第82話【北海道、多紫町、同時攻撃】
一体何が起こっているんだろう?
ひたすら笑い続ける二肩千草さん。いや、泣いてるのか?
彼女は呟くようにいう。
「これで私達の呪いは解ける、鬼の呪い、人の呪いが……!」
とか言ってる。
そしてその内容は、意外にもアキシオンさんが教えてくれた。
「オーナーが、多紫町に向かって山間部に、今、戦略核武装衛星が落ちて行ってます」
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どういう事?
もうすでに今回の事といい、疑問しかない僕に対して、アキシオンさんがいうには、今回の外部勢力、つまり、海外からの派兵に対して、その中身は2種類に分かれていたらしんだ。
一つは、さっきまで僕らの前で対峙していた多国籍軍のように、ダンジョンの利権を求める人達、つまりダンジョンを手に入れようとした人達だね。
でもって、もう一つが、このダンジョンを含めて、魔物、つまり異世界からの影響を『汚染』と考えて、徹底的に排除しようとする人達に分かれるんだって。
で、手に入れようとした人達が諦めたので、次は排除しようとする人達のターンだそうだ。
で、なんで、多紫町なんだろう? って思って考えると、そうだ、あの街は、初代微水様の町なんだ、つまり青鬼が作った町、だからそう行った勢力は汚染されていると考えているという事だ。
じゃあこっちもじゃん。
「そうですね、今、トールハンマーの安全装置解除が確認できました、軌道計算が終了次第、解放、つまり発射される予定です」
何を?
「デブリの再利用のようですね、つまり衛星から兵器として圧縮処理された岩盤と屑鉄がこの地に落とされます、大気圏突入による損出は、大きさでカバーしているようです、落下速度もそれで落としてますから、理想的なリサイクル兵器ですね」
とか言ってる。
そして付け加えて、
「爆心地がここですと、その規模はほぼ札幌の街を飲み込み、たとえ爆発を逃れてもその振動は、マグネチュード18、札幌中心部はほぼ壊滅状態になると思われます」
いや、もうそれ消滅って言わない?
そして、多紫町が、公共の電波に乗って、お茶の間のテレビに映った。
何百年もの秘密の町がこの瞬間、初めて公開されてしまった。
僕も、アキシオンさんが見せてくれる映像で捉えたけど、これって、隠していた町が今、世界中に向かって発信されている事になる。
二肩さんはものすごい大きな声で笑う。
その横では、例の札幌の学生組合の会長さんが心配そうにしてる。
「蒼様、もうこれで、私たちは鬼に縛られる運命はおしまいです、もうこれで自由ですよ」
って、本当に気が触れたみたいに笑うんだ。
「二肩! 貴様!」
って、蒼さんもそうなんだけど、他にもここには多紫町出身者とかいるんから、その人たち、特に怒り狂ってるのは他の秋の木葉の人達、ものすごい形相で二肩さんい詰め寄ってた。
「だって、もううんざりでしょ? みんな北海道に来て、この自由な土地で、好きな男の子できて、そこにまた、閉じ込めるの? そんな人生真っ平でしょ?」
と二肩さんはいうんだ。
そして、
「でも私優しいから、ちゃんとあの町の最後を記録してもらうために、条約を無視して、衛星軌道上から、撮影してもらってるの、だって、私の生まれた町だから、ちゃんとお別れしないといけないから」
その叫びは、きっとそこにいる秋の木葉、いや多紫町の出身者全員の胸に響いたと思う。確かにその通りなんだ。
でも、だからと言ってこのやり方はない。
「なんとかなりそう?」
僕は尋ねる。
「はい、どちらを優先しますか?」
アキシオンさんの言葉。
選ばないといけないのかよ……。
その時、蒼さんが僕の目を見る。さっきまでの泣き顔を拭い去って、真剣に僕の目を貫くように見るんだ。
そして、
「北海道ダンジョンをご優先ください」
って言った。
強い瞳だね、蒼さん。
選択肢は2つ。
「いえ、4つです」
とアキシオンさんがいうから、何ができるの? って聞いてみたら。
① 両方とも諦める。
② 多紫町だけを助ける。
③ 北海道だけを助ける。
④ 両方とも助ける。
という選択肢らしい。
……………………………… ……………………………… ………………………………………………………………………………………………………………………………ちょっと待って、今なんて?
「あと、45秒で、双方とも地表に影響が出始めますが、もう一度選択肢を繰り返しますか?」
「いや、二つとも助けられるなら、もうその選択肢以外ないじゃん! ふざけてんの? すぐに処理して!」
思わず怒鳴ってしまう僕だよ。