第34話【想定外の出来事、思いもよらない効果】
突然、魔王城の扉を開いて入って来た、その大きな女の子の名前は、日向 ララ、D &Wの魔道士なのだそうだ。
ちなみに両親とも北海道民で、ララは本名だそうだ。
なんでも、日向さん、勇者計画の一環である魔法スキル添付に際して、一人の勇者希望者に何度も魔法を添付してしまったのだそうだ。
「私、偉大な魔道卿様から直々に仰いただいたあのお仕事に任された喜びと責任感に舞い上がってしまって、気がついた時には一人の人間に何度も魔法を添付してしまう大失敗をやらかしてしまったんです、だから、こうなったのは全部はわたしの責任です」
泣きながら言うんだけど、
「そうなの?」
って聞くと、彼女の後を追ってやって来た椿さんが、
「まあ、髭をつけたり、メガネをかけたりって言うチープな変装で、騙される方もどうかしているかとは思うけど、この件に関して、こんな自体を巻きおこす問題点を見つけられなかった計画の甘さにあるから私たちの責任なんだけどね」
と言う椿さん。
「放置に至った経緯も私たちにあります」
と牡丹さんが続けて言うんだ。
どうして、処置しなかったんだろう? とは思うけど、牡丹さんの微笑みがね、なんかこの状況を楽しんでいるのがありありとわかるんだよ。
だから犯人探しなんてしないで、二人は、ララさんの心のケアに努めていた訳らしんだけど、こうして、その問題の人物がここにやってくることをがわかった以上、いてもたってもいられなかったんだって。
「扉が開いて、魔王城に勇者が来るかと思いきや、現れたのが誰も知らない、デカイ女の子で、しかも全力で泣いてるとか、一堂ポカンで、もう神ががってる、凄いシュチュ……、さすが『笑いの大魔王』」
と明らかに大爆笑を無理やり押さえ込む努力に肩を震わせながら牡丹さんが言う。
こっちはいいや。
「でも、そんなことできるものなの?」
すると椿さんは、
「普通はできないわね、魔法スキルも向き不向きがあるから、でもだからと言って、あの数はちょっとおかしいのよね、元々、魔法スキルへの耐性が高かったか、なんらかの才能があったか」
未だ結論付けられないって顔して椿さんは言うんだよね。
「それ、きっとその人の持つ『欲望』じゃないかな?」
って、僕は言った。あれ? なんでこんな事言った? 僕の持ってる答えじゃないぞ。
一瞬、その場はシンと静まりかえって
でも、その言葉にハッとして、椿さんは、
「そうか、そうね、なんで今まで気がつかなかったんだろう?」
と驚きの声を漏らしていしまう。
「確かに、私達は、スキルへの耐性や保有能力、相性、を含む全体的視野での魔法スキルの添付で考えていたから、そこに目を向けなかったわ、椿!」
おお、牡丹さんが普通の事言ってるなあって、思って見ていると、
「さすが魔王ね、ここで欠けていたパーツが完全に埋まった、そうよ欲よ、欲望こそが根元にあるのね」
と感激気味の椿さんだけど、ああ、そうなの? って自分も言ってて半信半疑だったから、あれ? おかしいなあ、って思ってると、
椿さんが僕の方をジッと見ていて、と言うか、その端正か顔立ちの中でも一際目立つ大きな目、その瞳で、まるで僕の瞳を通して中を覗き込む様にしているから、びっくりして一歩引いてしまう。
そして、そんな僕に、椿さんは笑って、
「なんだ、まだ繋がってるじゃない」
って言ってた。
何が? って感じなんだけど、その時の椿さんの顔が、とてもいい笑顔でさ、椿さんって、性格や言動はともかく超絶美少女だから、時を止めるくらいの破壊力があるんだよね。
「時間には影響していませんよ、それは、美しい顔立ちの椿さんの顔をもっと見ていたいと言う、極めて俗的な主観ですよオーナー」
いいから黙って、アキシオンさんは急に話しかけてこないで。