第84話【世界に開示される多紫町】
本当に全部開示されてたよ、『鬼の住む町』とか、『現代に残る忍者の里』とか、その後、次々と放送されてた。多紫町が過去の歴史にどのように触れて来たのか?とか、しばらくは歴史学者さん達が活躍する、そんな特番も組まれてた。
「私は、私の為に、誰かを犠牲にするなんてできない」
と二肩さんは言った。
「会長の将来を、私の為に使うなんて、そんな事できない」
と、学生連盟の会長さんの事なんだと思うけど、そんな風に言うんだ。
「私は大切なんですよ、わかりますか蒼様、あなただって、お屋形様をあんな町一つに閉じ込めたくはないでしょう?」
と言うんだよ。
そっか、それが彼女の目的だったんだ。
「すまない、私も気がついてはいたんだ、だが、とめる事はできなかった」
と会長さんも頭を下げる。そして、僕に向かって、
「私は……、魔王となった真壁くん、君に全てを委ねるよ、ただ、彼女は見逃してやってほしい、全部、私の為にしてくれたことなんだ、つまり私がいなかったらこう言うことにはなってないと言うことだ、だから私が原因だろ? その代わり私は君の為に何でもする、どんなひどい仕打ちにも耐えてみせる、死ねを言うなら死ぬよ」
僕、初めて、自分の命はどうでもいいから、っていうガチの懇願を見たよ。と言うか僕に対してされてるんだよなあ、これ。
凄い迫力だね、本気で命を賭してる感じなんだ、命を賭されても困るんだけど、そんな気全然無いから、対応できない僕がいる。
まあ、多紫町も無事だったんだからいいじゃん、って思うんだけどなあ、蒼さんが凄い顔してるんだよ、無理もないけどね、自分の故郷がさ、消されてしまう、そんな大事件だったわけだしね。
僕としても、なんで北海道にまで、人工衛星落とそうとした? って気持ちはある。
少なくとも、今は無くなったけどこれ全部事実なわけだし、反省はしているみたいだし、このまま見逃すってのもなあ、とは思うんだ。だって多紫町の方はみんな逃したみた
いだけど、北海道の方は死人が出るような、街が壊滅してしまう事態だった訳だし。
きっとこのことって、刑事事件になる事はないだろうけど、この後、彼らは、仲間によって調べられて、って事になると思うんだよ、で、誰がどうしてこう言う形になってしまったのかって言う全容解明にはまた長い時間がかかって行くんだ。
「解決しました」
うーん、2分も経ってないねえ……。
「問題は全て解決です、オーナー」
僕はアキシオンさんの言葉に耳を疑った。だって、解決って、今さっきの話だよ。
思わず、
「どうやったの?」
この言葉には蒼さんが反応しようとしてたから、「あ、ごめん、違うんだ、ちょっと待っててね」って言ってから、もう一回、心の中で、もう一度訪ねようとすると、
「今回の彼女達の思いを計画を利用して、国体に打撃を与えようとする組織、人物、国家を洗い出しました、特に多紫町は、防衛省に影響力を持つ、この国の安全保障に関する母体組織のようなもので、その根幹が狙われ、根絶を目的とされていたようです」
え? そんな話だったの?
「中には友好国の組織、個人も特定できました」
思ったより裾野の広い話でびっくりした。
なんだ、そこまで行くとダンジョンとか多紫町って言うより、この国をどうにかしたい人達の問題じゃん。別に二肩さんとかもう関係ない気がしてきたよ。
「表向きの大義は必要ですから、丁度良かったんでしょう」
アキシオンさんはそう言うんだ。つまり、二肩さんの想いとかは利用されたって事で、彼女たちがどう行動しようと、なんらかの形で表向きを作って、この結果と言う事なんだな。
じゃあ、どうするの? そう言う組織とか、悪い人とか一人一人潰して行くの?
「ですから、すでに終了しています」
アキシオンさんが言うんだ。
「何したの?」
思わず口に出してしまって、自分の焦りにびっくりする僕だよ。
「説得しました」
いやあ、仮にも一国をどうにかしてしまおうとするような人達だよ、衛星を落として、大量破壊して死人を何人も出しても良いて計画するような人達だよ、それを説得って……。
「皆さん、話のわかる人たちばかりでしたよ」
そっかなあ、嘘っぽ感じが半端ない。
具体的にどうやったのか、興味は尽きないけど、
「皆さん、命は一つだと言うことをよくご理解いただきました」
とか言うから、なんとなく想像はつくので、聞くのはやめておいた。