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第23話【勇者の背負うべき業の深さと書類の厚さ】

 まあ、ちょっと僕がめんどくさいことを我慢すればいいだけだ。


 と思いつつ、


 「これ電子書類か出来ないのかな?」


 って愚痴を零すも、


 「今も、行政といえば手書きの書類にハンコの世界だからな、麻生さんも苦労しておられていたよ」


 と薫子さんもそんなことを言っていた。


 あ、そうか、薫子さんは麻生さんを見ていたからだね。そう言った面倒臭い事を全部一人でやってたって、言ってた。


 でも、最近なら結構書類系に強い女子ギルドメンバーとかも入って来ていて、申し送りは滞り無く終了したって話なんだけど……


 思わず僕は薫子さんを見ると、


 「なんだよ、何が言いたい?」


 とか、あからさまに怪訝な顔して僕の方を攻撃して来るんだけど、


 「薫子は手伝わないでね、仕事増えるから」


 って葉山が先んじて、そう薫子さんに言ってた。


 「だから、こうして何もせずに見守っているだろ?」


 って堂々と言い切ってる薫子さんだけど、それもどうなんだろ? とは思うけど余計な仕事を増やされるのはごめんなので、黙ってる。


 しかも本当にめんどくさいことは、全部葉山がやってて、僕は、『本人記入』の部分のみの記載を頑張っているので、今、こんな話に気をとられていては葉山の苦労も台無しなので、間違えない様に頑張ってる。


 そういえば、あれから、聖剣の何本かのサンプルができるって話が来てたから、この後

雪華さんの家にもお邪魔する予定。


 一応は、聖剣は本人の希望に沿った形状というか武器のタイプになる。もちろん聖剣なので、『剣』の枠を出ないものって事にはしているんだけど、つまりは、長剣やら大剣やら、短剣やらで、希望によっては二刀も有りって事にしている。剣をはみ出すタイプとしては、ギリギリ槍くらいまでかなあ。


 それらの申請はこのダンジョンに入る前段階の、新規入場者登録の際や、ギルドにおける『勇者申請』に、『聖剣を持てるとしたらどの様なタイプが欲しいですか?』のアンケートが生かされる事になっている。


 だから結構な数のサンプルを造っているんだよ。


 で、そのアンケートが事実上の発注になるので、記載したダンジョンウォーカーが中階層の中間部にたどり着くまでが勝負になる。


 一応、雪華さんのお父さん、そして微水様曰く、


 ラインが稼働し始めれば、申請人数にもよるけど、概ね2日あればなんとか。


 って言ってたから、発注日という申請日から、聖剣が配布される場所までの間に、日数経過の条件を配置して、中階層のジョージとの対戦は、浅階層に入って、2日以上経たないとダメ、って新たなルールを設置してもらおうと思ってる。


 これで聖剣製作にもある程度の余裕が出来るってものだよ。


 この辺の事情についてはギルドのシメントリーさんに、お願いしようと思ってる。強制力が働くからね。


 これで、概ね形としては整ってきた。


 いよいよ『勇者大量生産計画』は発進だね。


 そう、感慨無量にふけってる僕は、


 「真壁、そっち終わったら、今度はギルドへの書類あるよ」


 って言われる。


 そうだった……。


 今後は、ギルドと僕らの方で相互に行きちがいがないように、ダンジョンウォーカーの安全を守る為にも、書類によって情報を共有しようって事になっていた。


 これで終わるなあ、って思ってた書類の山を。その罪を重ねる様に積み重ねるられる厚さを見て、それと同量にある次の書類を見て、とほほ、ってなる。


 「ほら、秋くん、魔王様ですから、頑張らないと」


 っていつの間にか僕の後ろに来ていた謎の彼女にそう言われる。


 思わず振り向いたら、いつもの賢者的な服装で、柔らかくニッコリと微笑んでる。


 本当に、この子、いつもいつの間にか当たり前の様にいるんだよなあ。


 でも、まあ、頑張るよ。


 きっと誰も気がつかないだろうけど、『勇者』って、その強さの後ろ側に、多くの犠牲や悲しみ、哀れみ、そして多くの人の徒労とも言える長い書類関係に時間を経て作り上げて行くものなんだなあって思ったんだ。


 だから、勇者ってのも『(ごう)』が深いものだな、ってつくづく僕は思ったよ。

 


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