表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神の声は聴こえない! ポンコツ巫女の私がこの手でひらく未来は   作者: 松ノ木るな
第十二章 適所

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

108/140

⑩ 15年ぶり、かつ、数刻ぶりの再会

「いたっ!」

「いてっ!」

 元の世に帰ってきた。この瞬間、ふたりは投げ飛ばされた感覚と共に尻もちをついた。そこは昼間のようだが、ナツヒ宅の近くだろうか、林間だ。ふたりの距離は3歩ほど離れている。


 3歩離れた位置のままで、現状に気付くまで、ふたりは無言で高い空を見つめていた。

 そこで先に立ち上がったのがユウナギだ。ナツヒがそれと当時に、「あ―…っと、今……」と話しかけた時。


「あーあ、戻ってきちゃったからもう試せないわね! また次の機会ね!」

と彼女は大声で言うのだった。


「じゃあ! 今日はもう解散!」

 またやたらと声が大きい。

「あ、ああ。……お疲れ」


 ユウナギは大人しく自室に戻るつもりなのか、走って行ってしまった。


 そして林を抜け現在地が分かった頃、「やっぱり自分が口づけても大丈夫なのね。口どうしだったらどうなんだろう? でもそんなの試せるわけな――い!」などと考えながら。


 走っている最中だからか、まだ胸がとくとくしていた。




 ユウナギが屋敷に戻ったら、侍女らがざわめいた。その中から即刻トバリに連絡がいったようだ。

 そこで彼女はようやく気付いた。神隠しにあっていたのだから、きっと何日かたっていて、彼に何も話さずに出てしまったので迷惑を掛けたのだと。


 ナツヒも執務室の方に顔を出したら同じ現象が起きたので、彼は自分から兄に会おうとその辺りで探していた。配下に案内され、それからトバリと共に女王のところへ向かうことになった。



「え!? 二月(ふたつき)!?」

 トバリが話すには、ふたりはなんと、およそ二月の間、姿を消していた。ここで初めて聞かされたナツヒも唖然とする。


「そんな……今までどんなに長く旅先にいても、戻る時は短い間に帰ってこれてたのに」

 きっとそんなものは神の気まぐれなのだ。そういうわけでトバリは神に隠されたのだろうと思ってはいても、ふたり揃って曲者にかどわかされた可能性もなきにしもあらずで、しかもいつ戻ってくるかも分からず困り果てていた。


「ごめんなさい兄様。あそこで神隠しに遭うとは……」

 そこでナツヒはやっと気が回った。二月無断で不在にしてしまったのだ、隊の状況などはどうなっているのかと。彼としては、突然いなくなっても問題なかったと言われてしまえば、それはそれで自身の存在意義に関わるのがまた弱るところ。


「まぁ、実際には問題なかった」

 そんな兄の言葉に、ナツヒは即落ち込んだ。これでも女王の護衛という仕事はしていたのだが、と自己弁護したい。


「しかしそれはある人物が、お前の穴を埋めるよう熟慮して回していたからだ」

「ある人物?」

 トバリは語る。それはその人物が「ふたりは必ず戻ってくる」と申告に来たところから始まったようだ。どうしてそれが言えるのかと彼に問うたら、力のある巫女がそう告げたと答えた。それに命を懸けてもいいとまで言った。なのでトバリはそれを信じ、ふたりの捜索を止めておいたのである。


「力のある巫女?」

「今こいつの他に巫女はいないんじゃ?」

「その者が女王に目通り願いたいと申し出ています。私としては、女王さえ望めば是非とも」

 ユウナギは無言で(うなず)いた。



 そこに促され入室した人物は。


「……!」

 ユウナギとナツヒは目を合わせた。


 ただ今入室してきた、背の高い、年の割に艶々とした肌の持ち主である彼は、女王から幾分離れたその場に(ひざまず)いて言上する。


「お初にお目にかかります。軍事官長付き参謀を務めております、名をサダヨシと申します。あなた様に誠心誠意お仕えいたす所存で参りました。どうぞ特段のお引き立て賜りますよう」


 ユウナギは足早に、彼に歩み寄った。そして両手で彼の手を取り笑顔で、初対面かつ再会の挨拶をした。


「久しぶり!! こちらこそ、どうぞよろしく!!」




 それから何日かの間、ユウナギは先のことを考え込んでいた。軍師となった彼と再会したことで思い出したのだった。サダヨシの顔はあの可愛らしい彼女に似ている、それを言葉にした時、次に彼女の弟の顔が頭を過ぎった。


