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皇宮警察

 皇宮警察

 ネット監視をしているPCからアラーム音が鳴り、担当者が画面を見ると、SNSや動画サイトで「神隠し」というNGワードでパワーワードが検出され始め、ハッシュタグの数も検索ワードの数も上昇していた。

 西洋中東ユダヤ教共通の、ヤハウェという名前も呼んではならない神や、仏に関する事件は管轄外だが、神道の日本国内の神に関しては皇室や宮内庁の管轄、実働部隊は皇宮警察になる。

 テレビで生中継されていた映像が切られた後でも、大本のネタであるテレビ画像が動画サイトに投稿され、テレビ局から著作権者権限で申請され削除された後でも増殖し、キャプチャされた動画がローカルPC経由でSNSに何度でも上がってしまい、もうネットから永久に消せないゾンビ映像として定着しているのが確認された。

「神隠しにあった子供を神域から連れて帰っただと? 課長、聖遺物らしき子供を何人も連れて帰った馬鹿がいます。ネットの映像ももう消せません」

「何だと?」

 災害後に神の憐みによって神域で保護され、神の遊び相手として指定され刻印を受けた子供達。

 既に命を失っているはずの子供が数名、土石流に流される前の姿で再現され神域で数週間遊び、この世のものでは無い食べ物を食べて帰れなくなった後、何処かの馬鹿でマヌケなボランティアの願いが通ってしまい、今までの善行の代償として神社内で奇跡が起こり愚かに過ぎる願いが叶って、神の災厄を起こす原因となる子供が何人も現世に戻されてしまった。

「直ちに出動っ、装備を車両で運搬し、残りのメンバーは複数の経路を使って現地入り、子供や発見者の邪魔をして、神罰を起こそうとする人物の活動を止めろっ!」

 国を亡ぼすレベルの災厄を予想した皇宮警察はすぐに西日本に出動した。


 皇宮警察が活動を開始しても時すでに遅く、発見者の老人は事情聴取の為に「任意」で同行させられ、一通りの事情聴取の後は、数日関継続する拷問の始まりを知らされていた。

「出発前に神社でお願いしたのはこの通りです」

「そうですか」

 任意聴取に応じて経緯を話し終わり、神隠しに遭ったと思われる少年少女を返して欲しいと願った一連の行動を公文書に残し、現地では神域と思われる異世界から少年少女を現世に連れ戻した内容も伝えた。

 それまで穏やかな表情で記述して、調書をしまった担当官は、語り口調を変えて聞き始めた。

「何馬鹿な事ホザいてんだよっ、あんたが子供達誘拐して身代金要求したんだろ? 仲間は? 関東から指示出してたんだよなあ? こっちで動いてた連中の名前言えや」

 この時点で老人のアリバイは成立してしまい、関東から出てもおらず、ボランティア受付以外に西日本に電話連絡もしていないのは判明していたが、それらはすべて間違いと判断され、拷問が開始される。

「はあ? 何のことで?」

 意味が分からないので聞き返すと、担当者は一瞬で表情を変えて怒り狂った。

「神隠しだと? そんな馬鹿な出来事が起こるはずがないだろうがっ、この妄想野郎の糖質キチ〇イーーーっ!」

 発見者の髪の毛を掴んで、顔から机に叩きつけた担当者。

 発見者の老人は何が起ったのかもわからず、折れた鼻から鼻血を大量に噴き出し、折れた数本の前歯を吐き出しながら椅子から転げ落ちた。

「お前が誘拐犯でっ、身代金を要求したグループだとネタは上がってるんだっ、今すぐ誘拐グループの仲間を吐けっ!」

 刑事数人に無理矢理引き起こされて、まず腹にキツイ膝蹴りを食らい、体が持ち上がる程の衝撃を感じ、下着に糞尿を漏らしてしまったのも感じた。

「げふうっ!」

 胃袋からも吐瀉物が上がって来て、喉が胃酸で焼けるのを感じながら血の混じった昼飯を嘔吐した。

 周囲の刑務官や刑事も当然のような表情で見守り、日常の当たり前の出来事が起ったように涼しげに見ていた。

「子供を何週間も監禁しやがってっ、レイプしたのかっ? いたずら目的かっ? やることやったんだろう? このゴミクズがっ!」

 床に倒れ込んだところで、周囲数人から蹴りまくられ、踏まれて吐瀉物の中に顔を踏みにじられ、何度も何度も蹴られて唾を吐きかけられ、まず人間の尊厳を破壊された。

 発見者の老人は、今何が起っているのか分からなかったが、自分が子供達を誘拐して身代金を要求したグループの一員で、子供をレイプした性犯罪者だと疑われている現実を少しだけ把握した。

 連続して10分以上暴力を加え続けられた所で、マジックミラーの向こうから見ていた拷問王がドアを開けて登場し、老人を庇って親しげに話し掛けた。

「おいおい、いきなりそれじゃあゲロする気にならないだろう。なあ爺さん、俺らも鬼じゃないんだ、男らしくあんたが起こした犯罪の数々、正直に話せばこんなことはしない、さあ、さっさと喋っちまいな」

