第14話【ダンジョンウォーカー強化プラン】
かつて、北海道ダンジョンが誕生した際に、木下さん、寿命が尽き掛けてて、でも、死ぬなら、好きな事をして死にたい、ダンジョンで死にたいって、その趣味である、クリエーチャー好きを拗らせていて、つまりは北海道ダンジョンのモンスターに囲まれて死にたい。
出来ればモンスターに食べられたい。って、動いてはいけないその体を引きずって、誰にも悟られない様に、このダンジョンに入って、そして力尽きたそうだ。
そして、出会いがあった。
彼が倒れている、今まさに命尽きようとしている時に、通りすがりの真っ青な体をした吸血鬼が、たまたま木下君の血を吸って、『不味ッ!』っていながらも、彼をアンデット化。
『自分で、歩いてギルドまで行って、アンデット化を直してもらいなさい』って言って去ろうとするキリカさんに、『弟子にしてください!』とストーカ化。
当時、マジモノの吸血鬼に出会った衝撃は今でも忘れないって、そう言ってる。
アンデット化した木下くん、病気で死にかけてるかつてとは比べものにならない程の、アグレッシブさを見せて、キリカさんを追いかけ続けているうちに真希さん達に出会い現在の地位についていると言う話なんだ。
ちなみに各階層によって、モンスターの強さのバランスを調整したり、このダンジョンを現在のスタイルである浅階層、中階層、深階層の三つに分けて、各階層の区切りにゲートキーパーを置いたり、効率よく、みんなで強くなるって形でダンジョンをサービスできる様になったのはみんな彼のお陰なんだよ。
まさに、影の功労者。縁の下の力持ちって訳だね。
で、その彼が、怪訝そうに、モンスターの強さを調整するのに難を示したんだ。
「あんまり強い敵ってのもよくないよ、魔王様、僕としてはダンジョンウォーカー側を十分配慮した上での、この調整なんだよ」
って言われる。
「でも、その異世界側のインフレに、こっちが追いついてないなら、それもやむなしじゃないの?」
ズバリ切り込んで行くのは此花椿さんだ。
「じゃあ、浅階層のダンジョンウォーカーの中には対応できない人も出てくる可能性があるよ」
すると、白馬さん、
「まあ、結局は北海道ダンジョンによって、身体や、状態は保全されてる訳だから、ダンジョンに入ってくる以上は弱いってのはないんだがな、結局は、モンスターや魔物ってものに対しての『度胸』の問題ってのは大きいよ」
と言う。
「確かにね、じっくりゆっくり、モンスターの大きさや禍々しさが、階層を増して行くごとに、大きくなっても、気がつかなうちに慣れて行くから、今のバランスは壊すべきじゃないとは思うわ」
って葉山も言う。
「確かにそうだ、私は1日で深階層まで辿りついたが、私の様なタイプは、今もそれなりにモンスターからはプレッシャーは感じる」
と言うのは薫子さんだ。
そっか、そうなんだね。
「ねえ、魔王、なんで私達はモンスターを『怖い物』って思うのかしら?」
「え? 怖くはないでしょ?」
って間髪入れずに反射的に言ってしまった。
「ごめん、尋ねる相手を間違ったわ、ねえ、そこのアンデット、どうなの?」
質問の相手を木下くんに変えて尋ねる。
「そうだね、基本的に、自分に対応できない事、だから敵わないって言う、特に自分より体が大きい相手には瞬間的に、本能でそう思うだろうね、だから結果として逃避するプランが頭に浮かぶはずだね、モンスターとしての本懐だね」
と言った。
その言葉を飲み込んで、椿さんはしばらく考えて、から、
「じゃあ、対応できる能力を添付したらいいのよ」
と言った。
それって、一般のダンジョンウォーカーに力を付与するって事なんだろうか?
「そんなことできるの?」
思わず聞いてしまうと、
「魔法スペルなら、ある程度は、数の制限とかあるけど、誰でも唱える様にわできるわよ」
その横にいる牡丹さんも頷いている。
「本当か! 俺でも魔法スキル覚えられる様になるのか!」
意外な所で、白馬さんが興奮してた。
基本、この人、王様スキルあるけど、純粋な戦闘スキルは無い人だった。
「なるわよ、ダンジョン限定だけどね、もうちょっと拡張すると、北海道全体にくらいなら拡張できるけど、今は必要ないでしょ?」
って椿さん、僕を見て言うんだ。
彼女曰く、魔法スキルの言語化に成功しているらしいんだ。まだ、全部ってわけでもないけど、そこそこ強い魔法は回数制限はあるものの使用できると言うことだ。
つまり、どんなダンジョンウォーカーでも回数制限のある、重火器を持っているみたいなものだから、今まで中階層止まりだったダンジョンウォーカーも、いや浅階層クラスでも、添付された力を使って、モンスターからのプレッシャーを克服して、深階層に対応できるってことになる。
そして、びっくりする僕に、
「じゃあ、ダンジョンウォーカーをみんな魔導師にしましょう! 剣を使ってなんて意味ないから、やっぱりダンジョンには魔導師よ、魔法なの!」
って魔法スキル史上主義とも言える椿さんが、声をハツラツさせて言った。
つまり、こうしてダンジョンウォーカー、『魔導師大量生産計画』は始まろうとしてしまったんだ。