 あの少年が生まれ故郷を出て、大人になり、そしてユウナギが未来のこの地に飛んだ時、偶然出会った。


――――偶然? 違う。あの人はこの国を乗っ取る。


 そろそろ軍師サダヨシとよく話し合うべきだ、と彼女は前を向く。




 あくる日の夕暮れ時、中央の川辺にて、ユウナギが何をするでもなく座っていた時だ。彼女の元にたまたまシュイがやってくる。


「ユウナギ様」

「シュイ、久しぶり」

「お隣、よろしいですかしら」

 彼女は頷いたユウナギの隣に座った。


「女王が外をうろついて、下々の者に姿を見せてもよいのですか?」

「朝から晩まで籠ってなんかいられないよ……。歴代女王は偉大だわ」

「私もしばらくこちらに住まわせて頂いてますので、現女王がここで暮らす人々からどのように見受けられているか、存じておりますわ」


 ユウナギにしてみたら、失望でもなんでもしてちょうだい、中央を出ないだけでも十分譲歩しているのだし、という気持ちだ。


「女王は、人と結ばれることなく、跡目を生むのですよね?」

 そういう彼女の問いが、ユウナギには唐突に感じられた。


「生む……っていうと語弊があるかな? 見つけられるんだって。女王には特別な目があって」

「下々のうちでも、“中央伝説”として伝わっております。次のその地位に就くお方は、女王だけが見ることのできる、光り輝く木の幹の中に座っていらっしゃって、どちらにおわしても見つけられるのだと」


 ユウナギは、何その伝説!? 聞いたことないし、私、幹の中に座っていたこと一度もない! と、呆気にとられ言葉が出なかった。


「まぁ、特別な目があるから、自分で生む必要はないの。というか生んではいけないから」

「神に仕えるため、愛しいお人と結ばれることのないとは、お気の毒です」


 そこで彼女はおもむろに、懐からあるものを取り出した。


「ユウナギ様にお会いするようなことがあれば、お渡ししようと思っておりました」

「うん?」

 それは白い珠が連なった装飾品だった。ユウナギはそれを目に入れて、すぐには手を出そうとしなかった。


「それは、ナツヒがあなたに」

「これ、あなた様に贈ろうと、ナツヒ様がお作りになったものなのです」


 ユウナギは耳を疑った。

「ナツヒが、作った?」

「細かいことは知りませんが。旅先で、海に潜ってご自身で珠を採り、ご自身で繋げられたようです。職人に教わりながら」


「そうなの??」

 ユウナギには彼が、そういったことが好きだとも得意だとも思えない。


「でもたぶん、もしかしたら、ご自分で渡すのが照れくさくて、私に渡して欲しかったのではないかしら?」

 彼女はそっぽを向いた。目を合わせようともせず、それを渡した。ユウナギが手を出したから。


「綺麗なので私が使おうかと思いましたが。やっぱり、作り主が贈るつもりだった方の元へ、届けられるべきですわよね」


 ユウナギの、わぁきれい、と高らかに言いだしそうな顔を横目にし、彼女は立ち上がった。


「確かにお渡ししましたわ。本当に、ご自分でお渡しすればよいですのにね」

「ありがとう、シュイ」


 ユウナギの満面の笑顔を受け取って、彼女は言った。

「私、生まれ故郷に一度帰ろうと思います。もし私の歌をご所望されることがありましたら、いつでもお呼びくださいませ」

「ええ、また。故郷まで、気を付けて帰ってね」


 ユウナギは彼女を見送った後、その白珠の飾りを首に掛けた。その際もはじける笑顔になったが、これを受け取ったことを、ナツヒにはまだ言わないでおこう、と思ったようだ。





“けっこういい年の男女がほっぺにちゅうするしないでぐだぐだする章”となってしまいましたが、お付き合いくださいましてありがとうございました。

ここまでしばらくユウナギナツヒの関係をブラッシュアップしてきたというのに、次章はナツヒほぼ出てこなくて、もう一人のヒーロー、トバリとの距離を詰めていく?ユウナギ回です。

どうぞ続けてお読みいただけますよう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【商業作品】

『子爵令嬢ですが、おひとりさまの準備してます! ……お見合いですか?まぁ一度だけなら……』

 ピッコマ内掲載ページへのリンクバナーです。↓

ohitorisama_bannar_0823_Nola.png

しっかり改稿してとても読みやすくなっております。ぜひこちらでもお楽しみいただけましたら嬉しいです。.ꕤ
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