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第6話【これ、路面電車の内回りだから】

 ふと、とても強い視線を感じる。


 うわ、今、僕、春夏さんにじっと見られてる感じがするよ。


 すごい、真剣に僕の頭の先から爪先まで見られてる感じ。


 最初に見ていたのは僕の方だからお互い様だよなあ、て思うけど、それでも見過ぎだよ春夏さんって言いたくなってしまう。


 で、春夏さんは僕をジッとみて、笑顔で言うんだ。


 「秋くん、お母さんにそっくり」


 って。


 まあ、そうだね、それはよく言われる。それでも、癖っ毛は父親似って言われてるけどね。


 「男の子っぽくなってるね」


 ん?? どう言う意味だろ? 普通に男子だよ、当たり前だよ。


 「大きくなったね」


 僕は覚えてないけど、僕の小さい頃を知る春夏さんなら、そう思えるのだろうけど、それでも、それ以上にと言うか僕よりもずっと育ってる春夏さんに言われると、どうなんだろう?って思ってしまう。あくまで対比からくる問題だけど、観測的には僕は僕を春夏さんは春夏さんを観測できないから、この辺は曖昧だ。


 それでも同じ中学一年生でもこれだけ違うんだって、思ってるから、どこをどう成長したとしても、僕は彼女に比べて育ってるなんて思えないから、ちょっと不可思議な感情が芽生える。


 あ、そっか、これ嫉妬だね。うん、まごう事なく嫉妬。


 僕ももっと大きくなりたかったって、感情。


 いや、なるし、大きく育つし、僕の場合はこれからだから。きっと今年だけで20センチは伸びるよ、きっと、だってダンジョン行くからね。もう今日から通いまくるからね。


 一応、ダンジョンに行く人って、多かれ少なかれ、身長が伸びるらしいんだ。


 中には、2mくらいまで伸びる人だっているから。


 僕も今日から身長伸びるから。いや、伸ばすから!


 揺るぎない決意が芽生える頃、路面電車は札幌の市街地に、駅前通りを走っていた。


 あ、もうちょっとで着くな。


 僕の家から、僕の目指す北海道ダンジョンまで、正確には、今回の目的である『スライムの森』のあるダンジョンの入り口、『大通公園4丁目ゲート』までは、市電、俗に言う路面電車に乗って、20分ほどで到着する。


 これから毎日、北海道ダンジョンに通う僕にとって、この市電、だから路面電車がメインの乗り物になる。


 正確に言うなら、家からダンジョンに通うなら、この路面電車がドンピシャな交通機関になる。


 そう考えると、僕の住む、中央区でも豊平川寄の家って、意外にこの辺て交通の便が悪いかな。と言うか選択肢な無い。


 地下鉄も遠いし、結構歩かないとバスとかも無いから、ここ中央区の足で一番身近なのって、この路面電車になる。


 それでも、家から電停、路面電車の停留所まで近いし、目的地も電停の近くだし、便利は便利。


 そんな路面電車、内回りと外回りがあって、グルグルと札幌の中央区を回っている。


 途中に地下鉄に乗り継ぐ事もできるけど、今日は、普通に内回りに乗って、ススキのから駅前通りを抜けて、『西4丁目駅』で降りると、大通公園4丁目ゲートは、目と鼻の先。


 そのまま駅前通りを信号一つ渡って到着する距離になる。


 割と混んでいる路面電車に揺られる僕たちは、札幌の街を走る頃、その後はなんとなく会話もなく、二人して並んで立っていた。


 電車の揺れるのに合わせて揺れる。


 久しぶりに見るからなのかな? 春夏さんはずっと、街を見つめていて、そして僕はその春夏さんを見ていた。


 もう、それは馬鹿みたいに呆けて見てたんだと思うよ。


 でも、それは、純粋にだから、本能的にだから、ただ僕は春夏さんを見ていたいって、それだけだから。

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