第81話【終戦、そして魔王誕生】
そして、僕だけが、この大通公園の真ん中に残される格好になる。
背中の方には噴水と、テレビ塔。
まさに札幌でのスナップ写真みたいな光景だね。
「では、オーナー、宣言しましょう」
と、アキシオンさんが言うから、
「何? また宣戦布告なの?」
「いえ、既に終戦の条約は取り付けてあります、各国と、複合企業体、ある組織の人物、すべて抑えましたので、ここはもう問題なく停戦です、平和維持軍も撤収の命令が下りました、間も無く、ここに他国の軍はいなくなります」
ほんと、アキシオンさんマジ有能。
僕のアシストしながら同時処理させてたんだ。
本当に軍が引き始めてた。そして各国の報道カメラが、一斉にこっち来る。
凄いシャッターの音。
そして、アキシオンさんは僕に言う。
「さあ、オーナー、このダンジョンに関するあなたの宣言をして下さい」
と言われる。
僕の声で、僕の気持ちで、僕の本音としてここで発表しろって事?
どうやらここは手伝ってくれないらしい。まあ、そうだよね、この為の手伝いをしてくれたんだから、ここからは僕の心境で、僕の目的を果たす時だ。
だから、言う。
僕は、この世界各国につながって、きっと世界の人が見ているであろうカメラを見て言う。
「このダンジョンは僕のだからね、誰にもダンジョンは邪魔させないよ、文句があるなら、最下層まで来てよ、いつでも相手するから」
って言った。
言ってて、あれ? ってなった。
いや、いいんだ言っていることは言いた言いたかった事だったし、目的だから、僕のだって言えたから、それはいんだ。
でも、これって……。
事実上のダンジョンにおける最下層で待つ的な……
魔王宣言じゃない?
ああ、そうか、僕、魔王になりたかったんだな、って、ダンジョンを守るってことにおいて、そう言う立場になるのかっって納得するものの、なんかおかしいなあ、って思う僕もいて、そんな僕に、
「これでよかったんですよね?」
って尋ねて来るアキシオンさんがいて、
「いや、ちょっと待って、今話しかけないで」
って言ってから、今回のこの事件解決の功労者になんて事言ってしまったんだって、すぐに後悔して、「ごめん」って謝ろうとするんだけど、
「今のいいです、焦りから来る苛立ちがグッと来ました」
とか言って喜んでるからいいのか。
じゃなくて、これって僕、魔王になっちゃったって事?
そんな僕に、突然、悲痛な叫び声が響く。
「魔王様!!!」
蒼さんだった。いや、呼び方の対応めっちゃ早くない? もう既にだよ。
あ、でもものすごく真剣な顔してる、どうしたんだろう?
蒼さんはこっちに向かって来て、再び叫ぶんだ。
「町が! 多紫町が!」
ここまで取り乱した蒼さんって見たことないからさ、びっくりして、そして、その後ろ、ダンジョンの4丁目ゲートの方では、ボロボロになった、二肩さんだっけ、その人の笑い声が響いてる。
「魔王様、町が、私の町が、再び二肩の裏切りによって消失します!」
スマホ握りしめて、そう言って、ボロボロ泣き出す蒼さん。
僕は、このダンジョン派兵の件と同時に動かされていたもう一つの計画を、このあと知ることになる。
同時に、あの町での出来事を思い出していた。
一体何が起きたんだろう?
震える蒼さんの肩を抱いて、僕自身も焦らないように、パニクらないようにするのに必死だったよ。