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猫・犬・ペンギン等の短編集  作者: 第48代我輩
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無人島のポロリ怪

これも前話『運び屋』と同じく『デジタル社会塵』縛り企画に出したものです。マニアックな所があるので、合わない人はパスが吉です。3話仕立てとなっています。


1. 浦島クルーソー

2. 逢引島の美女

3. 神秘の島

1. 浦島クルーソー


 ロビンソンのおやっさん、いつものように海亀をgoloriとひっくり返して捕まえて、いよいよkoloriと殺そうとしたその瞬間、もくもくと白煙が上がり、pokkori出て来たのは、ランプの魔神ならぬ浦島太郎、kyoloriと見回して、さっそく亀を見つけた。

 亀のSOSが呪文となって、白煙に連れられての瞬間移動と見える。これには件のクルーソーもholoriとなって助けた、ってなことは有り得なく、

『浦島さんや、ちゃんと、おとぎ話に従いましょうや』

と宣わる。そのときpeloriと舌を出したその心は、この亀助けたら何してくれる、という商人根性に違いない。


 しかるに浦島、それをhyoloriと無視して亀に怒鳴った。

「やい、亀やい、助けたお礼に、むやみの歳を取らせやがって、歳をとるのはアキレスだけにしろ! 出会った今日こそ百年目!」

確かにアキレスの感じる時間がnolori亀より長ければ、アキレスは亀に永遠に追いつけないが、それはブラックホールの縁でしか起こりえない。いや、そんな事はどうでもよくて、亀には亀の言い訳がある。

「違いますよ、時間旅行ですよ。ほら、SFファンの皆さんがやりたがっているって奴」

これを聞いてクルーソー、choloriと考え直して、これこそ天佑、浦島から亀を助けりゃ、船の助けが来るまで時間ひとっ飛び、ここは、浦島が丸め込まれる前に唾付けにゃならん、と焦ったのかどうか、soloriと一言

『よっしゃ、助けた』

 かくて先手を打ったクルーソーが白煙の向うに見たのは、boloriと崩れる氷山の数々にペンギンがzoloriぞろぞろ。おいおい、ここは常夏の筈じゃないか、と思ったのが間違いで、どうやら今回は数億年もすっ飛ばしたらしく、プレートテクトニクスで島は何時しか南極圏に。

 ここで焦らないのは、さすが冒険好きのクルーソー、思わずpoloriと一言

『やったぜ polar island』


written 2007-7-1

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2. 逢引島の美女


 島々の多くは周囲1km以下の小島であって、とても人の住めるような面積を持たなかったが、そういう無人島の中には必ず『神聖』なる島が一つはあるのであって、その島の社はひときわ立派だった。とはいえ、時代とともに信仰がうすれ、寄進や奉納が減り、社の補修もままならない事態が長年続いていた。こういう時代風潮には、社の主も嘆いていた。

 信者を失った現代において、一番多い参拝客は、皮肉にも無信心ものの若者だった。というのも、信仰が薄れた結果、島は神聖な場所から若者のたまり場へと変貌したからだ。島の横手は内海ながらも町から見えない。社のもつ神聖さと相まって、二人きりになるには最適の場所だろう。

 もっとも、島に行くには船が必要で、いかに内海とはいえ、海を船で渡るメニューをデートに入れる程の根性のあるカップルは少ない。むしろ、若いカップルよりは、若者のグループ・・・殆どは男だ・・・の訪問の方が圧倒的に多かった。夏場は、海パン、水着姿の青年達の姿が毎日のように見られた。


 その日も常連の若者3人のグループがやってきた。島に着くと、先客の小舟が砂浜に上陸しており、彼らは表向きは舌打ちをしつつも、内心は期待していた。なんせ男ばかりの集団である。先客がカップルであれば、それを邪魔するのもよし、こっそり覗くのもよし、もちろん無視してもよし。楽しみはいくらでもあるからだ。そして、船の大きさや種類からカップルである可能性が高かった。

 そこで彼らは、遊び場・・・そこはデートの名所でもある・・・に直接行くのを避けて、島を逆回りに遊び場へと近づいた。もちろん、彼ら自身が遊ぶ為に来ている訳だから、あちこちで足止めを食う。しかも、カップルを想像して盛り上がった集団だ。悪戯小僧のように無邪気な心に戻って、遊びや悪戯・・・廃れりといえども一応境内の神域だ・・・を繰り返して例の場所に近づいた頃には2時間近く経っていた。

 彼らの見たものは想像を超えていた。素晴らしい美女がワンピース姿で海を見ているのである。横顔だけでも、彼らの町の一番の美人を越えていた。もはや、彼女に連れがおろうかどうであろうか関係ない。これを近くで見なければ男として恥ではないか。自然を装ってそろそろと近づいたのも当然だろう。それに気付いた女は、手を振ってきた。

 え、知り合い? と男達は一瞬思ったが、彼らの誰も思い当たらない。たんなる挨拶、危険視しないという合図に過ぎなかったのだろう。しかし、そんなことはどうでも良かった。美女の近くに座る最大のチャンスであり、それだけで、男達にとっては幸福なのだ。

