第83話【衛星兵器すら切り裂くアキシオン!】
焦った僕の憤り。
あ、アキシオンさん喜んでる、僕の手の中で剣が震えてるもの。ひとしきりの喜びを感じたようで、
「どのように処置しましょう? 落ちてる方は元の軌道上に戻しますか?」
「そんな危ないの二つとも捨ててしまっていいよ」
その瞬間、僕の目に二つ同時に衛星が映る。同時にこっちの視界もあるから気持ち悪い。
「映像として記録しました、オーナーよろしくお願いします」
ええ? どうやって、って思う先から、二つの異なる人工衛星が二画面でどんどん近くなる、なんだこの視界? じゃあ、できるのか? いや、そんなの考えてる場合じゃないよ、やっちゃえ!
届くから、僕の剣がそこに、同時に到達するから、二回、中空で剣を振るう。実際は体使ってない、あくまでそんなイメージが出力される。
あ、手応えあった。というか、切ったところから、まるでめくれるように裏返って、やがて二つとも点になって消えて行った。
「ふう……」
ため息出ちゃった。本当にこのアキシオンさん疲れるよ。まあ、北海道と多紫町を同時に救えた事は感謝だけどさ、なんかアキシオンさんとの会話がしっくりこないときあるよなあ。
「お屋形様……」
あ、まだ蒼さんに言ってなかった、って思って、
「もう大丈夫だよ、両方とも助かったよ」
と伝える。
キョトンとした顔して僕を見つめる蒼さんの顔。
「落ちて来る、人工衛星とか消しとばしたから、平気、町には何も起こらないよ」
って、僕のビジョンの中に現在放映されてる映像が今もまだ写ってるから、って思ってると、近くにいた三爪さんがスマホを見て、
「大丈夫です、なんともないみたいです」
と言って、リアルタイムに写る映像を見せてた。
その三爪さんも半信半疑の顔に、この件を計画した実行犯であろう二肩さんの驚愕に彩られた顔が僕の方を向いて、
「一体何をしたの!」
って聞いて来るから、その件に答える前に、僕は言う。
「いや、町とか市とか、そんな物を対象に攻撃したらダメでしょ」
と言った。二肩さん、ビクって体を震わせてた。
そんなつもりはなかったけど、僕は真剣に、真面目に怒ってたみたい。
なんで、そんなことに気がついたかって言うと、なんか足の下からスッと優しい何かが来たんだよ。まるで、春夏さんが「大丈夫だよ秋くん」って囁くような、そんな心の形になる。ああ、そうだね、もう平気なんだから怒ることもなかったよ。
でもさ、彼女、二肩さんが多紫町になんらかの思いとか恨みとかあるってのは理解できるんだよ、わからないけど、彼女にはそこに関わり合いがあるからさ、でもなんでダンジョンにまでその攻撃の手を下したのかわからない。
「オーナー、現在まで解析できた事実を報告します」
お、新事実かな?
「今回の、サテライトフォールは、二肩千草の計画ではなく、彼女に賛同する他の不特定多紫町出身の者達からの情報を元に実行されたようです」
え?
「じゃあ、彼女以外にも協力者がいるって事?」
って思わず声に出してしまったら、
「違う!」
って叫び僕の方へ駆け寄って来る二肩さん、すごい迫力で気迫だよ。今まで蒼さんとやりあってた、体の傷なんて物ともせずに、必死だよ。
その態度、もう、今、僕が口走ってしまった事が事実だって、言ってるようなもんじゃん。
「今回の計画は、私一人がやった事です、共犯者などいません、本当です」
「偽りです、彼女はその計画に乗ったにすぎません」
どう言う事?
「多紫町の一部は、町の解放改革を望んでいました、今回の事件はその者達の計画で
す、彼女達はここでの情報収拾と操作を行っていたようですが、主たる物ではありません、その願いは強かったようですが、うまく利用されていたようです」
この時点で、僕は感覚として、アキシオンさんい聞いてるんだけど、町の、多紫町のみんなは無事なんだって、例え、あの衛星が落ちたにしても、安全な場所まで非難は完了してるんだってさ、なんだ、じゃあ焦んなくても良かった。いや、でも町がなくなるのはまずいか……、じゃあ良かったんだよな?
でも、この事件をきっかけに、結局多紫町の存在は世間に知らされる事になってしまう。
本来なら、衛星軌道上から映るはずもない、その姿が、お茶の間のテレビにくっきりはっきり写し出されてしまって、しかも、ご丁寧に『隠された、町』とか言うテロップまでついて放映されいた。
マスコミにも、二肩さん達の計画に加担する人がいたって事なんだな。
つまり、もう多紫町は、隠れた町でもなく、秘密の町でもなく、普通の町になってしまったんだよ。だから、二肩さんの解放改革路線は完全に成功していたと言う事だ。