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第4話【春夏姉の恐るべき攻撃と破壊力】

 かつて、葉山と茉薙が同じ体で、しかも人としての命が危うかった所から、ダンジョンの力を余すことなく使って、今の状態まで改善させてもらってるから、あの時、ダンジョンの意識としての春夏さんの意思無しには今の葉山はありえないって事を彼女自身、よくわかってる。


 だから、僕だって、春夏さんと葉山が戦うって形にはしたくはないんだよ。


 「だって……」


 葉山は呟くんだけど、そのあとの言葉が続かない。


 本当に、葉山の献身って、こういう時って凄いんだよね、自分の気持ちなんて放っておいて、自分が傷ついても平気で前に出るんだ。


 蒼さんにしたって、そうだよね。幾度かチャンスを不意にして、基本防戦苦手な人なのに後手に回ってるし、薫子さんに関しては最初から、防戦一手だよ、守る気満々な感じだよ。


 ほんと、僕がしっかりしないと、って思ってしまう。


 でも、みんなが思うほど、僕の心は揺らいではいないんだよ。


 確かに真剣に春夏さんとやり合うのは抵抗がある、というかぶっちゃけ嫌だ。


 でも、現実、向き合ってみると大丈夫なんだよ、思ったほどキツくもないし、案外抵抗もないんだ。


 だって、僕の春夏さんが、今の春夏姉なワケないじゃん。


 本当に、全然違うから、


 もう別人って言ってもいい、いや実際には別人なんだけどね。


 こんなに乱暴者でもないし、しかもガサツでもないから。


 本物の春夏さんはもっと清楚で可憐だから。


 僕に向かって乱暴な言い方とか、ガハハ、って笑わないし、あんなに大股で歩かないし、表情もバンデット的な感じなんて微塵もないから。


 つまり、別人だから、全く戦いに関して抵抗もないんだよ。


 それに、当時は毎日こんな感じだったしね。


 だから、春夏さんは春夏さん、春夏姉は春夏姉なんだよ。


 僕はアキシオンで受けて、ちょっと春夏姉を押して。だから、葉山や蒼さんたちとは距離を取ろうと思ったんだよね、その時は、特に他意も無く、なんと無く彼女達を戦列に加えたくなかったのかもしれない。本当になんと無くだから、その辺の意識はハッキリとしてたわけじゃないけど、そんな風に動いたんだ。


 そうしたら、


 「なんだよ、秋、あたしを遠ざけ様ってっか?」


 なんて言われて、ああ!って気がついて、


 「いや、別にそんなつもりはないけど」


 自分の無意識な行いに、言い訳みたいな事を言ってしまうと、


 「いつの間にか可愛い女子を(はべ)らせやがってよ」


 とか言われれる。怒ってるなあ、春夏姉、で言われている葉山はちゃんとそんな言葉を拾っているみたいで、どこか誇らしげだ。


 でも、僕的には、何言ってんだ? って思いながらも鍔迫り合いみたいな形が続いていて、そのまま、近い春夏姉の顔が、


 「お前、あたしのお嫁さんになるって言ってたじゃんかよ」


 なんて言われてしまう。


 ちょっと、何言ってるの?


 すると、春夏姉は、


 「証拠だって、とってあるんだからな」


 とか言い出す。


 「いや、ちょっと何言ってるのかわからない」


 って言うと、


 「仕方ねえな、じゃあ、見ろ」


 って言って、いきなりガラゲー出してきて、そこに保存してあった写真を画面に出す。


 「え?」


 って思わず声を出してしまったけど、これって、多分、七五三か何かの写真かな? 千歳飴持ってるし、着物姿だし、中島公園見えるから、ここ、多分、護国神社だよね?


 思わず見入ってしまうけど、


 「お? こっちじゃねえや……」


 と行って切り替える画面には、同じく当時の僕が、どう言う訳か、なんでこんな事しているのか、と言うかされているのか、ウエディングドレスを着ている、きっと3歳の僕の姿が映っていた。


 「な?」


 いや、「な、」って言われても。


 で、そのガラゲーに表示されてる僕のそんな恥ずかしい過去をみんなに晒して、


 「ほら、これ見ろ、こいつはあたしんだからな!」


 って、後方に下がって待機していつ葉山にもそんな宣言をする。


 その瞬間だった。さっきの戦速など、遥かに凌駕して、葉山と蒼さんが迫る。


 で、そのまま僕を押し分けて、春夏姉さんのかざすと言うか、見せる僕のそんな恥ずかしい写真をガン見してる。


 「何これ、いいな!、いいな!」


 「欲しいでござる、欲しいでござる、欲しいでござる、欲しいでござる」


 二人とも凄いテンションだ。


 「やるわけ、ねーだろう! これはあたしんだ、だから秋もあたしんだからな!」


 春夏姉に対して違う意味で迫る、葉山と蒼さん。気がついたら僕、その場所からは完全に爪弾きにされていいたよ。


 そんな僕に、


 「あの写真、以前私も真希さんに見せてもらっている、今日花様、明日葉様、真希さんとの共有ホルダに入っているな、ちなみに検閲は自由だったぞ」


 と、さらに心配を煽る様な新情報を教えてくれる薫子さんだった。


 夕暮れ時の校内で、『僕は親戚の姉ちゃん』による、善意も悪意もない攻撃の前にただ戦慄するばかりだったよ。


 きっと、これは、すべての始まりに過ぎないって、そう思ったんだ。

 

 

 


 

 

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