第7話【ねえ、彼女、一体誰?】
一人で大丈夫ですか?
って声をかけようとしている間に、角田さん、あっという間に、敵を蹴散らして、シェイドはまさに、彼女の槍の攻撃を受けて霧散して行った。
強いなあ、角田さん。
僕、クソ野郎さん以外で槍をメイン武器にしてる人って初めて見たから、色々と新鮮。
この角田さん、角田 涼子さんも、新しくこのパーティーに加わったんだよね。女の人だよ、18歳の冒険者の人、金髪ポニーテール、見た目にヤンキーっぽくて、『喧嘩上等』を貫いてるうちに、北海道ダンジョンに辿りついたんだって。
なんかわざわざ僕の家まで来て、仲間に入れてくれって頼まれたんだ。
特攻服っての? 北海道はそういう服着る人いないから知らないけど、そんな出で立ちで、「訳は聞かないでくれ!」って土下座してたんだ。
どうしても深階層に僕と一緒に行かないといけないらしくて、そして死んうくらいの気持ちらしくて、それならって事で仲間になったんだよね。
今は僕らと同じジャージなんだけど、初対面の出で立ち以上に、その金髪のポニーテールが、美人さんの顔だけど、強面な感じに妙にしっくり来てる。
でも、あの角田さんと名前がそっくりだね、って言ったら、新しい角田さんは、ちょっと遠い目をして微笑んでた。
「魔法スキル出番なかったですね」
と恥ずかしそうに微笑む、シェイドを発見した彼女に対して僕は思うんだけど、その前に、
「ねえ? 彼女誰?」
急に背後から言われるから心臓止まるくらい驚く。
「急になんだよ! びっくりするだろ! いたのかよ!」
って思わず怒鳴ったら、
「いたわよ、ズーッと最後尾にいたわよ、失礼ね」
って葉山に逆ギレされる。
まあ、そうだね、居たね、一緒に家出たもんね、すっかり忘れてたよ。
もちろん、葉山も一緒にいる。なんかいつも一緒だったから特に意識もしなかったから、いるのが当然って僕の甘えもあるんだろうとは思うけど、声かける前に声かけろよな、びっくりするから。
そして、葉山の質問を思い出す。
だから答えるけど、一瞬にして答えは出る。
「知らない」
本当に彼女、誰だろう?
わかりやすい魔法スキルらしい出で立ち、華奢な体躯をローブに包んで、僕よりも少し低めの身長に、腰まである長い髪、その頭には何やらちょっと曰く付きみたいなサークレット。何よりも特徴的な瞳は緑と青の間の色で輝いて僕の方を特に意識することもなくフラットな感情で覗いている。
そんな僕に対して、
「アッキーは意外に手が早くて、びっくりしたべ」
とか言い出すよ真希さん。
そうなんだよね、今、僕のパーティーに真希さんいるんだよね。
なんでいるのかと言うと、「暇だから」って言われた。
「いや、早くないですし、手とかじゃないし」
って言い返すと、真剣な顔して、いや、やれやれって顔かな?
「女の子の立場も考えて発言するべ、今後はそう言うところも教育してやっからな」
と言って、
「委員長ちゃんも、早く手出してもらいたいべ?」
と、謎の呪文を葉山に投げかけてる。葉山、激しく頷いてる。
「焔丸君の方もお願いします」
って四胴さんが言ってた、とう言うか叫んでた。
「任せるべ、今日花と輝郎をまとめた女だべ、藻岩山と羊蹄山の距離を『0』にするより難しいと言われていたカップルだったべ、泥舟に乗ったつもりでドーンっと任せるべさ」
なんだろう、自分の親の馴れ初めを意外な人物から聞けてびっくりな僕はその言葉の内容に突っ込めなかった。
「いや、ギルド長、元ギルド長、泥舟は脆く崩れて沈む例えなのでは?」
ああ、良かった、僕以外に白馬さんがツッコミ体質だったよ。
すると、真希さんは、ヤレヤレって感じで、
「ほんと、自衛官って奴や頭が硬いな、泥舟に乗るのは私だべ」
何言ってるのかわからない。白馬さんもぽかんとしていた。
「いいかい、私がこの泥舟に乗るべ、過ちポカすのは一人で十分だべ、お前たちは、間違わず、その隣の木の船に乗って、二人で未来と言う向こう岸まで辿りつくんだべ、振り向くな、いつまでもその背を見ててやるべ、沈んで行く私を振り向くなよ、前だけ見て行くがいいって意味だべ」
なるほど自己犠牲な訳だ。え? そう言う話だったっけ?
「いいかい、みんな、このパーティーのリーダー、真希ちゃんを信じるんだべ」
なんだろう、一部で大盛り上がりだ。
でも、僕のパーティーだよね、ここ。
だから、僕な筈なんだけど、なあ、リーダー。
とは思いつつも、真希さんに逆らえる筈もないんで、黙って付いてく僕だったよ。