第6話【特攻槍使い角田涼子】
こういう時って、角田さんとかなら察して、普通に僕の疑問に答えてくれたんだけど、白馬さんって、全くそういう事をしてくれないんだよね。
「前も言ったと思うが、俺にはお前の意識を読むなんて芸当はできないからな」
今、白馬さん、自衛隊をクビになって、何でか僕の仲間になってる感じ。
まあ、そうだよね、あれだけの事をしでかしてしまったのだから、僕がいなかったら彼が魔王になっていたって事だからね、もちろんそれは、僕が魔王になる事で事前に回避できたのだから、自衛隊も、彼を免職にする必要もなかったのになあ、って思うのだけれど、一度、懲戒処分を受けた公務員なんて、一生窓際なんで、なら、そのやらかしてしまった組織見切って、民間にって話で、天下りって奴かもしれない。
というか、いきなり三爪さんが連れて来て、
「隊長をお願いします」
って置いて行った。
三爪さん、深々と頭を下げて、「え? どういう事?」って混乱する僕の気持ちには配慮せずに、
「隊長も、しっかりと魔王様に仕えるんですよ」って言い残して、捨てられた子犬みたいに事態の把握できない白馬さんと僕が、じゃあ、まあ、お互いに、よろしくって、意味で、「ああ」ってどちらでもなくどちらでもある適当な挨拶して、現在に至っている。
その時に、春夏姉にアキシオンのフランベルジュ型を奪われたって話は聞いていた。
そんな白馬さんに、葉山が、「確か、あの時、白馬さんって、『ウワーハッハー、これで真壁の技術は奪ってやった!!!』とか言ってなかった?」
って言われると、
「いや、そうなんだか、瞬時に手に入れた力は瞬時に失われる物の様だ、そしてあの感覚が残っている分、余計にタチが悪くてな、前よりも弱くなった」
という話らしい。
ああ、そうか、じゃあ僕の所為だね。じゃあ、白馬さんの面倒をみるのも仕方なしだよ。
何にしても人が増えて良かったとは思ってるんだ。
今は、もう角田さんも、桃井君もいないからさ。二人とも、自分の仕事をするって、角田さんは以前通りに三柱神の一柱となって、ダンジョンウォーカーの相手をする日々らしい。
桃井君も、僕がぶち壊した組織の改変と改革に本格的に着手すると言う話で、今は深階層の奥深くにいるんだ。
もちろん、もう会えないってことはないと思うよ。
でも、やっぱり、今までの事を考えると、側にいてくれないって事をやっぱり寂しいって感んじてしまうんだ。
そんな時、僕の隣の彼女が声をかけてきた。
「狂王! じゃなかった、魔王! あ、これも人前ではダメですね、じゃあ、殿! これもダメでしたね、ならお屋形様! って私秋の木葉じゃないですから、何とお呼びしたらよろしいでしょう?」
僕が呼ばれている実感はあるから、その辺については後で話し合おうね、要件もわかった。
で、そんなことを思い計っていると、再び、僕の隣の彼女、
「前にシェイド、6体です」
今回からは浅階層の通路でも、こちらが逃走可能って条件で、敵は出るようにしたんだよね。しかも、今までいなかったタイプのモンスターをかなり追加してる。
だからエンカウント率も高い。
シェイドってのは、そのまま影のモンスター、中空に挿す濃い影だから、実際は物理的に敵が現れるのと何ら変わりもない。
一応は人の形を模してるけど、足の方はあやふやな処理にして、手も影なので上限なく伸びるようにはしなくて、その見た目の間合いを保ってもらってる。
シェイドの攻撃は、痛みダメージも無くて、物理にも干渉しない。でも、ちょっとくらっとする。一度でも攻撃を食らうと立ちくらみの軽い奴が来る。と言っても体の方はノーダメージだから。ただ攻撃を受けた本人は攻撃が入った事を確認できるくらい程度の精神衝撃はもらうんだ。わかるようにね。
動くは、ゴブリンよりも遅くて、紙ゴーレムより早い程度だよ。
だから、ちょっと対峙しようって度胸が出ると、割と簡単に倒せる相手なんだけど、流石にこの数だと、数のプレッシャーはあるかなあ、ちょっと調整してもらえるようにしよう。って考えてると、
「魔法スキルで散らしますか?」
って言われるけど、
「出るよ、秋さん!」
って僕らの背後から、先頭の僕らを飛び越えて、角田さんが出た。