第9話【新団体、ぞくぞく】
ひとまず、ダンジョンから帰ってきた。
ゆっくり歩いて帰ってきて、ちょっと中階層あたりで渋滞に巻き込まれて、それでも夕方くらいには外に出れたから、今日はそれほどでもなかったね。なんてみんなで話してた。
最近のダンジョンは人が増えた。
以前から言われていたことだけど、特に中階層は人の層が厚い。
多分だけど、ダンジョンの利用人口は、以前の少なく見積もって3倍程度は入ってる。
そんな有象無象に増えたダンジョンウォーカーが、次々と、新しい団体が立ち上がっては、消え、消えては立ち上がり、って感じで、現在はそれでも落ち着いて、概ね20程度の新団体が活躍している。
概ね平和的で意識を共にする人達の、温和な共同体がほとんどで、ギルドに届けを出して、仲良くやってる。
でも、やっぱりと言うか、たくさんいる人の中でも要注意な人達、団体もいる。
例を挙げると、『英雄陣』とか、スキル至高主義者な人達で集まってる、言いたく無いけど、スキルジャンキーな集団、時折、ダンジョン内で問題を起こしている。
彼等が困るのは、普通、こういった集団って、上に上にって能力の向上を求めてる傾向にあって、能力に満たない人って言うか、自分より下の人間には歯牙にも掛けないって感じなんだけど、彼らの場合は手当たり次第。
戦う相手も悪い意味で選んで無い。そんな感じだから、ギルドとも結構な揉め事を起こしてる。と言うか、僕から見るとわざわざギルドに対立するみたいな、目をつけられるような行動をしている様にしか感じられない。
みんな強力なスキル持ちで、戦闘スキルを持ってる事が参加条件みたいになってるらしいから、救われてるのは規模が小さい事かな。
白馬さんに言わせると、2個小隊程度って言ってた。小隊ってのが何人なのか、今度聞いておこうと思う。
そんな強力なスキルを持ってるダンジョンウォーカー自体が少ないからね。そこで中心になってる人って、『光』って言う超強力なスキル保持者で、今、ダンジョンウォーカーランキングを駆け上がってる、きっと近いうちに来るんじゃ無いかな。つまり、僕を倒しに深階層までって事。
その他にも、『太陽と月の教団』って言う、自称僧侶集団。つまりヒーラーな人達。
こっちは至って平和な人達で、ダンジョン内にいる傷ついた他のダンジョンウォーカーを見つけると、無償で回復してくれるんだって。基本、凄いいい人達。ダンジョン内の清掃とか、ギルドが主催する、そんな催しは積極的に参加していて、だからギルドとも関係が良い。
でも問題は、『世界蛇』と対立している事。
あ、地球蛇って、今はもうすっかり人畜無害だよ。と言うか、超協力的で、ギルドともいい関係で、特にどこの団体と対立するはずもないんだけど、『太陽と月の教団』は『地球蛇』に対して、完全に対立の姿勢を取ってるんだよ。
僕としては仲良くして欲しいんだけどね、と言うか対立する所って無い気がするんだけど、桃井君に言わせると、『宗教団体なんてそんなものですよ』とか言っていた。何かトラブルがあると、地球蛇だって今はおとなしいとは言え、元はあんな感じだったし、対立からの対決なんてことになると大変だから、この辺は、今、秋の木葉が調査してるみたい。
あと、太陽と月の教団のリーダーの人のスキルって、何かすごいらしくて、集団的治癒と言うか、回復と言うか、規模的なヒーラー(状態異常も含む)らしくて、D &Wの此花さん達が物凄い興味を示してる。
そして、『天返』って集団。
こっちは、さっき紹介した『英雄陣』とは違い、スキル無しの集団で、自身の鍛えた体と技、編成で、ダンジョンに挑む集団。ここまで言うと、あの悪名高い怒羅欣と同一視されるかもだけど、こっちは、至ってマトモで、常識的。そして人数も結構いる。
この組織への加入条件っていうのがスキル無し、ノービスってのが条件で、割とマトモな新興集団なんだけど、ギルドの麻生さん曰く、もしかしたら、その性質上、彼等の方が大きな問題を起こす可能性があるって言ってた。と言うかアドバイスくれた。
なんでも、このダンジョン内のスキル持ちとスキルなしの比率が重要な鍵になってるらしい。
他にも色々あるんだけど、相変わらず、北海道ダンジョンは、対モンスターでは無く、対人戦闘で賑わってる。
でも、だから、こうして毎日、ギルドと提携して、僕らや、他の組織も協力して、ダンジョンの安寧を見守ってるんだよ。
ダンジョンウォーカー同士の戦いや切磋琢磨は大いに結構なんだけど、それでも目的が異なるダンジョンウォーカーだからさ、みんながみんな争いたい訳じゃないからね。
僕としても、ダンジョンウォーカーとして基本的には対モンスター戦さえ上手にこなしてくれれば、近未来的にはきっとうまく行くと思うから、その辺の調整と言うか安全には配慮している。