 椅子に座らされ、ほんの少しの猶予が与えられ、自白までに考える時間が少々残された。

「おい、調書取れ」

 今までの犯罪者はこの辺りで落ちたらしく、自白調書を取る準備が成された。

「な、何ですか? 一体何の話ですか?」

 そこで拷問王の表情が鬼の表情に一変した。

「まだとぼけるつもりかっ? ようし分かったっ、これからお前は糞もションベンもここでしろっ、便所に行ったり飯が食えると思うなよっ、水も飲まさんっ、誘拐犯の仲間を吐くまでは何日でも絶対に眠らせてやらんからなっ!」

 机をドカンと叩いて立ち上がり、老人の側に蹴り上げてひっくり返し、戦い開始のゴングが鳴り響いた。

「そんな……」

「まず顔でも洗ってやれや」

 顔や腹に痣を作るのはここまで、大型の洗面器やバケツが用意され、両手を押さえつけられた状態で顔から汚水に突っ込まれ、ガボガボと溺れて息もできない状態で汚水を飲まされ顔を洗われ、肺の中が水で満たされて窒息寸前で解放された。

「ゴバァッ、ゲボゲボゲボッ、ガハッ!」

「まず腹一杯水を飲ませてやる、水中毒と言ってな、普通の水でも飲み過ぎると中毒で死ぬんだ、知ってたか? ああ?」

 拷問王に笑顔で告げられ、這い蹲って泣いて許しを請う老人。

「そんな、そんな酷いことしてません、できません」

「悪い奴は全員そう言うんだよ、馬鹿野郎」

 その後も何度も何度でも殴られ蹴られ、拷問の宴は続いた。


 病院

 子供達は公民館でお菓子やパンを貰って食べ、健康診断の為に一時病院に連れて行かれて、骨折や内臓への打撲など深刻なダメージが無いか、栄養状態なども調べられた。

「特に骨折や打撲、擦過傷も無いようです」

 レントゲン写真を並べて確認し、CT画像も確認する。触診も済ませ外見だけでなくエコーも調べ、何の異常も見られないのも確認。

 女医や女性の看護師が宛がわれ、子供達の性器にダメージがないかも調べられたが、その心配も無いようだった。

「おかしい、この子は自宅ごと流されて、ご両親も家族も亡くなっているのに無傷だ」

 当時から着替えてもいないのに濡れた跡も泥汚れ一つない被災者。自宅が泥で埋まって掘り返している途中で、祖父と祖母の遺体が出て、両親の遺体が見つかっていない少女も無傷だった。

「採血します、ちょっとチクっとするね?」

「やだ~」

 注射に怯える子供の腕にゴムバンドを巻き、針を突き立てようとしたが刺せなかった。

「あれ?」

 何度刺そうとしても滑り、物理法則を無視した現象が起り始め、看護師も医師も異変に気付き始めた。

「歯を見せてくれるかな?」

 この年頃なら乳歯が抜ける子供も出て、永久歯にも治療紺があるはずだと確認し始めた医師、それでも全員が完全な歯で、治療痕や詰め物など一切無かった。

「あの、歯科医から治療履歴取れるかな?」

「はい」

 もし遺体が見つかった時の為に、捜索本部では未発見の人物の歯科治療履歴を用意していたので、あまり長い時間を掛けずに用意された。

 もちろん大半の子供に歯科治療が行われた実績があり、もし遺体として発見された時でも整合性が取れない子供が多数出た。

 抜歯済みの歯が完全に再生されていて、まるで新規に体を作り直して返されたような子供達を見て「神隠し」の単語を思い出した医師も看護師も恐怖した。


 取調室

 拷問開始から約半日が経過して、老人はグッタリしたまま床に倒れ伏し、身動き一つできない状態になっていた。

「おい、いい加減喋れ、お前の仲間はどいつだ?」

 この地域にいる性犯罪者、逮捕歴や補導歴があり、現在は自由の身で泳がされている連中の写真や履歴がある書類を見せられ、仲間がいれば指差すよう指示されていた。

 老人が持っていたスマートフォンの中の写真も調べられたが児童ポルノ画像は存在せず、以前のボランティア地域や「清掃前、清掃後」的な写真しか出て来なかった。

 あえて言えば直近の写真で、眩い光の中に土塀で藁ぶき屋根の家が数軒写っている奇妙なものがあっただけ。

「知りません」

「まだそんな馬鹿な言い訳が通用するとでも思いこんでるのかっ? 思い知らせてやるっ!」

 バケツの汚水が再び用意され、頭から乱暴に突っ込まれた時、病院の検査結果を持った人物が入室して、拷問王の耳元で囁いた。

「はい、子供達に怪我やレイプの痕跡はないそうです」

「そうかい、糞ったれが」

 ここで歯科治療実績に食い違いがあるとか、血液検査しようにも針が刺さらないなどの恐怖体験は、縦割り行政の壁で完全に阻まれ、何一つとして情報がもたらされなかった。

 もしそんな報告をした日には、逮捕されるか措置入院で精神病院に送り込まれ、市の嘱託医の地位も失って医師免許も剥奪され失職、残りの人生を精神病院の隔離病棟で送る羽目になる。

