少子化問題を考える(という名の遊び)
2005年に「総理府のメール公募」を記念した1000文字超短編企画が個人サイトの界隈があり、その時にだしたものです。
これを読み直すと、あれが2005年だったのか、と感慨深いものがあります。
『この問題に長年取り組んでおられる甲博士にお話を伺います』
テレビのレポーターは、早速インタビューを始めた。
『この15年、いや正確に言えば30年というもの減り続けていますが』
「15年前と言えばバブルの弾けた年、30年前と言えばオイルショック。いずれも虎の子の急減の引き金になっておる」
『なるほど、貯金が大切だと仰る訳ですね』
「そうじゃ。庶民というのは数年しか赤字生活を我慢できん」
『でも、貧乏人の子だくさんという諺もございますが』
「それは全員が貧乏な時代の話、食うか食われるかの競争社会には当てはまらぬ」
『なるほど。では、どういう対策を博士はお考えで』
「勝つ事じゃ! Aクラスの生活がすべてじゃ」
『はあ? でも、このままでは、将来の我々をサポートしてくれる者がいなくなると心配しておりますが』
「なんの心配がいる? 今や、我々はV字の回復を果たしているではないか」
『そ、そうなんですか? 最近の数値にそんなのがありました?』
「一昨年に続いて今年も優勝を決めて、これで虎の子が全国に広がるじゃろうが」
『ええっと、次に、同じくこの問題の専門家である乙教授に、、、』
レポーターは、汗をかきつつ2人目にインタビューを続けた。
『博士、近年話題の少子化ですが』
「子孫を作らせない問題と理解しておる」
『作らない、ではなく作らせない、ですか』
「そもそも安易な食生活を選ぶのが悪い。いくら便利だからと言って、やれ薬だ、遺伝子操作だと自然を弄くってよいものかな?」
『なるほど、そういう視点ですか。では、環境ホルモンのようなものが、食物を通して私たちを蝕んでいるのでしょうか』
「逆だ。堕落した人間の精神が、食べ物の少子化を進めたと言える」
『えっ?』
「種無し西瓜に始まり、種無し葡萄に種無し蜜柑。苦労して食べる風情が全くないではないか」
『えー本日は晴天なり、、、次にいきます』
レポーターは、青い顔で3人目の丙氏にマイクを向けた。
『出産率の低下ですが』
「CO2が癌だ」
『あのう、地球温暖化の話では、、』
「君、知らんのかね、増加したCO2やNO2が海に溶け込んで、海が酸化しつつある事を? これによって、2060年までには魚類の交尾機能は大きくダメージを受ける』
「あ! 魚の少子化の方が深刻ですね」
『勘違いも甚だしい。私は数の子が小さくなる事を心配しておる。数の子は子沢山の象徴だからな』
written 2005-10-1