第39話【貢がれる僕、ダンジョンの為だよ】
そんな親達も、今は、この深札幌にいて異造子の人達がかつて起こした事件の事とか、僕らに今でも謝りに来てもいるんだよね、もちろん謝罪は断ってる。
異造子さん達の親を寝かしてたのも、人を産み落とすってのは禁忌で、つまりは魔物としてこっちの世界に寄ってしまった状態を、適応してるってのは反意ありってことになるので、異世界側に感知させる訳にいかなかったから、あの状況下はベストな選択だったし、子供達である異造子さん達の蜂起も止む無しって、今も考えてる。
それに、あの反乱の本当の意味での首謀者って僕はまだ確認できていないと考えているんだ。
それは、今ここにいるディアボロスくんが、まさにここにいるのが理由だね。
思わず白馬さんの横にいるディアボロスくん見ちゃったら、僕を見てキョトンとした顔してる。
あの何でも『混ぜる』って言う変則で凶悪な『奇跡』を持つちびっ子悪魔の存在がそれを知らしめているんだ。
つまり、こっちの世界と今、ここに落ちてきている異世界は多分だけど、行き来できるんだよ。きっとそれは困難で数も限られていると予想はしてるけと可能なんだ。
だから、あの時の蜂起そのものも、仕組まれた事件なのかもしれない。
まるで、試されている様に、謀の様に、何かの実験として行われていた気もするんだ。
それでも、梓さん達を初めとして、あの時の蜂起については沢山の人に迷惑をかけたってそう考えていて、だから、今も会うと反省してるって感じでシオシオになってる。
ダンジョンの事はダンジョンの中に置いていていいんだよ。
過程はともかく、結果的に幸せになった人の数が多いから、いいんだよ、そんな事って僕は思うからね。
僕にとっては彼等の蜂起はそれくらいの出来事だと思ってる。だから謝るとかいらない。
で、異造子さん達も札幌市に生活を構えていてもいいけど、やっぱり親と一緒にいたいんじゃないかなって思って、その一部として、深札幌を快適な街にして、本物の札幌を知らない、このダンジョンから出た事ない魔物の人たちも、札幌市に慣れ親しんでもらおうという計画も乗っけてしまってる。
いずれ、北海道ダンジョンを含む、すべての問題が解決して、魔物の人達が外の世界に行くのも、降って来るのも、そんな先の事じゃないからね。
この深札幌って、見た目に札幌市街地だけど、都市としての機能とかない、人も僕ら以外いなくて閑散としてた、ゴーストタウンみたいな所だから、何かしたいのならみんなでやると良いよ。
中心になってるのがこの財務担当の瑠璃さんみたいだし、特に僕が口を出すこともないから任せてる。
そこで瑠璃さんを見て、ハッと思い出す。
「あ、そうだ、瑠璃さんお金欲しい」
って僕は、近くまで来てお茶を出してくれた瑠璃さんに言うと、
「ああ、わかったすぐに用意しよう」
と、二つ返事。
そんな様子を見ていた葉山が、
「なんか真壁、ヒモみたい……」
ジトっとした目で言うんだけど、違うから。
違うよ、河岸製作所に、更に聖剣の生産の為と、新しいタイプの聖剣の為にラインを作るから、って、その調達資金の事を言われていたんだよ、その事をすっかり忘れてて、今瑠璃さんの顔見て思い出したんだよ。
「それにさ、数字の上でのお金なんて、そのアキシオンさんで、いくらでも操作できるんじゃないの?」
って葉山が面白くもなさそうに言うから、
「あ、そうか」
って口に出して、そういえばそうだね、って思うってると、瑠璃さんが、
「やめてくれ、聖王、私はこの魔王である真壁秋という人物にお金を貢ぐ事が楽してくて仕方ないんだ、ここに来て、初めてお金を使う楽しさを知ったのだから、楽しみを奪わないで欲しい」
って、瑠璃さんにしては珍しく、なんか照れてるみたいにそう言う。