第96話【出現!浅階層にエルダー級ラミア!!】
シリカさんの、その地図上の操作が現実にダンジョンに及ぶことの効果の凄さに、本当に、僕はぽかんと眺めているしかできないほど驚いてしまっていた。
攻撃系とかゴミって言ってたけど、シリカさん自体の残念な性能とかを度外視しても有り余るくらいのスキルだよ。
「本当に壁が現れた訳ではなくて、意識としての壁が現れて、無意識にその場から離れます、そっちへ行こうと言う選択肢が消されるんですよ」
って今現在起こったことを角田さんが説明してくれた。
真面目に、このスキル、凶悪だ。捜索範囲もほとんど制限が無いに等しいみたいだし、ダンジョンの中、すべてをみれて、操作できるって、確かにギルドの幹部っていうのも納得だよ、っていうかギルドみたいな公の組織が管理しないと大変な事になるよこの能力。本当に、彼女に戦闘能力がない事なんて、どうでもよくなってしまうくらい凄まじい。
次々と区画してゆくシリカさんが、「あウッチ!」って変な声を出して、
「この人たち無理」
って言った。
よく見ると、変なマーク2つが、シリカさんの書いた線を壊して奥に進んでゆく様子が見える。
んーなんか、このマークって…。
上品い言ってソフトクリームの上だけ、悪く言うと、まるでそれはとぐろを巻いた『う○ち』みたいだ。いや、多分、『うん○』の方だ。ちなみに、角田さんは、その『○んち』を見つめて、苦虫を磨り潰した険しい顔になって舌打ちとかしている。このマークの人間を知っているみたいだ。その隣には、悪魔みたいなマークが寄り添うよに行動を共にしてそして2つのマークは消えていった。
多分、階層を移動したんだと思われる。するとシリカさんは、再びノートを取り出して、急いで広げるとそこにあの。『う○ち』マークと悪魔のマークが移動している。すごい、階層が変わっても追えるんだ。
しかし、その追っていた2つのマークは突然、マップ上から消えてしまう。
「鬼さん、こちらね」
多分、鬼ごっこって言いたいんだろうけど、きっとそれをいうなら隠れんぼの方だと思う、ってヤバい、シリカさんの思考が読めるようになって来ている自分にちょっとショックかも。
「クソ野郎が、修羅場に反応して動いてやがる……、地下に向かってるって事か?」
って角田さんが呟くんだけど、そのクソ野郎さんって言葉で、僕はあの地下歩行空間で出会った人を思いだしていた。うん、ちょっと小突かれた後頭部の痛みを思い出す。
そして、シリカさんに角田さんは、
「シリカ、そっちは追わなくていいぞ」
って告げて、広げたノートを一緒に片付け始める。角田さんって、なんのかんの言っても面倒見がいいよね。
「じゃあ、今度こそ出発しますか、いいですね秋さん」
って角田さんが言う。急がないと、早く中階層の入り口までシリカさんを届けないと。
この場合、ダンジョンウォーカーとしての技量も経験も上な角田さんに従うのがいいよね。僕は立ち上がり、
「いつでもいいですよ」と告げる。
でも、最後の一冊のノートをを覗いたままのシリカさんが動かない。
「どうした? シリカ?」
角田さんが声をかけるけど、シリカさんは、まるでボルトで床に固定されたように動かない。
彼女の意識は、そして目はただ一点のみを凝視していたんだ、当然その側にいた僕らはシリカさんが見つめているものを目で追ってしまう。
連続して並べられた中の未だかたずけられない1冊のノート、全く無地の、何も書かれていないマップをジッと見つめている。
いや、時折、何かが見え隠れしているな、よく見ると、そのサイズが今までのマーキングとは比べ物にならない程大きいことがわかる。そして、その形は、まるで蛇のようにのたうっていた。
「これ、なんだ?」
と角田さん。
シリカさんは首を横に降って、そののたうつ蛇のような、大きなマーキングに指つける。すると、まるで電極にでも触れたかのようにシリカさんの指は弾かれてしまう。「あうっち!」って叫んで、そのノートから、体こど離れてしまうシリカさんだ。
「そこ、どこだ?」
「浅階層、地下5階『北海道海中央、別名(鏡界の海)』」
そう言いながら、シリカさんは、違うノートを広げて、そこに動き回る四角いマークを同じように指をつけると、そこに文字が表示される。『paper of golem』という文字が出る。あ、このマーク紙ゴーレムなんだ…。