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第28話【不死者達の宴】

 そして背後からはズリズリって言う、まるで重いものを引きずるような音。


 振り向くとそこには、上半身美女、下半身は大蛇のハイエイシェントラミアが、その手に、逃げた他の英雄陣の人間を数人、手掴みにして持って近づいて来る。


 その顔は恐怖に引き攣ったまま、樹脂化されている様だ。


 ああ、これギルドに持っていかないと解除されないやつだね。


 あの時、あの浅階層に、僕にとってはいつも見ている、キリカさんと、フアナさんなんだけど、なんか二人が出てきて、僕としてはでテレビでやってるスポーツの競技会で知り合い出てきたくらいのテンションなんだけど、もう、その二人の表情、キリカさんたちの方ね、まごうことなくモンスターな感じなんだよ。絶対に僕らには見せてくれない表情だよ。ハイエイシェントとしての能力と迫力を遺憾なく発揮してる。


 それでも、彼女達を知る僕らからしたら、かなり遠慮してるのは否めない。


 フアナさんの樹脂化ってのも、相手に対して戦力は奪うものの、傷つけないよ、って感じの物だからね。


 ほら、あの時、浅階層でのラミア事件の時、桃井君が樹脂化されていた理由がそれだからだよ。


 フアナさんは桃井君を絶対に守るって一心で、彼を樹脂化したって事を考えれば、納得いくんだ。


 だって、単純に戦力を奪う為になら、石化とかの方が簡単。極端なことを言うと、動けないくらいの状態異常だって、フアナさんの場合は手段として沢山ある。もっと言うなら殺してしまうって言うのが確実だよ。


 でもそうはしなくて、樹脂化と言うのは簡単に壊れないし、割れないし、かなり安定した状態変化だよ、しかも石化と違って軽くて運びやすいし。


 その後の蘇生の事も考えてる。親切な状態変化だよ。


 それに、茫然自失な英雄陣の生き残り二人の前に、自分が樹脂化した敵をそっと下ろして、一箇所に集めてるんだよね。行方不明者が出ないように、親切に積み上げてる。


 まあ、彼女を知らない人なら絵的に怖いかもだけど、僕から見たら、そこまで親切にするんだなあ、フアナさん。感心してしまったよ。


 側からそんな淡々とした様子を見ている生き残りの二人にとっては恐怖でしかないけどね。所謂、自分達の仲間の屍を積み上げられているんだからさ。


 そして、そんな二人にこの時ばかりは吸血鬼の王として、キリカさんが近寄って何か言ってた。


 残念な事に声まで遠くて拾えないけど、それでも、その迫力ってかプレッシャーは伝わって来るよ。


 人のいい笑顔で、いやこの場合は吸血鬼の良い笑顔で、きっとわざと見せているんだろうと思うけど、その牙を見せて微笑んでいた。


 そこで、動画は終わってて、終了と同時に、


 「いかがでしたか、秋様」


 って桃井君がとっても良い笑顔っていうか、もう褒められるのを前提で聞いて来るから、


 「うん、すごいね、怖いね、強いね、いい意味で酷いね」


 ってどれか一つ、桃井君に対しての褒め言葉になれば良いって、思った言葉も選べす言ったら、


 「はい、頑張りました」


 って言うんだよね。


 その頑張ったって方向は、絶対に相手を倒したってことよりも、いかに相手を物理的に傷付けずに倒したかって事なんだって、気を使った僕偉いでしょ?って事だと、理解できたんだ。


 もっとも体の方はともかく、重篤なトラウマ物だよね、英雄陣の人たち。


 本気なアンデット達のガチな能力に、思わず、英雄陣の人に対してちょっと気の毒だな、って思ってしまうから、やっぱり魔王だけど人側の立場だって改めて自覚してしまう僕だったよ。


 北海道ダンジョン内のアンデットって、人を食べはしないけど、次々と人を襲って、襲われた人はアンデット化して、恐怖から解放されて叫ぶ、まるで不死者の宴の様に見える、そんな映像だったよ。

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