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第79話【同時アフレコ神演出】

 僕喋ってないよ、アキシオンさんが僕の口のそばであたかも僕が言っている様に僕の声で、僕が言いそうな事を言ってる。でも僕その言葉喋れないなあ、何語なんだろ?


 「英語ですよ」


 って答えてくれた、あー……。ちょっと僕には難しいかな。


 「中学生程度で理解できる内容ですが」


 いちいち言わなくていいから、そこは黙ってて、不安になるから、僕英語とか苦手なんじゃないかな、やっぱりダンジョンにかまけて、特に苦手分野はおろそかになってしまってるんじゃないかな、って自覚しちゃうから。


 「今の不安な胸中からの八つ当たり、素晴らしいです、さすが我がオーナです」


 褒められた。


 じゃなくて、なんて言ったのさ?


 「はい、オーナーの声を借りて言ったのは『僕、ダンジョンを手放す気はないけど、でも、だからと言って、誰かを傷つけてしまうつもりはないんだ』と言いました」


 あー、なんかいいそうな言葉だね。僕が。


 そのアキシオンさん、


 「では次の演出に入ります、オーナー、声を出さないで、『パイナップル』と叫んでください」


 とか言われる。


 え? どういう事?


 「いいから、うまくやりますから」


 ん、じゃあ、上等曹長さんから距離をとって、と。


 「パイナップル!」


 全く同時に。「いい加減にしろ!」って声が響いた。しかも何ヶ国語も同時にそう響いた。まるで大気を割る様にい響く声は、一瞬、ここにいる人間や兵器を凍結させたかの様な静寂を見せた。


 そんな事、自分で言うよ、って思うのだけど、アキシオンさん、


 「できますか? 自分の中の感情ではない、この場に一番的確な言葉を感情を込めて発信できますか?」


 とか言われる。え? つまり、ここは演技力を求められていると言う事なのかな?


 「オーナー、人に自分の感情を、意思を伝えるためには言葉が必要です、そして確実に人の心に響かせるためにはテクニックがいります、気持ちは拙い演技や、まして本音ベースの計画性の無い、目的が散ってしまう言葉などでは伝わらないんです」


 そっか、アキシオンさんはそんなところまで考えていたんだね。ごめんね、本当に、いいよ、僕、黙ってるよ。


 「では次です、カメラにシリアルナンバーを振っておいてます、番号の若い順を確認して下さい」


 うん、わかったよ。


 ちらっとみて、確認する。


 「次、海兵隊上級曹長のストレートからの右のフックが来ます、合わせて3番のカメラマンの足元に吹き飛ばされて下さい。


 ブン、ブンって本当に右フック来たよ、一応受けて、不自然さも無く僕は3番のカメラを持っている人の足元に吹き飛ばされるようにした。


 「真駒内」


 アキシオンさんの言葉にはあ?ってなるけど、ああ、またそう唇と動かすんだね。


 すると、「チクショウ!」って言葉が出て、視線は今もこっちに近づいて来る上級曹長に固定って指示があるから、そっちみてる。


 そして、普通に立ち上がるけど、またアキシオンさんが急激に重くなってバランスを崩してしまいそうになる。


 「背後の人にもたれかかって下さい」


 って言われるから、指示通りにもたれかかる。


 「大丈夫?」


 って言われた。なんか僕を支えてくれた人、片言の日本語で、涙を目に溜めて心配してくれてるんだ。だから、思わず、あれ? 僕怪我したかなあって思ってしまうくらいの心配ぶりだよ、アメリカの海兵隊の女性だった。


 本当にグリズリーに襲われる子鹿見るような目だよ。あ、だからアキシオンさんの演出は成功してるのか、すごいなあ、この剣。


 「いい感じです、この放送を見ている人々はもちろん、ここにいる兵士ですらこちらの意識に引き込みました、仕上げに入りましょう」


 とか言われる。


 うん、なんかすごいなアキシオンさん、頼り甲斐が半端ない。もう任せるよ。


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