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熱が下がってから三日後、そろそろ大丈夫かな? と思っていたところ、またもや発熱した。今回は前ほど高熱ではないようで、起きてスープを飲むこともできたし、アレクと会話もできた。
「魔力による発熱は今回で終わりそうだね。よくがんばったね」
よかった。やっと落ち着けるのか。
だが、そうはいっても発熱しているのでベッドに寝かせられた。
我慢できないほどではないが、若干の頭痛もあり、おとなしく目をつぶる。
寝ていると、ふいに唇に感触があったと同時に頭痛がなくなった。目をゆっくり開けるとルークが顔を覗きこんでいて頭をなでてくれた。
「起こしてしまいましたね。気分はどうですか?」
「今まで頭が痛かったのに、急に痛くなくなったんです……」
ルークを見てへにゃりと笑うと、ルークはベッドの縁に手を乗せたまましゃがみこんだ。
反則だよと小さな声がした。
次の日にはすっきりと起き上がることができた。
結婚式までに日がないため、この日はドレスのために採寸を午前にした。採寸は侍女さんがしてくれたが、下着姿を複数人に見られるのはまだまだ恥ずかしい。計ってみてわかったけれど、やはりだいぶ痩せてしまったようだ。
昼を挟んで、午後はこの屋敷を見て回ることになった。
この世界にきて、はじめて外に出た。といっても部屋から見ていた庭園である。
いろいろな種類の花が咲いていてとても楽しい。ローズ家だからだろうか。薔薇の種類が多種多様あってとても素敵だった。
この庭園は驚いたことに公園とかではなく、お屋敷の敷地内であった。
お屋敷の建物も学校並みに大きい。建物の中もあちこち見て回ったが、とてもじゃないが覚えられない。
半分ほど見たところで、ルークに部屋へ来るように呼ばれた。仕事の部屋かと思っていたらルークの自室らしく、場所は私が使っている部屋と同じ二階にあった。
部屋に入るとマリンが紅茶とお菓子を用意してくれた。マリンとレイは用意が終わるとすぐに退室してしまった。
「疲れたでしょう? 休憩しましょう」
ルークはニッコリ微笑みながら外を見ていた私をソファーに連れていき、そのままルークの膝の上に乗せた。
「る……ルークさ……」
全部言い終わらないうちにルークは私の頭の後ろに手を置き、引き寄せるように口を唇で塞いだ。体が熱くなると共に顔が真っ赤になったのが自分でも分かる。
「アリス、会いたかった」
耳元でささやく声に恥ずかしくなり、ルークの肩に顔を埋めると強く抱き締められた。
「はぁ……ずっとこうしていたい……」
ルークが耳元でささやくものだから、私はますます顔が赤くなった。
「アリス、これだけは言わせてください。私はきまぐれでアリスに結婚を申し込んだわけではないですよ。あなたもいずれ……あなたにも分かると思います。
だから今は私にまかせてください。必ず幸せにしますので。
私はあなたのことが愛しくて愛しくてたまらないのです。元の世界から突然連れ去ってしまったことはお詫びします。だが、私はあなたを手放せないのです」
ルークの声は真剣だった。必死で、懇願するようにも聞こえた。
「ルーク様。
私はあなたに最初一目惚れしました。こんな風に思ったのははじめてで、体調のせいで気弱になっていたからなのかもと思いました。
でも何回か顔を会わせるうちに、一緒にいるのが当たり前のような…それが普通だったような錯覚に陥るのです。
今はまだ魂の繋がりの話は思い出してません。
それでも、私はあなたを信じたい。一緒に生きていきたいと思いました」
真剣に話されたからには、私も真剣に答えたかった。
ルークは私の顔を肩から離し、私の頬を両手で挟み、とてもとても優しいキスをした。
「アリス、もう一度言います。
アリスを愛しています。私と結婚してください」
「はい。ルーク様。とてもうれしいです」
ルークは破顔し、私はへにゃりと笑った。
何度か優しいキスを繰り返したあと、ルークはおやつにしましょうと言いながら、クッキーを私の口に入れた。
私が咀嚼している姿をそれはそれはうれしそうに見ていた。
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