
以前、秋の木葉の椎名さんの雷魔法を見たことがあるけど、そんな威力なんて完全に凌駕して、規模もでかい。
本当にびっくりした。
びっくりしている僕の手にアキシオンさん来た。で、周りはゴロゴロ
ピッシャ! って感じだからそれどころじゃない。
おかげて、普通に、見に来ていた葉山や、みんなの周辺にも雷は降り注いで、
「危ないじゃ無い!」
って文句を言われる始末だよ。
雪華さん、茉薙にしがみついてる。雷苦手なんだね。そしてその茉薙に睨まれてしまう。
僕じゃ無いから、アキシオンさんだから。
一応、治って、辺りを見回すと、本当に自然災害級に落雷の惨劇のような様相になってて、魔王城の前の綺麗な石畳が結構な数焦げてた。
みんな、無事かな? って思ってたら、薫子さんの剣って、魔法耐性もあるみたいで、空に掲げてみんなを守ってくれてたみたい。だから瑠璃さんとかも無事。ってか瑠璃さんもちゃんと避雷針作って退避行動取ってたのはさすがだよね。
それにしたって、やっぱり薫子さんの剣はすごい剣だよね。
その守姿、頼り甲斐が半端ない。見た目にも何かの映画の1シーンみたいにかっこいいよ。
「なんとか間に合ったが、今度やるときは先に教えておいてくれ」
ってその薫子さんにも言われてしまった。
「剣に付帯する雷の魔法効果ですか?」
ってこっちも西木田くんによって雷のエネルギーを食べることで回避した左方さんがそんな事を言って来る。