「おいおい、爺さん、子供達レイプも悪戯もされてないってよ、だったらどうして早く言わないんだっ、余計手間が掛かっただろうがよっ!」

 バケツから引き抜かれて床に投げ出された老人。どれだけ「違う」と言っても「やっていない」と言っても一切信用せず、嘘をついていると決めつけて拷問を続けた人物の言葉とは信じられないが、拷問王は自分の言い分だけを信じ込むサディストで、三度の飯よりいじめと拷問が大好きな発達障害があった。

「おい、これ片付けて詐欺師の一覧持ってこいっ」

 児童レイプや性犯罪者の一覧が返され、次にはこの地域の詐欺師一覧が用意された。

「さあ爺さん、これがお前の仲間の一覧だ、共犯者を指差せ」

 発達障害で立場認識ができない拷問王は、詐欺師の一覧をトランプのように開いて見せて、老人に仲間を教えるよう言い渡した。


 やがて皇宮警察の第一陣が現地に入り、まずは収容されている子供達に面会するために病院に連絡を取っていた。

 発見者の老人が警察で拷問を受けているとは思わず、若い職員は都会の常識で考え、家族に歓待されているか、ボランティア作業にでも戻っている、などと思っていた。

「恐れ入ります、警察の者ですが、そちらに行方不明だった子供達が収容されていると聞きまして、事情をお聞きするのに面会をお願いしたいのですが、ええ、そうです」

 宮内庁だとか皇宮警察などと面倒なことは言わず単に警察と言い、地元警察とは連絡が取れていると言われれば、警視庁だとか鑑識とでも名乗るようにしていた。

「それではこれからお伺いさせて頂きます、面会の方よろしくお願いします、失礼します」

 縦割り行政の管轄を踏み越えて乱入するので、可能な限り丁寧に接して相手を激怒させないよう、頑なな態度を取られないよう注意して電話を切った。

 それでもいつでもどこでも、上に確認相談した瞬間に「俺は聞いてない」「管轄が違う」と喚きだす頭おかしいのが数百人、雁首並べて待っているので、上に報告されないよう丁寧な態度を心掛けた。


 検査機器を積んだ一行は病院に到着し、鞄に収容した機器を担いで入場した。

「失礼します、先ほど電話した警察の「鑑識」の者ですが、子供達の検査をしたいのでお邪魔しました」

 明るく陽気にふるまって、営業スマイルを絶やさず話した。

 職員に案内され、一時検査入院している子供と家族の前に出た。

「すみません、警察の鑑識の者です、少しだけ検査をお願いしたいのですが?」

 まず両親の遺体すら出ていない子供達の大部屋に行き、リトマス試験紙のような薄い赤の紙を取り出した。

「少しペロっと舐めてみてくれるかな?」

「うん」

 聖遺物かどうかの最初の確認だが、これで結果が出なければ精密な機器を使って調査する。

 試験紙を舐めた子供が口から離すと、それはみるみる色が変化し、濃い紫色に色付いた。

「特級遺物……」

 試験紙を受け取った若い皇宮警察の職員は、顔を顰めて泣きそうな声を出して呟いた。

 他の精密機器を使うまでも無く、恐ろしい力を持っている八百万の土地神、もしくは悪鬼羅刹が、土石流の中でボロ雑巾のようになってしまった体を再生し、姿形すら残っていなかったこの子たちの体を神力で全て再現したのが判明した。


 他の部屋も回って、両親がいる子の所でも子供が見つかったのを共に喜んで祝福し、宥めすかしてから検査紙を舐めさせた。

 いつもなら精密機器を準備して、子供に変な機材やアイソトープを当てて調べるのを嫌がられるが、今回は検査紙一枚で全部決着した。

 全員特級遺物で聖遺物、聖なる力なので悪鬼羅刹の仕業では無かったが、神々の行いなので、もし取り扱いを誤れば西日本は破滅する。

 こんな子供を普通に街中を歩かせて別の事故に会わせたり、ましてや学校に行かせて両親を亡くした子にイジメ被害にでも合わせると、神罰が下って小学校全体が消え失せてしまう。

 これがアナザーなら死んでいて、ファイナ〇ディスティネーションなら後を追われるように事故が起こって必ず命を奪われ、手塚治虫作品なら飛行機事故で死んだ全員に命の石が貸し与えられて遺体が起き上って一時帰宅できるが、自宅周辺に回収者が現れて命の石を取り上げられてしまう。

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