「いい天気ですねえ」

『そうですわねえ』

「そこは、この島でも一番景色の良いところなんですよ』

『ここにはよくいらしているんですか?』

「ははは、そうですね」

 女と当たり障りのない挨拶をしながら彼女に近づく。

「お一人ですか?」

『・・・』

 近くにいるに違いない連れについて尋ねた時、彼女は口ごもった。それは彼らを有頂天にさせる反応だ。そう、女には連れがいないに違いないのだ。だからこそ、警戒のメッセージを込めて黙ったに違いない。最近の舟は女一人でも操れる。彼女が一人でこの島に来ている事自体は不思議ではない。むしろ、彼女の美しさの方のほうが余程神秘だった。

 女の警戒を尊重して、男達は10メートル程離れて、彼女の視界内の低い岩に座った。自然に対しては無遠慮に遊び、覗きの話題に盛り上がる若者達も、現実の女に対して礼儀正しかった。もっとも、それは彼女の美しさにもよるかも知れない。普通の男は、恋愛の対象になるかも知れない未知の女には礼儀正しいものだ。そして、そういう態度に彼女も気を許したのか、会話だけは弾んだ。それだけでも男達は仕合せだ。


 そういう至福を男達が味わったのも束の間、女は帰ると言い出した。昼飯時なのに弁当を持って来ていない事がその理由だ。男達は自然なあがきとして、持って来たコンビニ弁当を提供すると提案した。ちょっと思案したあと、女は弁当の中身を熱心に尋ねた。それは残っていた警戒が解けかかっている事を意味する。帰ると言った直後に、弁当の中身を気にするのは不自然とも思われたが、もしかすると、始めから弁当を狙って帰ると言ったのかも知れない。この程度の駆け引きやえり好みは、美女に付随する権利だろう。散々聞いた挙げ句、女は無難な助六寿司を選んだ。

 食事をしながら、女は、この島の社について男達に尋ねた。どうやら、参拝観光したその足で、こっちに来たらしかった。社については、一番背の高い男が嬉々として説明したが、せっかくの知識の披露も、一番大人しいと思われる男にから何度も修正を受け、そればかりか、修正の度に彼を邪険に払う姿が滑稽を増幅していた事は否めない。さらに女は、男達がここに来るまで何をしていたのかも尋ね、それには3番目の男が熱心に戦歴を披露した。

 こういう受け答えが女に与える印象というのは、顔や声程ではないにしても無視出来ない。食事のあと、お返しと称して、手作りクッキーが女から渡されたが、その時の馴れ馴れしさが渡す相手によって違っていた。女は最も腕白らしい男を媚びの目つきで見つめながらクッキーを渡し、社に詳しいかった男・・・ようするにみそっかすだ・・・に至っては、事務的に渡すだけだった。


 食後のお茶が終ると、女はいよいよ帰るという。引き止められないと分かれば、それを送りたがるのは男の性だ。男は3人ともついて来た。

 磯伝いにすいすい歩く女を追うように男達も歩いていたが、いよいよ最後の岬岩・・・そこを越えたら船が見える・・・にさしかかった時、一陣の海風が吹いた。その時、美しく舞ったワンピースの裾から・・・ポロリ!・・・黄色!!


 彼らが見たのは、期待に反して、ふさふさした物だった。

 唖然とする男達を残して、女はすっと茂みに消えた。男達が駆け寄ると何処にも女の姿は見えず、そこから見える筈の女の船すら無い。代わりに彼らの船が海の中に揺られていた。

 男達が泳いで船にたどり着くと、中に手紙が置かれてある。

『こんな私で良ければどうぞ』

 その夜、一番腕白だった男だけが下痢に悩まされた。


 島の稲荷神社に野次馬のような参拝客が増えたのはこの直後である。


written 2007-7-25

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3. 神秘の島


 島々は多くは小島であって、とても人の住めるような面積を持たなかったが、年中30度を超える夏の温度のせいか、どれも神秘な生命に溢れていた。そして、その小ささにも関わらず、人間に有用な多くの物を生産していた。無人島であるにも拘らず、この島々がなければ、その地域の人々は酒だって飲めないのだ。それだけでも、島の重要性は推して知れよう。ただし、他所ものが近寄るのは難しかった。というのも、近くを通過するものがあったら、すぐに嵐が訪れて、通過するものを木っ端みじんにしてしまうからだ。まさに神秘の島だった。

 その日も島々の生命はいつものように活性化していたが、しかし、ちょっと様子がおかしいかった。活性化し過ぎなのだ。通過するものも無いのに嵐が勝手に起こり、ついには小さな島の一部がポロリと崩れ落ちた。島の異変を探知した関係者たちは、至急対策会議を開いた。酒が飲めなくなっては困るからだ。

 『飲み過ぎですね。1週間程安静にすれば治りますよ』

 ランゲルハウス島がすい臓に見つかったのは、1868年の事であった。


written 2007-7-11 (revised 7-27)

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