第29話【新・ギルド長からの苦情申し立て】
僕はその日、ギルドの本部で雪華さんの話を聞いて耳を疑っていた。
その内容と言うのが、
「え? 英雄陣って解散したの?」
この言葉は雪華さんの言葉を反芻したもので、彼女の口から出たものだ。
「正確に言うと、リーダーの人を含めて大半の人たちは、この北海道を出てしまいました」
唖然とする僕に、
「根性ないなあ、少しくらい強い敵に当たったからって、心折れるの早すぎじゃない?」
って僕の隣に座る葉山が言うと、
「何にしても、ちょっとやりすぎじゃあないかな、魔王様は、アンデットに襲わせたんだって? 聞いてるよ内容」
と今はこのギルドの代表の八瀬さんが、僕を見る目をやれやれって言う顔して見て言った。
すると、僕の陰から、スクッと飛び出る桃井君。
「僕です、全部僕の所為なんです、秋様は悪くないです」
って言うんだけど、
「いや、君を含めて、モンスター側ってみんな魔王様の管轄だよね、今回はいくら何でもやりすぎだよ」
いやあ、一回、全滅したくらいで帰ってしまうなんて、相手側の事を思いつつ、そんな風にも考えたりもしたんだけど、強いとはいえ日の浅い彼らにとってはキツイ思いをさせたんだな、って考え、柄にもなく黙り混んで考えてると、葉山とは逆方向の隣の真希さんが、
「あれ? おかしいな、私の知ってる情報と違うべ」
とか言い出す。
すると、八瀬さん、なんか妙に咳払いをする。
「私の聞いた話では、英雄陣のリーダーと、その一部のまだかろうじて残っていた奴ら、D &Dを諦めて、今度はクロスクロスを傘下に置こうとして、中階層の支配からする計画で動いていたって話だべ」
って言うんだ。
そっか、急に深階層じゃなくて、手堅く中階層狙いで行ったんだね。
何だ、結構根性あるじゃん、何かを自分のスキル能力によって配下に置こうとする手段とかその性根はどうかは置いとくとして。
「じゃあ、まだダンジョンにいるんだ?」
って言うと雪華さんは首を横に振った。
「結論から言うと、クロスクロスの女子2名との攻防の末に、英雄陣のリーダはに全身骨折、完全な致命傷(徐々に死んでしまう案外手遅れなやつ)を負って、保健室に運ばれました。
あー……
思わず八瀬さんを見ると、彼女、不自然に視線を逸らされてしまうから、なるほどって、それはきっと、小雪ちゃんに、咲ちゃんだね。
あの二人に手を出してしまったんだな、って納得した。
見た目にちっちゃいからね、可愛いし。
なんの情報も持たないで近づいてしまったんだね。彼女達の見た目って、もはや凶悪な罠に近いものがあるからね。
チョウチンアンコウのいるところの頭のひらひらくらい、『ん? なんだろ?』って近付いたらバクってやるやつ。もしくは足元を元気にハシャギ走り回る幼稚園児の質量がダンプカーくらいるって感じかな。
散々床に投げつけられて、同時に浸透勁を打ち込まれたって感じだろうね。
彼女達のヤバさは、あの深階層で猛威を振るう無手、無装備、素手上等な戦闘狂集団、『怒羅欣』ですら手を出そうとしないもの。
そんな、あくまで予想をしている僕に、
「で、でも、ほら、彼女達、いい子だからね、きちんと僕の言うこと守って『即死』はさせてないから」
って、八瀬さんが言うけど、顔が引きつてる。八瀬さんって、クロスクロスの発足当初から、組織員を守ろう守ろうとするよねえ。来るもの拒まず、去るもの追わずな人だけど、組織にいる人はキッチリかばうよね。
そう考えると、八瀬さんのクセに割とみんなからの評価は高いんだよなあ。だから、今は真希さんの代わりにギルドの代表なんだろうけどね。
と、まあ、英雄陣の方は仕方ないね。
彼等はちょっとダンジョンを舐めすぎたんだよ。
しかも今回は壊滅した条件は、僕らの所為ではなくて、直接的にはギルドの所為だから特に僕が責任を感じる事はなくてよかったよ。