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第2話【来訪者は突然に】

 だから、僕は、


 「つまり、アキシオンさんは僕の剣って事で、僕の拡張した能力の一つって事なんだよ、だから、あの場合は外部の記憶能力に頼っているって事で、結局はカンニングにならなかったんじゃないかな?」


 って調子に乗って言ってしまったら、


 「そんな凄い剣を使う人間がバカだったら、どうにもならないじゃない、もっと賢くならないと、上手に使えないよ」


 って言われた。


 凄い正論で、まったく反論の余地も無く、ぐうの音も出ない。


 でも、テストって苦手なんだよね。


 同じ問題が出ても、テストってだけで、どこかアワアワしてしまって、解けないんだよなあ、問題。


 薫子さんは、テスト慣れしてないだけだから、巷での塾なんかの模試とか積極的に受けて見れば良い、って言うけど、無料かもしれないけど何回も受けなくても良いテストを何度も受けるって、もう地獄じゃん。


 それですでに罰ゲームじゃん。


 そんな話をしている時点で、


 「お前はかなり恵まれた環境にあるんだぞ」


 とか先生に言われて、そうだね、それはわかる、勉強を教えてくれる同級生がいるしね、しかもかなり積極的に教えてくる。もう強制って言っても良いくらいだよ。


 「いや、今回は私はあまり役には立てなかった様だ、すまない」


 って薫子さんが謝罪してくるんだけど、あれ? いつの間に薫子さん来た?


 当たり前の様に僕の隣に座ってるし、だいたいクラス違うじゃん。


 「今回、国語が悪すぎるよね」


 「すまん、葉山静流、ここ私だな、教えたの……」


 「チェックしなかった私も悪いから、真壁って理解したフリとか上手いから、次はもう少し用心しよう」


 「先生もチャート作っておくから、参考にしてくれ」


 「ありがとございます、先生」


 「ただ、今の時点では壊滅的だからな、苦労はすると思うが……」


 「大丈夫です、ね、真壁もまだ頑張れるよね?」


 「他人事の様な顔をするなよ、お前の話なんだぞ、真壁秋!」


 「ほら、真壁も先生にお礼言って、本当にありがとうございます」


 「次は、絶対にボーダーラインを突破させますから、よろしくお願いします」


 「わかった、私も会議でもう少しは頑張れるから、君たちは結果を出してくれ」


 「追試までには仕上げてきます、頑張るよ真壁」


 「そうか、じゃあ、そこの天井に張り付いてる子も頼むぞ、この後も、真壁の進級に関しての学年会議があるから、頼んだぞ」 


 ああ、蒼さんもいたんだね。


 ちなみに僕、一言も喋ってないよ。


 なんか、僕の事だけど、口を挟めなくて、ともかく真剣に聞いてるって感じでいる。


 そして、先生は職員室に帰って行った。


 ひとまず、危機は回避された。と言うか先延ばしになった。


 葉山と薫子さんは先生から渡された、問題集をチェックしている。


 二人ともすごく真剣。


 どう説明して、どう理解させようか、とか話をしている。


 なんか、ごめんね、僕、あんまり頭良くないから。苦労かけてるなあ、って正直思うんだよね。


 最近、葉山とか薫子さんに任せて、母さんは僕に対して煩いこと言わなくなったと言うより、ほぼノータッチになってる。


 以前は成績の事とか母さんに言われた


 指導されてる僕としては、僕なんかよりもっと自分の事をすれば良いのに、とは思うけど、本当に真摯に接して来るから、僕も頑張ろうって思うんだよ。


 だから、明日から頑張るから、今日はダンジョンに行きたいんだけどなあ。


 でも言えないよね。


 絶対に言える雰囲気じゃないから、二人に連れて家路に着くよ。


 あれ? 蒼さん?


 さっきまで教室の天井に張り付いていた蒼さんが今もういない。


 そして、外からは、数人の悲鳴と、剣の弾き合う音が響いて来る。


 裏庭の方だ、しかもあの音、秋鴉の独特の響きが校舎に反射していてる。


 おいおい、学校だよ、って積極的に蒼さんが誰かを襲っている筈もないから、僕の危険を察した彼女が接触後、戦いになったと言うのが正しい味方だと思う。


 「何?」


 葉山が訊ねて来る。


 わからないから、ともかく外にでる。


 特に広くもない校舎と校舎の間、助かるのは、職員室から一番遠いところ、ちょうど蒼さんが吹き飛ばされてた。


 大丈夫、ダメージは無い。


 蒼さんも僕の姿を見て次の攻撃は控えて、下がる。


 そんな蒼さんに安心した僕に、大剣、ごく最近見た、黒い刀身のフランベルジュを肩に乗せて、彼女は言うんだよ、嬉しそうに、楽しそうに、僕を見つけて声をかけてるんだ。


 「よお、秋、なかなか来ないからさ、こっちから来てやったぜ」


 放課後の裏庭、夕焼けに染まる校舎にの長い影。


 オレンジ色と黒のコントラストの中に、佇むよく知ってる人物は、僕の知ってる顔で、僕の知ってる声で、嬉しそうに声をかけてきた。


 「春夏姉」


 かつてはマテリアルソード大剣型と呼ばれていた、今は、アキシオン大剣を持った春夏さんが、僕を見つめて微笑んでいた。


 そして、この再開は喜び合うと言うには、あまりにも身勝手な心意と因縁に満ちていたんだ。

 

 

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